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住民が移動ルートも健康データも提供 トヨタが作る「未来都市」に人は集まるか

World Now
トヨタ自動車の実証都市「Woven City」の完成予想図(同社提供)

「みなさんは、この人、正気じゃなくなったのか? 日本版ウィリー・ウォンカかと思うかもしれない」。今年1月、米国のハイテク見本市で、トヨタ社長の豊田章男は聴衆に語りかけた。ウィリー・ウォンカとは米映画「チャーリーとチョコレート工場」の風変わりな工場長。自らをその「変人」になぞらえたのは、日本の富士山のふもとに「未来都市」をつくると宣言したからだ。

米ラスベガスで、未来都市の建設を発表する豊田章男社長

静岡県裾野市の子会社工場跡地につくる実験都市の広さは約70万平方メートル。自動運転の電気自動車が街を走り、住宅や室内用ロボットなど、あらゆるモノをネットでつないで実験する。最初は同社従業員や退職者、技術者ら2000人が暮らし、被験者として生活データを提供。世界から参画者を募っており、共通語は英語になるとみられる。2021年初めに着工する予定だ。

トヨタが実証都市の建設を予定する静岡県裾野市の子会社工場の敷地(手前)

目的の一つは、車の移動データの収集と研究だ。住民の移動パターンを分析し、渋滞解消につなげる。道路は、車と歩行者それぞれの専用道、双方が通行する道の三つを整備。車の走行データを管理できれば交通事故も減らせると見込む。街では、住民の体温など健康状態をセンサーなどでチェックし、感染症拡大を防ぐ。オンライン診療も想定される。

一方で、車の移動経路や医療面の個人情報は丸ごと把握される。収集データをだれが管理し、どう活用するかは未公表だ。スマートシティーと呼ばれるこうした構想で先を走るのは、カナダでグーグル系企業が進める計画だが、企業側のデータ独占に住民が反発し計画は見直しを迫られた。

トヨタ自動車の実証都市「Woven City」の完成予想図(同社提供)

社長の豊田はトヨタのプロジェクトを「私にとっての『フィールド・オブ・ドリームス』」と表現する。車や住宅があって、それをネットでつなげるという発想を、最初に「街」があり、そこに車や住宅をつなぐという発想に転換し、街のプラットフォームを握るプランだ。映画では農地をつぶしてつくった野球場に往年の選手が集った。この未来都市に人々は集まるだろうか。