白木さんは日本の短大を卒業後、国際協力に関わりたいという思いを携えて英国へ留学。南インドで鉱山労働者を取り巻く貧困と搾取を目の当たりにし、就職した会社を退職してエシカルジュエリーの会社を11年前に立ち上げました。
今、自分のことを「アクティビストでありチェンジメーカー」と呼ぶ白木さんですが、子どもの頃は「引きこもりの赤面症」だったとか。友だちなんかいらない。家で小説を読み、アクセサリーや洋服を作るのが楽しい。そんな子どもだったそうです。
初めての大きな挫折を味わったのが進学をひかえた高校3年の時。ご両親がアパレル関係のお仕事をされていた白木さんは、自分も同じ仕事がしたいと打ち明けましたが、「この世界は厳しい」とご両親は大反対。そんな時、同居していた祖父が、「世界を見てきなさい」と留学を進めてくれました。
戦争体験があり、旅が趣味で世界の様々な話を白木さんに語ってくれたという祖父。白木さんは、祖父の話を聞いては頭の中で想像を巡らし、「世界っておもしろそうだな」と思っていたそうです。祖父は、「日本の女性は何をやっても差別される。働きに出てもお茶くみしかさせてもらえない。結婚すればダンナや親のいいなりになるだけ」と言って、白木さんに世界を見ることを後押ししてくれました。これが大きな転機になったそうです。
ひとまず英語を学ぼうと進んだ日本の短大で国際協力に関する授業を受けていく内に、「国際協力の現場に立てる人になりたい」という気持ちが育っていきました。英国の大学では講義を聞くだけでなく、南インドの町に行って鉱山労働者と寝食を共にしました。ここで、「便利で豊かで美しい生活の裏に何があるか」という現実を肌で感じ取ったのだそうです。
国連でインターンをし、日本で就職もしましたが、「貧困や搾取の問題はビジネスの中で解決するべきだ」と起業を決意。エシカルな消費文化作りに向けてスタートしました。
しかし、「エシカル」「サステイナブル」という言葉もあまり聞かれなかった11年前。「最大の壁は何でしたか」という後藤統括編集長の問いに、「起業したこと。ゼロから1を作り出すこと」との答えでした。「わかんないことだらけ。何をするにしても、ネットを調べても業界の人に聞いてもわからない。出どころの分かる鉱山で採掘され、みんながハッピーになっている宝石を見つけるのは至難の業だった」。そんな状況でも仕入れ、デザイン、営業、販売、すべて一人でこなしていたといいます。
それでも白木さんが自ら進むべき道を切り開いた秘訣は、「とにかく動く。そして自分の白い地図を埋めていくこと」。例えば、留学しようと決めた時には、たくさんの人に話を聞きに行き、刺激を受けることを繰り返したそうです。「やみくもではだめですが、動けば動くほど自分の中でやりたいことが定まっていくと感じました。自分の白い地図、そこには何があるか踏み出してみないとわからないですよね。でも動けば人に出会い、運もやってくるのかな」との言葉に、大きくうなずく参加者の姿も見られました。
後藤統括編集長が改めて今回のテーマである「グローバルなキャリア構築のためにやるべきこと」について質問すると、「一番大切なのは、自分がやっていることに対する自信、自尊心」ときっぱり。「語学はすごく大切だけれど、いかに情熱を伝えるかが一番大切。自分が何をやりたいか、というところが揺らぐので自信を持てずにいる人が多いのでは」
時代の最先端を突っ走ってきた白木さんには、当然、ロールモデルもいませんでした。でも逆に、「前例がないから、自由に作らせてもらった」。育児本に書いてあることは一度全部忘れ、子どもが4歳になってから世界10カ国ほどを一緒に旅したそう。「祖父がしてくれたように、あなたの場所は日本だけではないことを伝え、そして愛情を感じてくれたらいいのかな」。質問タイムでは、参加者から今後のキャリア形成について尋ねられ、「ビジネスで世界がより平和に、よりよくなる状況を作りたい、40歳までに社会貢献する会社づくりに100社携わりたい、と思っていたが、今後は一生をかけて1000社を目標に、また活動の場を海外に広げようかと思っています」と話していました。
後半はGLOBE+のイベントでおなじみのワークショップタイム。
最初のワークは、「白木さんのお話から、自分のこれからにとってヒントとなったキーワードを書き出す」。講演中、熱心にメモをとっていた人も多く、たくさんの人がワークシートにスラスラと書き進んでいたようでした。グループ内で自分が選んだものをシェアした後、自分の将来の活躍イメージと、そこに近づくためのステップを詳しく書き出して、グループ内でシェアしたり、アドバイスし合ったりしました。
最後は、その目標のために各自で「明日から●●をします」宣言。何人かには全員の前で発表して頂きました。「ASEANで仕事がしたいので、明日、会社で自分の目の前にいる5人にあえて言葉で伝える」。「カンボジアで目の当たりにした社会課題解決のために行動を始めている。仲間が欲しいので、明日から発信していく」など、力強い決意表明を聞くことができました。
最後はサンドイッチを食べながらのネットワーキングタイム。お互いの仕事のこと、将来のことについて話は尽きませんでした。
次回のGLOBE+のイベントは来年1月15日。外資系企業で世界最年少支社長に抜擢された後、全く畑違いのフィンテックに飛び込んだリュウ・シャーチャウさん(株式会社FOLIO取締役副社長)をお招きし、「世界で働いて見つけた私の生き方」をテーマにお話頂きます。詳しくはこちらから。奮ってご参加下さい!