2014年時点で、携帯電話の人口普及率は84.7%。通話だけでなくインターネットの利用もさかんで、特にモバイル送金は広く普及している。少々意外な気もするが、これはアフリカの話だ。
社会インフラが十分に整備されていない新興国では、先進国が時間をかけて歩んできた発展段階を飛び越え、最新の技術が一気に広まることがある。これを「リープフロッグ(カエル跳び)現象」といい、固定電話のインフラ整備を飛び越えて携帯電話が爆発的に広がった2000年代以降のアフリカのモバイル革命は、その典型例といえるだろう。こうした環境の変化を捉え、近年はモバイルを起点にした新しいサービスを提供するスタートアップ企業が数多く立ち上がっている。しかし華やかな成長の裏には課題もある。最大の問題は、深刻な電力の不足だ。
携帯電話はあるのに電気がない。特にサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカでは、世界の未電化人口の実に半数以上、約6億人が今も未電化地域に暮らす。中国・インド・アメリカを合わせたよりも広大な地域に人口は約10億人という人口密度の低さゆえ、都市部のような大規模な集中型電源が成り立たないためだ。人々は集落で唯一の携帯電話充電器がある場所まで、何十分もかけて歩いていくことも珍しくないという。
そこで注目されるのが、小型のソーラーパネルと蓄電池を組み合わせた分散電源システム。LED照明や携帯電話充電器、TV、ラジオなど希望する家電とセットでレンタルし、モバイル決済で前払いした分だけ使用する――こうしたサービスがアフリカ各地で急速に伸びている。
サブサハラアフリカ地域の家庭で一般的に照明に使用されるのは灯油ランプで、月10$程度。それを同価格帯で太陽光発電型LEDに置き換えることが可能という。こうした分散電源サービスの普及の背景にはソーラーパネルの低価格化とLED照明などの家電のエネルギー効率向上に加え、モバイル決済の普及により料金回収・支払いが容易になったことがあげられる。
再生可能エネルギーを活用した分散電源システムは先進諸国でも導入が始まっているが、電力インフラである送電網の整備に先駆け、自然エネルギーとモバイル決済を活用した分散電源が急速に普及する様子は、まさにリープフロッグそのものだ。
灯油ランプからLEDへ。クリーンな太陽光を利用した分散電源システムでこうした需要を置き換えることができれば、人にも環境にもメリットが大きい。LEDの灯りは小さくとも、その確かな光はずっと遠くの未来までを照らしている。