マスクしたまま顔認証 技術トップは日本企業
World Now
更新日: 公開日:
個々の人の顔を判別して特定する顔認証。この技術でリードするのは日本企業のNEC(東京都港区)。「ももいろクローバーZ」のコンサート会場でも同社の技術が使われている。最近では、生活に必須になったマスクをしたままでも人物を特定するという新技術の製品化を目指し、同社で実証実験が続いている。(畑中徹)
「マスクOK」と書かれたセキュリティーゲートを社員が次々と通り抜ける。新型コロナウイルス感染症対策でマスクが手放せなくなる中、顔の一部がかくれていても人物を特定できる最新の「顔認証」技術を搭載したゲートだ。
NECの社員通用口。顔の見えている部分をセンサーで抽出、事前登録したその人の画像を照合し、学習した人工知能(AI)が本人かどうか識別する。3月下旬に自社技術で設置。実証実験を重ね、近く製品化をめざす。
同社の顔認証技術は、米研究所の技術テストでは1200万人分の静止画で認証エラー率0.5%で、昨年首位に。2億3000万人の顔を1秒で照合できる。活用は世界に広がり、インド政府の「国民総背番号」制度では同じ人が重複してIDを取得しないように顔画像などを採取する基幹技術を提供。米テキサス州の市警の捜査システムなど約70カ国・地域に1000以上を納入した実績がある。国内では、コンビニでの顔認証決済や「ももいろクローバーZ」のコンサート会場にも同社のシステムが設けられた。コンサート会場の出入り口に採用された。東京五輪は大きな商機とにらむ。
顔や指紋の生体情報は究極の個人データ。プライバシー侵害につながらないように、技術を社会がどこまで受け入れられるのか社内で議論をかさねる。販売する際は、顔認証システムで収集されるデータの適切な管理方法も顧客に提案。技術を提供する企業も、試行錯誤を続けている。