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試して分かった、「成功するユーチューバー」に必須の資質とは

World Now
台湾で抜群の知名度を誇る三原慧悟(左)に、ユーチューバーらしく自撮りするコツを伝授してもらう筆者=台北市

記者(渡辺)は、高校時代は放送部。県のコンクールで優勝したこともあったから、「昔取ったきねづか」で自撮りリポートくらいならできると思っていたが、甘かった。

出発前、朝日新聞社の動画メディア「bouncy」にも相談に行った。津田啓夢(ひろむ)編集長から「自撮りで話すと周りからじろじろ見られるが、慣れると気にならなくなる」とアドバイスを受けた。撮影に使うスマホの手ぶれを防ぐ機器も購入。操作に四苦八苦しながら、週末に近所の公園で練習を重ねた。

最初の出張先の台湾では、130万人以上のチャンネル登録者を持つ日本人ユーチューバー三原慧悟に教えを請うた。「下から映すと顔が大きく見えるから上から撮る。カメラを見て視聴者と目線を合わせて。明るく、かわいく」。自分をプロデュースして独自色を打ち出す大切さを教わった。

撮影を始めてみると、聞くのとやるのとでは大違いだった。

「私は今、台北に来ています」。ほほえもうとすると緊張で口元がワナワナと震える。セリフを間違って撮り直しの連続。撮った動画を見返して、話す自分の顔が左右でゆがんでいたり、髪が額に張りついたりしていることに気づくと、自意識の底なし沼にはまっていくようだった。冒頭に決めポーズを交えるとユーチューバーらしくなるが、誰に見られるか分からず、これまた自意識が邪魔して、はじける勇気がなかった。

【動画】渡辺記者、ユーチューバーにトライ

■大事なのは自分自身の「中身」

ユーチューバーが登場する動画は、たいてい10分ほどでテンポよく進行する。だが実際は撮影に2時間、編集に6〜7時間かかるという。友達のように親近感を抱かせる動画も、背後には不要な「間」をつまみ、字幕をつけるなど隠れた苦労がたくさんあると知った。三原も会社を設立して自社スタッフに編集を任せるまでは「ちゃんと眠った記憶がない」くらい大変だったという。

何より大事なのは「中身」だ。ハリウッドで著名ユーチューバーらのマネジメントを手がけるペター・マンディッチ(32)は「成功する人は独創的で、こわいもの知らず。プロデューサーとして常に自分を進化させている」と話す。自分の好きなことに自信と情熱を持って邁進(まいしん)していることが大事だという。

彼が、最近マネジメント契約を結んだ一押しのクリエーターを聞いてみた。米シカゴに住む11歳の少年で、自分自身がメイクアップする動画で90万人近くのSNSフォロワーがいるという。「既存の概念にとらわれないクリエーティブな姿が、人々にインスピレーションを与えている」と教えてくれた。

ユーチューブの世界は奥が深い。記者も世界の現場を伝えたいという熱意と好奇心は持ち合わせていると思うが、はたしてその思いを映像にしながら自分をプロデュースなんてできるだろうか。自分の顔のゆがみなんかにとらわれている時点で、その道は相当険しい。

グーグルによると、約6200万人の登録ユーザーがいる日本のユーチューブには、10万人以上の登録者を持つチャンネルが約2300あり、このうち100万人を超えるのは170ほどだという。

■トップユーチューバーの人気ぶり

登録者が100万人単位でいるとはどういうことなのか――。日本のトップクリエーターを間近で見ようと、12月初旬にユーチューブが開いた年に一度のファンイベントに出かけてみた。

ユーチューブのファンイベントで、ステージ上の人気クリエーターグループにカメラを向ける女性たち=12月4日、千葉市の幕張メッセ、渡辺志帆撮影

日本で最多800万人以上の登録者を持つ「はじめしゃちょー」や約780万人の「HIKAKIN」ら約40チャンネルの人気クリエーターが幕張メッセ(千葉市)に一堂に会して、歌やパフォーマンスを披露。観客の間に敷かれたレッドカーペットの上を練り歩けばイベントホールを埋めた数千人のファンがスマホカメラを向け、歓声を浴びせる。抽選で招待されたというファンの多くは若い女性だ。

ユーチューブのファンイベントで、観衆に手を振りながら登場する「はじめしゃちょー」(中央)。チャンネル登録者数は820万人を超え、国内最多を誇る=12月4日、千葉市の幕張メッセ、渡辺志帆撮影

実は、記者が動画を見たことのあるクリエーターは数組しかいなかった。だが、クリエーターが紹介されるたびに悲鳴に似た歓声が沸き、後ろの席の20代らしき女性たちが「やばいーっ!」と叫びながら舞台上のクリエーターと近くの大型スクリーンとを交互に撮影しているのを見て、その人気の高さを肌で感じたのだった。(渡辺志帆)