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知らないを知って、視点を変える 「MASHING UPカンファレンス Vol.3」を開催

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キーノートスピーカーとして来日したのは、子どものための学習アプリを開発し、世界有数の社会起業家としてアショカ・フェローにも選出されているEnuma 共同創業者兼CEOのスイン・リーさん。そして、火星への移住を目指して研究・調査を続けている理論物理学者、科学技術者のアドリアーナ・マレさんと米国発のオンラインメディアのクリエイティブ責任者、ジーニー・グルナニさん。3人のトークセッションはもちろん、多くの会場が満席になる盛況ぶりだった。

 男女格差はやっぱりある?

日本の置かれた現状をデータから見つめよう、というテーマで行われたトークセッション「日本人は男女平等に興味がない? -職場での男女平等実現は200年先⁉ データから見る、今の日本の立ち位置」をのぞいてみた。

ファシリテーターはユニリーバ・ジャパン カスタマーマーケティングの河田瑶子(ようこ)さん。経済協力開発機構(OECD)東京センター所長の村上由美子さんと、東京大学経済学部准教授の山口慎太郎氏が登壇し、世界と日本の男女平等の現在について議論を深める内容だ。

OECD加盟国のうち、読解力と数的思考力は男女ともに日本が世界トップ。チームでの課題解決能力も、女性は世界一です」

OECD2017年に出したデータを説明したのは、村上氏。

「しかし、賃金の男女格差を見るとOECD加盟国中、日本は下から3番目。管理職女性は韓国に次いで2番目に低く、女性の国会議員数も他国から圧倒的な差をつけられています。つまり、リーダー層に女性が少ないということです」

北米のジェンダー関連調査によると、日本で女性が仕事を辞める理由は、子育てが32%に対して、仕事に満足できない(69%)、キャリアに行き詰った(49%)の方が大きく上回っている。一方アメリカでは、子育てが65%で、仕事に満足できないと答えた人は3割程度と逆転する。村上氏自身、3回の育休をとりながらゴールドマン・サックスやクレディ・スイスでキャリアを重ねてきた。

「子どもが3人いながらアメリカで仕事を長く続けられたのは、仕事が楽しく、そこから得られる満足感が大きかったから。子どもと一緒に過ごす時間も仕事も、両方捨てたくないという気持ちになれた。日本では『こんな仕事やってられない!』という状況が、優秀な女性を仕事から遠ざけています」

エビデンスを活用し、無意識のジェンダーバイアスを減らすことが男女格差の是正に役立つと話すのは、山口氏だ。

「バイアスを減らすためにはバイアスを可視化することが重要です。有名な事例は、ニューヨーク・フィルハーモニックが約30年前に導入したブラインド・オーディション。それまで団員の多くが白人男性でしたが、カーテン越しの音のみで審査する方法を取り入れて以来、女性の合格率が5割上がりました。アジア系や黒人団員も増え、ダイバーシティが一気に広がったのです。無意識のジェンダーバイアスは誰にでもあり、仕組みの導入がいかに大事かという好例です」

ほかにも、「ダイバーシティ研修による意識改革は効果がない」という論文検証結果を解説。「研修を受けたという免罪符効果により、ジェンダーバイアスは取り除かれたという認知の歪みが生まれる。結果、男女格差は縮まらない」という衝撃的な話も飛び出した。

 「自分のキャリアは自分で作る」

あらゆる組織でジェンダーバイアスを取り除くのは難しいにしても「勤続年数が評価につながるシステムにメスを入れるべきだ」と村上氏は話す。

「ブランクがあっても、それが能力の低下に直結しているとは限りません。勤続年数よりも個人の能力や成果にフォーカスする仕組みを導入するべきです」

一方、個人レベルでは「自分のキャリアは自分で作るというマインドを持つ」ことが大事だという。これからは、人事が敷いたレールに乗っていればキャリアが築ける時代ではない。自分は何がしたいか、自分で考えてキャリアを設計していく時代だと力を込める。

「日本社会は今ターニングポイントにきています。労働人口が減り続ける中、女性が活躍できる社会にならなければ、日本は立ち行かなくなる。だから女性は、自分が描くライフスタイルを実現できる場所を選んでいけばいいのです。女性から選ばれない企業は採用がうまくいかず、変わらざるを得ないでしょう。女性の選択こそが、これからの日本社会を変えると期待しています」

 働き方もいいけれど、いい「休み方」も考えよう

 キャリアや働き方以外に「休み方」を考えるユニークなセッションもあった。

Reshape『働き方』-休まざる者、働くべからず」に登壇したのは、オマツリジャパン代表取締役の加藤優子氏、講談社Palcy編集長の助宗佑美氏。ファシリテーターは、パーソルホールディングスCDOの友澤大輔氏が務めた。

 加藤氏と助宗氏、二人に共通しているのは好きなことをそのまま仕事に生かしていることだ。

「日本のお祭りを盛り上げる」をミッションに掲げるオマツリジャパンは、代表の加藤氏のお祭り好きが転じて起業化を実現。3.11後に開催されたねぶた祭りでの人々の笑顔を見て、「お祭りは人を元気にする」と確信したという。

「日本には約30万ものお祭りがあるといわれています。その一つひとつの情報を発信しスポンサーを集めることで、お祭りという無形資産を残していきたいのです」

一方、講談社の助宗氏は、幼少時代から漫画や小説を読み漁り、就職の時には出版社以外に行きたい場所が思いつかなかったという。

「仕事をするまで、私は“自分の中からは何も出てこないつまらない人間”だと思っていました。そのコンプレックスから、本や漫画を必死に読んでいた。でも『編集者』は、作品や作家を受容するのが仕事。やってきたことが仕事として認められるんだと、すごくありがたかったですね」

「休み」とは何か

 二人とも、「仕事も休みもどこかでつながっていて、境界線ははっきりしていない」と話す。では、二人にとって「休み」とはどういうものなのか。加藤氏は「休みの時間を決めて、そこから逆算して仕事をする」感覚を大切にしているという。

「お祭りの参加者は、『お祭り』という完全な休日をまず設定し、そこに向けて仕事をしています。この日は休み、と認識することで心身ともにリラックスできるのかなと思います」

 助宗氏の「休み」のテーマは「主体性を一切持たないこと」。休みの過ごし方のきっかけは、すべて外からもたらされるという。

「夫が山に行こうといえばふらっとついていきますし、周りに委ねて何も決めません。仕事は決定することの連続なので、自己決定しなくていいというだけで心が休まる。休みだからとエンジョイする必要もないし、SNSにアップできる素材がなくてもいいんです」

 何かをしなくちゃいけない、というストレスから解放されることが「休む」こと。そのスタンスには大いに学ぶものがあった。

MASHING UPのウェブサイトはこちら

(取材・文/田中瑠子)