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海洋プラスチックごみ問題、私たちはどう向き合えば? GLOBE+Meetup Vol.4

LifeStyle 更新日: 公開日:

濱川夫妻は社会起業家支援などを中心に活動する「アースカンパニー」を設立し、インドネシア・バリを拠点に活動しています。「なのでプラスチックゴミについては専門家ではないんです。個人的にこの問題の先行きが気になる地球市民」と明日香さん。そう謙遜しつつも、この問題について語り出すと、さすがの情報量。過去に排出された83億トンとも言われるプラごみの1割もリサイクルされていないことや、空気や雨の中にもプラスチックが含まれていること、この1年で企業の関心が高まって来ており、特に欧州を中心に海藻などでできた代替品の開発が進んできていることなど、世界におけるプラスチックゴミ問題の「現在地」について解説しました。

濱川明日香さん

知宏さんは、バリ島の現状について説明。バリ島は美しい自然と裏腹に、「ゴミの島」の異名があるほど観光客が出すゴミなどによる環境への影響が深刻です。バリ州は今年6月、レジ袋の販売や配布を禁止しました。知宏さんによると、きっかけは、小学生の姉妹が始めた「レジ袋を使わない」運動。ハンガーストライキなどで州知事を促し実現させたそうです。一方で、レジ袋禁止を「違法」として提訴したリサイクル業者の動きがあったことなど、ごみ問題をめぐる複雑な状況があるといい、「今後、行政、市民、民間企業との間のこうした動きがあちこちで起きるのではないか」と見通していました。

バリの実情について話す濱川知宏さん

また、島の産業は観光業と農業なのに、観光客がごみを排出するばかりでなく、大量の水を使うために稲作用の水が足りず、貧困状況を悪化させている側面も。アースカンパニーでも研修などのために島外から人を招くことが多く、「バリに来てもらうことが、バリの課題に加担してしまうジレンマでした」と明日香さん。そこで「問題の一部ではなく、解決策になりたい」と、6月にエコホテルをオープンしたのだそうです。

後半では、GLOBE+の堀内隆編集長が、お二人を「公開取材」。エコホテル内にあるプラスチックフリーのショップについてたずねたところ、明日香さんが「生後3カ月だった子どもを夜中に授乳中、2018年のG7で日本とアメリカが海洋プラスチック憲章に署名しなかった記事を見て、『ありえない!日本!』と憤りを感じたから」との秘話を告白。コーワーキングスペースの予定を変更し、地産地消、エシカル、オーガニックで、購入することで地元の経済に寄与する品揃えのお店にしているそうです。

GLOBE+の堀内隆編集長

また、プラスチックフリーを広げる上で、日本と海外とでどんな違いがあるか、という質問について明日香さんは「日本は前例がないとやらないというメンタリティー」と指摘。日本の場合、上からのプレッシャーか、業界横並びに遅れを取るという時でないと新しいことは取り入れられにくい。日本社会は周囲に同調することが上手だが、海外では「消費者が企業を変える」「自分のチョイスが社会を変える」という感覚が根付いていると分析しました。知宏さんも、「日本人はリスク管理が強い。プラスチックの健康被害が証明された時、大きく変わるのではないか」との見立てていました。

濱川明日香さんと知宏さん

この後、参加者の皆さんから濱川さんへの質問に答えて頂きましたが、最大の難問が「プラごみフリーの社会を作るために日本社会でできることは」。せっかくなので、この解決策を参加者のみなさんで考え頂くことにしました。席が近くの人で6人ほどのグループを作ってのディスカッション。それぞれ初対面の人同士でしたが、活発に意見が交わされました。最後に各グループが発表。「職場でノーペットボトルデーを作る」「飲み物をマイボトルに注げるような自販機を開発する」など様々なアイデアが発表されました。

しかし、課題は大きく、会場にはやや「すっきりしない感」が……。明日香さんは「社会変革はちりつも。これだけの人の意識があれば、確実に構造的な変換はできる」と元気よく語り、これからの一人ひとりの行動に期待しました。

講演の中で、濱川さんが繰り返していた言葉があります。「Be the change you want to see in the world」。「あなたが見たい世界となるよう、あなた自身が変化となろう」という意味です。小さくとも確実な一歩を、一人ひとりが踏み出すことの大切さを感じたMeetupとなりました。