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鳩山玲人氏が占う動画ビジネスの未来、「戦略のカギはコンテンツ」

World Now
コンテンツビジネスに詳しく、ユーチューバーのマネジメント支援会社「UUUM」の顧問も務める鳩山玲人氏=渡辺志帆撮影

はとやま・れひと 1974年生まれ、45歳。鳩山総合研究所代表取締役。三菱商事を経てハーバード・ビジネススクールでMBA取得。LINE、ピジョン、トランス・コスモスの社外取締役。ユーチューバーのマネジメント支援会社「UUUM(ウーム)」顧問も務める。元サンリオ常務取締役。米カリフォルニア州在住。

■米国のテレビ、もともと「お金を払って見る」

――米国などで定額動画配信サービスをめぐる競争が激しさを増しています。

米国では、ここ20年ほどで通信会社がコンテンツの制作会社を買収してコングロマリット(複合企業)化し、通信とコンテンツの融合を進めてきました。米国のテレビチャンネルは、主なものだけで約260あり、制作される番組の量も膨大です。テレビは「お金を払って見るもの」で、お金をかけてコンテンツを作る文化があります。

ケーブルテレビや衛星放送、インターネット接続事業を手がける代表的な通信会社コムキャストの場合、グループで約5400万人の加入者が毎月お金を払っています。制作費は加入者やコンテンツの供給先の企業から回収します。そんな中、コンテンツをインターネット経由で配信して視聴者に直接課金するネットフリックスが大きなシェアを占めるようになり、ディズニーなどコンテンツを持つ企業がこの成功モデルに追随して、直接ユーザーに配信する流れになったのです。

――「テレビは無料」というイメージが強い日本とは前提が大きく違いますね。

日本にもWOWOWやスカパーのようにお金を払ってテレビを見る文化がないわけではありませんが、垣根があります。日本のテレビは、数少ないキー各局がニュースやバラエティーといったリアルタイムで話題性があるものも組み込んで放送する総合型です。

一方の米国は、チャンネルがジャンルごとに分かれている特化型で、ネットフリックスはドラマや映画専門チャンネルの代替として違和感がありません。日本でネットフリックスを普及させる上での課題は、地上波放送との戦いというよりは、米国と比べてチャンネルを変える習慣がない点をどう乗り越えるかだといえます。さらに日本はモバイルゲームなど、隙間時間に楽しめるコンテンツの選択肢が多い点だといえるでしょう。

■動画サービス、乱立でも強みが違う

――米国は、コンテンツの制作費もずいぶん大きいそうですね。

制作費でいうと、ネットフリックスは年間1兆円以上です。ハリウッド映画は1本約400億円にもなります。米国だと2時間ドラマに200億円使うこともあります。日本のテレビ局は年間制作費が700億~800億円で、規模がまったく違うのです。お金をかければ優れたコンテンツとも限らないし、大がかりにしなければいけないというわけでもないのですが。視聴者にとってはコンテンツの選択肢が広がっていいことだと思います。

――最大手ネットフリックスに対して、新規参入した「アップルTVプラス」「ディズニープラス」などは強敵となるでしょうか。

それぞれにまったく違う強みがあります。

ネットフリックスは広告がない課金モデル。一方のアップルは、iPhoneというハードウェアに加え、MacBook、自社の基本ソフト(OS)やセットトップボックス「アップルTV」などのハードウェアを結んで配信します。すでにユーザーを抱えているので、場合によっては無料で囲い込んだりして、一定規模のユーザーを得るのは早いでしょう。

「アマゾンプライムビデオ」を展開するアマゾンも、プライム会員のサービスに自動的に付けるので、そこから囲い込むのは早いと思います。ディズニーは、コンテンツの強みがピカイチで、王道のコンテンツ戦略をやっていこうとしています。ここ数年の世界的大ヒット映画10本のうち6~7本はディズニーです。ただ従来の大型スタジオによる制作なので、コンテンツに偏りがあります。ネットフリックスのような大胆な作り方や、センシティブな題材はあまりありません。

いずれも差別化の鍵を握るのはコンテンツです。各プレーヤーが、それぞれの収益モデルを拡大するためにコンテンツを利用しようとしているのです。コンテンツのゴールドラッシュ時代が到来していると言えるでしょう。

■映像メディア、共存できる

――動画メディア特集では、ユーチューブの世界にも迫りました。

ユーチューブは従来のメディアと大きく違い、クリエーターが自分でコンテンツを作って流せます。放送枠が有限のテレビ(放送)の枠に入れてもらう必要がなく、自己完結型で活躍できます。さらに個人レベルで広告を付けられます。従来のテレビ局はスポンサーがいて、広告費を制作費に回してきました。今まで大手広告会社の電通や博報堂しか取れなかったそうした広告の回収スキームが、ユーチューブのおかげで個人に移行したのです。

企業もユーチューブをベースにインターネット上で宣伝することができ、職業としてインフルエンサーやそのマーケティングが成り立つようになってきています。様々な趣向を持つ個人に近づけた映像の撮り方やコンテンツへのニーズは高いといえるでしょう。クリエーターのやりたいように、場合によってはテレビ放送に載せられないコンテンツも作れる点は有意義だと思います。

――今後、従来のテレビ局や動画メディアはどうなっていくのでしょうか。

書店に様々なフォーマットの本が共存しているように、テレビや映画も共存していくでしょう。動画配信サービスの場合、コンテンツの制作費は上がっていても、多くの会員を集めることで月額利用料は安く抑えられています。映画を1本見れば日本では1500~1800円ぐらいですが、ネットフリックスとフールーの二つの配信サービスに加入しても映画1本分ぐらいにしかなりません。そのため複数のサービスに加入することもありえます。いい意味での競争があるからいいコンテンツが量産されます。

ここ数年、チャンネル競争があったり、通信との融合など新しいテクノロジーを導入したりすることで、広告を代替する手段が出てきて、様々なコンテンツが登場しています。お金が循環し、いいコンテンツが伸びて、各プラットフォームはそれぞれに違う育ち方をしていくのではないでしょうか。様々な形で融合も進んでいくだろうと思います。

また日用品などはテレビの方が広告の需要が高いので、そうした広告が残る限りはテレビもしばらく残るでしょう。ただ、広告費で制作費をまなかい、ゴールデンタイムを基準に予算配分する従来のモデルは限界点に来ており、衰退せざるを得ないと思います。ビデオ店はなくなるかもしれませんが、フォーマットは変わっても、それぞれのメディアの役割やコンテンツは永続的に残ると思います。