■今週の名言
A well-spent day brings happy sleep.
(1日を上手に過ごせれば幸せな眠りにつける)
■名言を味わう
直訳すると「うまく過ごせた日は、幸福な睡眠をもたらす」と言っています。有益で充実した1日が過ごせれば、ぐっすり眠れる、ということですね。
「万能の天才(universal genius)」とよく言われるダ・ヴィンチ。英語のウィキペディアで彼の記述を見てみると、最初にpolymath(博識者)と紹介され、areas of interest(関心のある分野)として、以下の16項目が挙げられています。
invention(発明)、drawing(スケッチ)、painting(絵画)、sculpture(彫刻)、architecture(建築)、science(自然科学)、music(音楽)、mathematics(数学)、engineering(工学)、literature(文学)、anatomy(解剖学)、geology(地質学)、astronomy(天文学)、botany(植物学)、paleontology(古生物学)、cartography(地図作成<法>) 。
万能で博識という形容にも納得! そして英単語の勉強にもなりますね(笑)。いろんなことをあーだこーだと考えるダ・ヴィンチは、1日で脳をきっと相当働かせたのでしょう。眠りにつくころには、心地よい疲れでバタンキュー、あっという間に夢の世界へ……。そんな毎日だったのかもしれません。
ときにはボーッと何も考えずリラックスする時間も大切ですが、よく考え、動き、働き、勉強し、遊び、そして飲食したときに得られる充足感や幸せな気持ちは、何ものにも代えがたいですね。
この言葉を一読するだけで、単純な私は「よっしゃ、今日も1日頑張るぞー!」とエンジンがかかるんです。読者のみなさんも、やる気が一気に上がる、お気に入りの英語の名言を、たくさん見つけちゃいましょう!
■名言の単語ピックアップ
spend
使う、費やす、過ごす(動詞)
well-spent
有益に使われた(形容詞)
spendは、中学で習う、基本動詞の定番です。使用頻度が高いからこそ、この機会に基本の意味と使い方をおさらいしてきましょう。
まずはクイズを1つ。spendの活用は? 正解は、spend-spent-spentです。
意味としては、「(お金を)使う」「(時間を)費やす」「(休暇や時を)過ごす」となります。
例文を見ていきます。
I spend a lot of money on clothes.
(私は多額の金を洋服(代)に使う)
*「〜に使う」の「〜に」に相当する前置詞は、onを使うことが多い。
We spent more than a month writing this report.
(このリポートを書くのに我々は1カ月以上費やした)
He’s planning to retire at the end of this year so that he can spend more time with his family.
(彼は家族ともっと一緒の時間を過ごせるよう、今年の終わりにリタイアするつもりでいる)
日本語でも「時間/お金をかけすぎる(かけなさすぎる)」などとよく言いますが、この意味での「かける」「かけない」には英語だと、今回のspendがバッチリ当てはまります。
ですから、spend too much time/money on...(〜に時間/お金をかけすぎる)↔︎spend too little time/money on...(〜に時間/お金をかけなさすぎる)とか、not spend any time at all on...(〜に一切時間を割かない)、spend more time at...(〜でもっと時間を過ごす)、spend quality time with...(〜と充実した時間を過ごす)といったspendとよく一緒に使う表現を、セット(塊)で覚えるようにしましょう。
そして、書き出して覚えるときは、例文をフルセンテンス(一文)で記してください。例えばこんな具合です。
I spent too much time online yesterday.
