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科学で世界とつながる高校生たち 国際科学コンテスト「ISEF」への道

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ISEF2019の表彰式

賞金・奨学金の総額は5億円超

ISEF1950年に始まった。運営するのはワシントンにある非営利団体「Society for Science & the Public」。年々規模が大きくなり、2019年5月にアリゾナ州フェニックスであった第70回大会では、世界80カ国・地域から1842名の生徒が参加した。

米国らしく、大会の演出は派手で華やかだ。その一端は、ISEF2019のハイライト動画で見ることができる。

 ISEFに出るには、各国、地域、州の自由研究コンテストで上位入賞する必要がある。日本では、「高校生科学技術チャレンジ(JSEC)」(朝日新聞社・テレビ朝日主催)と「日本学生科学賞」(読売新聞社主催)の二つが対象のコンテストになっている。

2019年のJSECでは、全国から267件の研究作品が応募があり、2020年のISEFには、ダンゴムシの抗カビ効果に関する研究など、上位7研究が出る。狭き門だ。

JSEC2018年で入賞し、ISEF2019に出場したメンバー。茗渓学園高、静岡県立掛川西高、米子高専、広島大学付属高、福岡県立明善高、長崎県立長崎西高の6校13名が挑んだ

ISEFの魅力は、世界中の同世代と交流できることに加え、賞金額の大きさにもある。最優秀賞に75000ドル(約820万円)が贈られるほか、研究分野ごとの賞、企業や大学からの特別賞が多く、賞金や奨学金の総額は約500万ドル(約5億4700万円)に達する。加えて、ISEFでの実績は各国の大学から評価され、入試でも有利になる。高校生にとって、世界の水準を知り、自分の人生を大きく変えるチャンスでもある。

「理科や数学は得意だけど、英語は…」

ISEFに挑む高校生が、どんな準備をするかを見ていこう。

JSECの場合は、12月の最終審査会で、ISEF出場者が決まる。

出場経験者の多くが「アメリカに行けるのは嬉しかったが、同時に、言葉の問題が不安で仕方なかった」と振り返る。国際大会での発表は当然、書類もプレゼンもすべて英語だ。一方、出場者の多くは、海外経験がほとんどない。「理科や数学は得意だけど、英語は…」という高校生も珍しくない。

ISEFの審査では、英語圏以外の出場者は通訳をつけられる。しかし通訳はボランティアのため、必ずつくとは限らず、かつ、通訳が自ら審査員と話しすぎるとマイナスになりかねない。研究者である生徒自身が、いかに自分の言葉で力を込めて伝えられるかも、大事な要素だからだ。基本的には、独力で発表することを目指し、準備することになる。

まずは、ISEFに出場した経験をもつ大学(院)生や若手研究者のアドバイスを受けながら、英語でアブストラクト(研究の要約)やリサーチプラン(研究計画書)などの提出書類を書きはじめる。

続いて、発表ポスターやプレゼンテーション原稿をつくる。ポスターは、内容はもちろん、色使いやデザインにも気を配る。審査の質疑応答も重要なので、審査員に聞かれそうな質問を考えうるかぎり書き出し、どう答えるかを練習する。多くの場合、想定質問は100を超える。

助けになるのは、3月と4月にある研修だ。3月の研修は例年、グーグル日本法人の協力を得て、同社のオフィスで3日間開かれる。同社の英語ネイティブの社員も協力してくれて、英語で考えて話すことに慣れる。

4月の研修は、本番を想定し、模擬審査会場をつくって練習する。渡米する直前は、早朝から夜遅くまで練習を繰り返す出場者も多い。

1996年のISEFに出場した村本哲哉・東邦大理学部講師(分子発生生物学)は「世界の学生とふれあって、研究のレベルの高さを肌で感じられたのは貴重な経験だった」と話す。英語プレゼンで苦労した経験から、大学入学後は海外でのプログラムに積極的に参加した。筑波大学で博士号を取得後すぐに英国に渡って研究したのも、ISEFの影響が大きいという。

村本さんは、自分の経験を後輩に伝えようと、ISEF出場経験者でつくるNPO法人「日本サイエンスサービス(NSS)」を立ち上げ、毎年、ISEFに臨む高校生らにアドバイスを続けている。

ISEF2019で優秀賞3等を受賞した米子高専の田中泰斗さん。大会前はオンライン英会話を毎日受講し英語に慣れたという
 

朝から夕方まで、英語でプレゼンと質疑

ISEFの会期は6日間続き、充実したプログラムが用意されている。

1日目(到着日)の夜はピンバッジ交換会で、初対面の出場者同士が交流する。2日目は、研究ごとに割り当てられた発表ブースで、ポスターや展示物をセット。夜は開会式があり、国ごとに出場者紹介をする。3日目は練習日。ノーベル賞受賞者を含む第一線の科学者や研究者によるパネルディスカッションもあり、自由に聞くことができる。

4日目が審査日で、朝から夕方までプレゼンと質疑応答が続く。審査は15分を1コマとし、審査員が次々にブースを訪れる形式で行われる。審査員は1000名を超え、その多くはボランティアの科学者や技術者らだ。審査基準は「研究の課題設定」「計画と手法」「データ収集、分析、解釈」「独創性」「発表(ポスター)」「発表(プレゼンテーション)」の6項目。

夕方、長時間の審査を終えた出場者が会場から出てくるのを、大勢の関係者が拍手で迎えるのが、ISEFのハイライトでもある。この日の夜はダンスパーティーで、緊張から解放された出場者同士が踊り合う。

一般公開日の会場。自国の文化を知ってもらう機会にもなっている

最終日の6日目は、優秀賞(グランドアワード)の表彰式でフィナーレを迎える。優秀賞は研究分野ごとに1等~4等がある。さらに、各分野の1等から部門最優秀研究が選ばれ、大会全体を通した優秀研究も発表される。

特別賞と優秀賞をあわせ、何らかの賞を受賞する出場者は、全体の2~3割だ。JSECからの出場者は、ISEF2018では出場した6研究すべてが受賞、ISEF2019でも合計5つの賞を獲得するなど健闘している。

出発前は不安そうだった出場者も、米国での1週間を経験して変わる。日本と違う環境で何とか乗り切ったことで、自信を得る。「審査員、他国からの出場者、地元市民らが積極的に、フレンドリーに話しかけてくれるので、自然と話せた」「英語が完璧でなくても、身ぶり手ぶりを交えて熱意を伝えれば、だいたいわかりあえた」という感想が多い。

静岡県立掛川西高の岡本優真さん(右から1人目)と塚本颯さん(同2人目)は、ISEF2019で優秀賞2等に加え、アリゾナ大学賞も受賞した。
 

近年日本からISEFに出場した経験者の体験談は、下記のNSSウェブサイトで詳しくまとめられている。

ISEFの会場では、全出場者の名前が紹介されたボードがある。ここで自分の名前を探すのも、楽しみの一つだ