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日揮が挑戦、極東のアグリビジネスは苦難続き 癒やしは地元のサッカー仲間

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
新井一則さんと、「JGCエバーグリーン」のロシア人従業員

■私のON

JGCエバーグリーンの温室で栽培中の野菜

「プラント大手の日揮がなぜ農業?」とよく聞かれます。本業であるプラント事業の商機をにらみつつ、世界の食料問題解決に貢献したいと社内有志で07年から事業化を探ってきました。

日揮時代から出張が多く、これまで約25カ国を訪れました。そんな中でもハバロフスクは好きです。冬は晴れの日が多くて風が強め。雪があまり降らず、零下30度で空気がきりっとしています。通勤時はスーツのズボンの下に防寒タイツが必要ですが……。 

ハバロフスクは、首都モスクワより食品の価格が高く、人々の購買力もあると感じています。ロシアでは「ダーチャ」と呼ばれる郊外の別荘で野菜を自家栽培する人が多く、採れたての野菜のおいしさを知っています。幼い子どもがいる共働き世帯は安全性にもこだわる。私たちは直営所に近いハバロフスク市内で生産しており、トマトなどは青いうちに収穫され2週間かけて運ばれてくる中国産よりも値段が3~4割高く、冬場には2倍に達することもあります。それでもよく売れるので、価格設定には毎度苦労しています。市内には大手スーパーもあるのに、わざわざ私たちの直売所まで足を伸ばして野菜を買いに来てくれる顧客の期待を裏切らないようがんばりたいと思います。

冬には零下30度にもなる極寒のハバロフスク。スキーに出かけた際に撮影した、凍て付くアムール川

単身赴任して約1年。120人いるロシア人従業員には楽しく、やりがいをもって働いてもらいたいと考えています。そこで、従業員個人と各部門のチームとしての成果にボーナスを出す賃金制度を導入しました。すると残業時間が減り、直売所の月間売り上げが前年比で2割もアップしました。買い物客からも「スタッフのサービスが良くなった」と好評です。やって良かったことの一つです。

2019年5月にあった極東エネルギー会社主催の表彰式

一方で、失敗も絶えません。社長に就いた直後、野菜の一部が社内の手引きで外部に横流しされている疑惑が浮上。監視カメラの録画映像をもとに警備担当者を追及すると、サーバー室が破壊される嫌がらせに遭い、不当解雇で訴えられました。会社のロシア人幹部からは「すきを見せてはいけない」と忠告されました。こうしたトラブルをそもそも起こせないようなしくみが必要だったと反省しました。

今シーズンはナスとパプリカの栽培を見送りました。害虫や病気が発生して品質が安定しなかったためです。19年11月には栽培を指導してきた日本人スタッフが体調不良で帰国し、現地の日本人は私一人に。信頼を置くロシア人マネジャーも近く社を去ります。

それでも、今年はロシアで人気のあるイチゴ栽培を始め、近い将来、温室を現在の2倍の10ヘクタールに広げる計画です。好きで始めた事業ですから、ポジティブに乗り切りたいと思います。

JGCエバーグリーン人気商品の温室栽培トマト

■私のOFF

中学生時代からずっとサッカーを続けています。社内のごたごたで気持ちが塞いでいた時、会社のスタッフが地元のアマチュアチームに誘ってくれました。今では2チームに所属して週2~3日は練習に精を出します。

40代以上のシニアサッカーチームの仲間たちと。2019年9月の大会で準優勝し、首にはメダルが輝く

40代以上のシニアチームは皆うまくて、ロシア代表だった人も。旧ソ連時代からまじめに練習を積んできたのでしょう。試合になると真剣で、プライドを感じます。私はロシア語が話せないので、プレー中に発するのは「行け!」とか「右!」といった単語だけ。込み入った会話はありませんが、同じレベルでプレーするからこそ次の動きが分かるし、意思が伝わります。

チームのまとめ役の男性からは身ぶり手ぶりで「お前は当たりが弱い。足だけでボールを取りに行くな」と怒られるので、夏から筋トレをして鍛えています。練習後は酒を酌み交わすでもなく、シャワーを浴びたらさっさと解散。「パカパカ(じゃあね)」すら言いません。でもみな優しく、私の心身の健康に欠かせない仲間です。(構成・渡辺志帆、写真は新井さん提供)