(昨日ネット<サーフィン>に時間を費やしすぎた)
そして、音読も一文を丸ごとする習慣をつけて。こうすることで、自分がspendを含んだ英文を実際口にするとき、どう一文を紡いでいけばいいかが、徐々にわかるようになります。
さて名言中のspendは、ハイフンで合成されてwell-spentとなっています。意味としては「(金や時間が)有益に使われた」で、品詞としては形容詞になります。
余談になりますが、well-spentのようなハイフン合成語はものすごい数があります。かなり柔軟性があって、割と何でも合成できてしまう、と言っていいかもしれません。
例えばwell-を使ったポピュラーな合成語を見てみると、well-organized(よくまとまった、きちんとした)、well-known(よく知られた)、well-managed(経営のしっかりした、よく管理された)、well-dressed(身なりのよい)、well-educated(教養のある)など、例を挙げるとキリがないほどです。
試しに電子辞書やオンライン辞書で「well-」と入力してみてください。ヒットする数の多さに驚くと思いますよ。時間があるときには、それらを上からツラツラ眺めていってみるのもいいでしょう。
ハイフン合成語は簡単な単語の掛け合わせが多いので、どういう意味になるかが想像しやすかったりします。そういった意味では、とっつきやすいかもしれませんね。
また、今回のように形容詞の役割を果たすことが多くなります。
さらに、ハイフンの後ろに来る語は今回同様、過去分詞になることが、これまた多くなりますよ。そう、well-spentのspentは、過去形ではなく過去分詞です。
well-spentをビジネスシーンで使う場合は、こんな感じでしょうか。
There’s enough money in next year’s budget but let’s make sure it’s well-spent.
(来年は十分な予算があるけれど、必ず有効に使えるようにしましょう)
ちなみに、多彩な才能を持ったダ・ヴィンチは「マルチタレント」と評されることもありますが、英語ではmulti-talented(多芸多才)と言います。
ハイフン合成語は、思いのほかたくさんあるので、これからはちょっと意識して英文を読むようにしてみてください。
もちろん、spendの使い方の精度アップもお忘れなく!
■名言を解剖する
A well-spent day brings happy sleep.
(1日を上手に過ごせれば幸せな眠りにつける)
wellは「上手に、よく」という副詞で、well-spentで「上手に使われた」という形容詞になります。このwell-spentが直後の名詞dayを「上手に使われた日」と修飾していると考えればいいでしょう。
そしてa well-spent dayがこの一文の主語になります。brings happy sleepと動詞目的語が続いていますから、「上手に過ごすことができた日は、幸福な睡眠をもたらしてくれる」となるわけです。
一段落前の和訳は、少し不自然に聞こえないでしょうか。あるいは、詩的な響きがすると言ったらいいのか……。いずれにしてもこれは、無生物主語構文の影響と考えられます。
無生物主語構文というのは、人間ではないものが人間に対して何かしてくれるといった一文です。例えば「電車が私を京都に連れて行った」とか、「暴風雨が我々の進行を妨げた」などのような文です。
英語ではこの無生物主語構文が、日本語よりも高い頻度で登場します。
和訳のテクニックの話になりますが、無生物主語構文をもっと自然な日本語にするには、直訳調ではなく、主語の部分を以下のように、少し副詞的に訳してみます。
「1日を上手に過ごすことができれば、幸せな眠りにつける」
「もたらす」という意味のbringもここでは、「(眠り)つける」と意訳しています。こんなふうに主語を人にして(ここでは主語は隠れていますが)訳してみると、自然でこなれた日本語に近づけられます。
■今週の1枚
猫カフェで撮った1枚です。路上で見かけるのはcamera-shy(「カメラ(写真)嫌い」という意味の形容詞です。これもハイフン合成語です)なニャンコばかりなので、ことごとく撮影に失敗。フラれ続けたことで逆に“ニャン”としてもいい写真が撮りたい気持ちに火がつき(笑)、行き着いたのが猫カフェでした。人間慣れ、写真慣れした猫たちなので、心ゆくまで撮影ができました。
よく見ると、親猫に抱かれて眠っている子猫を発見。起こさないように静かに撮り続けたところ、子猫の寝顔にピントがバッチリ合ったラッキーショットが! 安心し切ってぐっすり寝ているちびニャンの姿が、ダ・ビィンチの名言にぴったり!と思った次第。What do you think?
さて次週(6月15日更新予定)の「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は、マルコムXの言葉をフィーチャーします。Black Lives Matterムーブメントが巻き起こるアメリカですが、黒人公民権運動活動家として半世紀以上前に活躍した彼のeducation(教育)に関する見解を紹介します。
どうぞお楽しみに。See you next week!
(構成・山本航)
■「やる気が出る名言で学ぶビジネス英語」は毎週月曜朝に配信します。