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世界で通じるコミュニケーションとは? 「GLOBE+ TALK」開催

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イベント冒頭、陳暁さんに日本と中国のビジネスコミュニケーションの違いについて、実体験に基づいたエピソードの数々と共に話して頂きました。

中国で生まれ、幼少時代から日本と中国を2~3年おきに転々と移動しながら生活してきたという陳暁さん。12歳で日本に帰化し第一言語は日本語としながら、周りからは「日本にいれば中国人」「中国に行けば日本人」と呼ばれる特異な環境で育ちました。その経験と、上海の大学を卒業後に中国、日本双方で企業に所属しビジネスを進めてきたことが、「それぞれの働き方にアジャストする」強みにつながっているのだそうです。

陳暁さんは、ビジネスコミュニケーションにおいて、日本と中国の最大の違いは「人付き合い」だと断言。「中国は人と付き合う。日本は会社と付き合う」ということが、双方の国でビジネスを進めてきた自分なりの結論なのだそう。

「中国は社会の変化が激しく、1~2年単位のジョブホップ(転職)が当たり前です。ジョブホップしながらステップアップしていくというよりも、ベンチャー企業が生まれては消えていく流動性の高い社会ゆえ、転職せざるを得ない。今日は順調に進んでいるプロジェクトでも、明日には会社ごとなくなっているかもしれないのです」

何が起こるかわからないため、着手金の考え方も大きく異なるそう。途中でプロジェクトが頓挫しても赤字にならないよう、確約金の50%程度をスタート段階でもらっておくのが常識。中国のそのスタイルに慣れていると、着手金がなくてもプロジェクトが進んでいく日本の安定性に驚くといいます。

「社名も当てにならないため、相手が信じられるかどうか、自分で見極めるしかありません。日本社会のように、担当者がいなくなっても会社のチームメンバーが変わりを務めてくれるような担保はない。常に自己責任なので、人を見て仕事をしなければ生き残れません」

日本では、名刺の肩書きを見れば相手のポジションが確認できます。しかし、中国のビジネスシーンに名刺交換の習慣はないため、さらに見極めは難しくなるといいます。

「私は『中国の鷹は爪を隠す』と表現しているのですが、偉い人ほど自分が何者かを名乗りません。打合せやプレゼンテーションの場でも、立ち位置を明かさずにじっとこちらの対応を見ている。中国で仕事をしていて一番怖いのはそこだなと思います。難しいのは、年齢や服装など、見た目では判断できないこと。社会の発展スピードがはやいため、たとえ安っぽい服を着ていても明日には億万長者になっている可能性もあります。固定概念で相手を規定せず、誰に対しても対等に接することができるかをいつも試されています」

環境変化が激しいからこそ、仕事のスピード感も日本とは違うと指摘します。

「メールは即レスが基本で、どれだけ早くアウトプットできるかが個人の評価につながります。『すぐやります!』と言ったもの勝ちで、クオリティは後追い。20%の状態から走り始め、改善を繰り返して100%に近づけていくのが中国のスタイルです」

日本では、100が見えないとサービスをローンチさせないことも多くあります。でも、世の中の進歩がはやい今、いったんローンチさせるという中国のやり方は理にかなっていると思い始めているそうです。

「作り手の判断が社会の判断とイコールかどうかはわからない。予測が難しい世の中だからこそ、ユーザーの声を聞きながら改善していくことで、思いがけないクオリティに変化していく可能性があると思います」

中国と日本、それぞれのビジネススタイルに合わせながら仕事を進めているという陳暁さん。中国式に慣れていると、信頼性に基づいた日本社会に驚き、日本で仕事をした後は中国の流動性に驚く。そんな行き来を続けています。

「グローバルでのビジネスコミュニケーションの基本は、固定概念を相手に当てはめないことだと思います。これまでたくさんの駐在員を見てきましたが、現地で成果を上げる人は、現地の方とのコミュニケーション量が圧倒的に多い。個人的な付き合いを増やし、ネットワークでつながっていくことで、仕事のチャンスを広げているんです。既存社会の価値観にとらわれず、自ら殻を破れる人が、グローバルでも生きていけるんだと思います」

イベント後半には、蓮尾翔子さんとGLOBE+の堀内隆編集長が加わり、それぞれのビジネスコミュニケーション経験について意見を交わしました。

幼少期に8年間海外で生活していたという蓮尾さんは、現在イー・エフ・エデュケーション ファースト・ジャパンで社会人の留学支援も担当しています。「海外に身を置くことは、自分の固定概念に気づく貴重な経験」という一方、「語学ができるから、仕事ができるかといえば、また別の問題」だと話します。

「まさにそうで、仕事では語学力よりも熱意が大事」と応える陳暁さん。一番大事なのは何をやりたいか、TO DOが明確であることだといいます。

「語学留学する社会人は増えていると思いますが、目的達成型の方の学習スピードは全然違います。バイヤーとしてマーケットで交渉するために語学が必要だとか、好きなアニメのために何としてでもセリフを覚えたいだとか。仕事でも、これがやりたい!という思いが物事を動かしますよね」(陳暁さん)

海外でのビジネス経験が多い蓮尾さんと堀内編集長がともに興味を持ったのは、「海外では名刺交換をしない」という陳暁さんのエピソード。イスラエルやアメリカで特派員として駐在していた堀内編集長も「名刺交換はまずしなかったし、自分を名乗る際に会社名はいわない。名前と職種だけ紹介して挨拶が終わる」と振り返りました。

日本の名刺文化とは何か?という問いに「終身雇用がベースにあるのでは」と陳暁さん。

「海外では、自分が持つスキルはどこの会社にいっても変わらないし、それが生きる術。でも日本ではまだまだ“会社の人間”として生きられます。相手に肩書きを伝えないと、日本では仕事につながりにくい。でも、本人のスキルや権限範囲がどれくらいあるかの方が、本当は大事ですよね」(陳暁さん)

社名やポジションなどの肩書から解放されれば、人はもっと自由になる。そう話したのは、最近、シェアトリップで海外旅行に行ったという蓮尾さんです。初対面の参加者が集まるモンゴル旅行企画に参加し、肩書にとらわれないフラットな関係性が心地よかったといいます。

「参加メンバー25人は旅行期間中、一切肩書きに触れませんでした。旅の最後に『そういえば仕事は何をしているの?』という会話がちらほらと出ましたが、道中で人となりがわかるので、何の仕事をしてどれくらいのポジションにいるか誰も気にしていない。『この人面白いな』という感覚から仕事につながっていけば、それが一番本質的だろうなと感じた経験でした」(蓮尾さん)

肩書きがないから相手を自由に理解できるという感覚は、固定概念にとらわれず相手を見る大切さに通じます。「どこを見るべきか突き詰められれば、どこの国とも仕事ができるのでは」という堀内の投げかけに、陳暁さんも応えます。

「中国にいるととくに、社会の変容とともに人生はめまぐるしいスピードで変わっていきます。グローバルコミュニケーションでは、その前提で人と付き合うことが大事です。今の会社、肩書きからは想像のつかない何かを成し遂げる人はたくさんいる。今の状態をすべてだと思わず、個の力を見ていくべきです」(陳暁さん)

対談後も、参加者からの質問で議論が白熱した今回のイベント。海外の赴任経験がある方や、外資系企業で働くビジネスパーソンの参加者も多く、「個の力をつけるにはどう行動すればよいか」といった実践的な質問も多く飛び交いました。

「GLOBE+ Talk」では、次回も働くことをテーマに、さまざまな視座を提起していきます。

(取材・文/田中瑠子)