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学び続けなければ意味がない リュウ・シーチャウさん

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1月までFOLIO副社長を務めたリュウ・シーチャウさん

シーチャウさんは中国で生まれ育ち、留学生として来日、一橋大学を卒業したのは2008年のこと。そこから12年で3回の転職を経て、1月末まで4社目である株式会社FOLIOで資産運用のプロダクト開発に挑んでいました。同社は独立系オンライン証券会社として約10年ぶりに業界に新規参入、注目を集めています。

しかしシーチャウさんはずっと金融業界にいたわけではありません。3社目までとはまったく違う業種。P&G、レキッドベンザージャパン(以下、RB)を経て、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)と、一貫して消費財のビジネスでマーケティングを担当。その後まったく未知の金融の分野に飛び込んだのです。

■英語の会議、分からなければ会話を止める

新卒で入社したP&Gでシーチャウさんはまず英語の壁にぶつかります。「外国人だから英語はしゃべれるだろう」と思われたのか、採用の際に英語の能力は聞かれなかったのですが、入社後の英語テストでは、同期50人の中で最下位グループという成績。それでもグローバルなチームに入れられたシーチャウさんはどうしたか。

「分からなかったら、会議の会話を止める」

分からないまま放置しない。「分からなくてもつい笑顔で分かったふりをしてしまう人は多いですよね」と言う堀内隆編集長に、「それが一番いけないんですよ」とシーチャウさん。

担当していた消費財はシャンプーやドッグフードなど。誰もが毎日使うシャンプーという商品で売り上げを伸ばすには、競合との客の奪い合いにならざるを得ず、ペットフードはペットの犬の小型化で市場が縮んでいく現実に悩み……と、なかなかしんどい日々。そんな折にRBのフットケア商品を知ります。髪に比べて関心を持っている人が少ない足のケア、「自分ならフットケア商品で会社の売上を伸ばすことができる」と転職。その自信ゆえ、入社直後に上司が退職し、新しい上司をつける話を持ち掛けられた際にも頑なに断り、「自分なら2年でブランドの売り上げを2倍に伸ばせる」と豪語。2年後には実際に売り上げを2.5倍にまで伸ばして周囲を驚かせました。

リュウ・シーチャウさんに質問する堀内隆編集長

堀内編集長が「その自信、どこから来る?」尋ねると、「わたしは最初に数字を見る。マージンやシェア、マーケットサイズなどの数字を見たら、どこが伸ばせるかがわかる」との答えでした。また一方で「本当に伸びるかはだれにも分からない。でも仮に1・9倍にとどまっても、そこまで伸ばした人をクビにすることはないじゃないですか」とも。

■学び続けられなければ意味がない

次の転職先はJ&J。決め手となったのは、「転職すれば自分がどのくらい学べるか」でした。新しい環境に身を置き、新たな課題に挑んで「2年間で全ブランドのマーケットシェア向上」という結果を出すと、今度は売り上げが落ちていたJ&J香港から声が掛かります。もちろん、日本に残る選択肢もあったのですが、「ちやほやされている今の環境では、学べることが少なくなっている」と、香港にアサインメントチェンジ。現地社長となり、多すぎたブランドを整理して、社員が「私が一つだけ売るなら、これ」と選んだ商品のセールスに集中。業績のV字回復を実現させました。

そんな中、意外な形で4度目の転機が訪れました。「いろんな業界の人の話を聞きたい」と公言していた彼女のために、友人がセッティングしてくれたお茶の席でFOLIOの社長と出会い、話を聞くうちに「わたしがこの会社に入ればもっとよくなる」と感じたのだそうです。

■ユーザーにハビット・チェンジを促す

「まったく異なる業界なのにどうして貢献できると思ったのですか」と堀内編集長が問うと、「ユーザーのハビット・チェンジ(habit change)という意味においては経験が生かせると思った。投資に興味がない人に資産運用の商品を売ることは、これまで歯磨きしかしてなかった人に、歯磨き後にリステリンしてくださいねというのと同じ。とてもやりがいがあるし、やってみたいと思った」とシーチャウさん。結果、現在作っているプロダクトの利用者は90%が投資初心者。FOLIOは現在、証券会社の新規口座開設トップに入る上位にランクインしているといいます。

■徹底した無駄嫌い。プライベートの時間も大切に

これだけのことを成しえてきたからには、相当な時間を仕事に割いているのかと思いきや、「繁忙期はどのくらい残業してきましたか?」との参加者からの質問に、「人生で21時過ぎまで残業したのは1回のみ。大体17時~18時には帰宅する。わたしは無駄が嫌い。やるべきことを分析して、最短で結果を出す方法がわかれば、プライベートの時間も充実する」とコメント。「いろんな場所に行っていろんな人と出逢いたいから、毎週末旅行しているし、長い休みがあればヨーロッパに行くことも」との答えには、「自分も実践したい」という声が上がりました。

■正解なんて、ない シーチャウさんの転職ルール 

3度の転職を経験するたび、新しいチャレンジを通して成長を続けているシーチャウさんいわく、転職を決めるときのポイントは3つ。1つめは、「自分にとって何が大切なのかを考えること」。長年同じことを繰り返していると惰性でできることも増えてくるが、それは果たして自分の望む働き方なのかを考えるということです。

2つめは、「会社は学校ではない」ことを意識すること。つまり、「学ぶこと」は自分の目的であっても、給料をいただいている以上、会社に貢献しようという意識を持つことが大切だということです。

そして3つめは、「正解なんて絶対ない」と知ること。「わたしの場合でいうと、たとえばP&Gに残ったほうが理想の生活を送れていたかもしれないし、FOLIOに転職しないほうがいいこともあったかもしれない。だけどそんなの誰にもわからない。一度決めたら、自分の思う正解に近づくための努力をするだけ」と明かしてくれました。

シーチャウさんは1月末でFOLIOを退社。また新たな道に向けて歩み出しています。

(取材・文/松本玲子)