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「本屋さんを遊ぼう」 GLOBE+Meetupを開催

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「文喫」は六本木の青山ブックセンター跡地に昨年12月オープンした書店です。入場料1500円を払った先にある空間には、よくあるベストセラーの平積みはありません。約3万冊の本は、すべてのタイトルが1冊ずつ。「本と出会うための本屋」というコンセプトはどこから生まれ、どんな場を目指すのか。副店長の林和泉さんに、朝日新聞編集委員の吉岡桂子記者が公開インタビューしました。吉岡記者はバンコクを拠点に活動、今回のイベントのきっかけになった記事「本屋の新展開」の筆者です。

吉岡記者は今回の取材で、「文喫」に興味を持っている人に何人も会ったとのこと。そして、「こうしたビジネスモデルが成り立つのか」と疑問を持っていたとのことでした。

林さんの答えは、「収入のメーンは入場料。でも、本も下支えしています」。入場者の3~4割が本を買い、客単価は通常の書店の倍程度の3000円前後になっているといいます。

その秘密は、本の並べ方にあるのでは、と吉岡記者。「文喫」の本の書棚は一般の書店とは大きく違い、新書の隣に図鑑があるような特殊なもので、「欲しい本を探している人には不便」と林さんも認めています。ところが、逆に、その棚の間をさまよううちに「自分が潜在的に気になっていたものが目にとまる」のだそうです。

それだけに、その3万冊のセレクトは重要。現在は6~7人の担当者が、毎日、知恵を絞っているといいます。「書棚は水のよう。流動的で、いつ行っても同じ日はない」と林さん。そして、店に来ただれもが、何かを押しつけられることなく、自分の1冊と出合える場所にしたいと言います。

読書人口が減る昨今ですが、林さんは「一冊読み切るだけが読書ではない」「気になる一文と出会うだけでも読書」ときっぱり。そんな林さんが、「恋をした時に読み返す一文」は、吉本ばななの「とかげ」の一節だと、少し照れながらも教えてくれました。

そしてGLOBE+ Meetup恒例のワークショップ、今回は「本屋を遊ぶ」。「インテリジェンス」「リラックス」「ファッショナブル」などいくつかのキーワードの中から「私が本屋に抱くイメージ」にあてはまる言葉を選び、2人1組になって短い動画撮影に挑戦です。

動画撮影の手ほどきは、テッド・シャークス(本名・山本哲也)さん。NYで映画製作を学び、現在は朝日新聞のデジタル部門でビデオディレクターを務めています。背景に映るものの形や色みで伝えたい感情を表現する手法、上から見下ろすか下から見上げるかで対象物のイメージを伝えるテクニックなど、プロの技法を学んだ後、参加者は文喫の店内に散ります。

わずか5秒という短い作品の中に、参加者のみなさんはどんなイメージを盛り込んだのか。できあがった作品は後日、サイトでご紹介します。

■中国・韓国の最新書店事情

続いて、中国、韓国の書店をいくつも取材して回った吉岡記者が、日本ではあまり知られていないそれぞれの国の書店事情を解説しました。

韓国はマーケットが小さい分、書店の生き残りは日本以上に厳しく、ただその先に、起業家精神が旺盛な若者が参入して独立書店を開く動きが広がっているそうです。低成長で就職難、という現実が「自分の好きなことをやった方がいい」と若者の背中を押している面もあるのだとか。

中国は国策で書店増を後押ししています。国民の読書を推進する運動を政府が進め、書店にも補助金を出すなど優遇措置が。ショッピングモールに大型書店が入ることが多く、「本屋が入ればモールの格が上がる」というビジネス上の思惑もあるそうです。一方で、政府の締め付けによって消えていく本屋も。「書店に人が集まり交流すること」への警戒感。吉岡記者は「知らない人と集う場であること。それが本屋にいることの価値」と言います。

文喫副店長の「本との出合い」の話を聞き、アジアの最新書店事情を知り、動画撮影も学び……と、盛りだくさんだった今回のイベント。参加者からは「『本屋は出会い』を体現できる場でした」「世界の奥をのぞかせてもらえた」「イベント3本分の内容」など、嬉しい感想を多くいただきました。

■次はみなさんも!

GLOBE+は6月1日、サイトオープン1周年を迎えました。

「世界のいまを知り、私たちの明日を考えるヒントに」。そんなコンセプトで、政治や経済からライフスタイル、食に至るまで、幅広いテーマの記事をお送りしてきました。

編集部が大切にしたいと考えるのは「新しい世界との出会い」です。日本とまったく異なる価値観や文化を知る、まったく違った生き方をしている人と出会う……GLOBE+のイベントもそんな価値を感じていただける場にしたいと思っています。今後も様々な切り口のイベントを企画中です。次回はみなさんもぜひご参加ください。編集部一同、みなさんとの出会いを心待ちにしています。

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GLOBE+ Meetup Vol.3「本屋さんを遊ぼう」