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不毛の砂漠に超高層ビルも エジプトの首都機能移転は「現代のピラミッド」か

World Now 更新日: 公開日:
今年1月に撮影された、新行政首都のモスク=ロイター

エジプトの首都カイロ。首都圏の人口は約2500万で、アフリカ大陸最大の都市だ。交通渋滞は年々悪化する。エジプト政府は首都の混雑を解消するためとして、砂漠の真ん中に行政機関を移す計画を打ち上げ、2015年から建設を始めている。カイロから東に45キロのところに建設中の新行政首都に行ってみると、古代エジプト文明のピラミッド建設を想起させる大規模な都市建設が進んでおり、度肝を抜かれた。

在日エジプト大使館によると、約700平方キロの面積に700万人を擁する都市を建設する計画で、今年末から大統領府や議会、中央省庁の移転を始め、2022年までに完了する予定という。600を超す病院や教育施設や、1000を超す宗教施設、計4万室のホテル、米ニューヨークのセントラルパークの2倍の大きさの公園などをつくる予定という。発電所や空港に加え、中国企業が参画し、アフリカで最も高い超高層ビルを建てる計画だ。

経済会議の会場で投資家向けに展示された新行政首都の模型=ロイター

アイマン・アリ・カーメル駐日エジプト大使は、インタビューに「現在のカイロはそのまま残るが、新行政首都には官庁、企業、大使館などが移る。空港や基幹道路もできることで『生きたハブ』になる」と話した。

カイロを出て第2リングロードと呼ばれる巨大な幹線を過ぎ、しばらく砂漠地帯を車で走ると、突如、左右に巨大な建物が見えてきた。片側にモスク、反対側に教会がある。

1月にすでに開所式が行われたようで、モスクはアフリカ最大規模だという。

エジプトの新行政首都に建てられた巨大なモスク=高橋友佳理撮影

鉄骨がむき出しになった住宅がずらりと並び、作業員たちがせっせと建材を運んでいた。
カナダ大学のキャンパスも移転するようで、看板が立っていた。

エジプトの新行政首都に立っていたカナダ大学の看板=高橋友佳理撮影

まだ道路は建設途中で、カイロに戻ろうと別の道に入ると、途中でアスファルトが途切れてしまった。だが何とか、すでに完成した道路にたどり着き、帰路についた。

案内をしてくれた政府系研究機関の研究員によると、勤め先の一部は新行政首都にオフィスを移したという。通勤を考えて、その研究員もカイロの外に自宅を構えていた。
政府系アハラム紙電子版に4月に載った記事は、政府が新行政首都を「国内初のキャッシュレス都市」にすると報じていた。

新首都内の住宅は高額で、まず公務員と富裕層だけが移り住むようだ。カイロに戻るタクシーで、運転手に新行政首都の話を振ると、「政府は国民の血税を新首都の建設や道路建設につぎ込み、新しい道路を通るたびに通行料をとられる。物価は高騰し、生活は苦しくなるばかり。国民のことを少しも考えていない」と怒りをあらわにした。会社の助手に聞いても、「行政機関が移るだけ」と素っ気ない。

急ピッチで建設が進む新行政首都=高橋友佳理撮影

カイロの混雑を解消する、という目的は理解できる。ひどい交通渋滞はカイロの空気を汚し、人々のイライラを悪化させているように思えるからだ。

だが、このような砂漠の真ん中に大規模な都市を造るとなれば、目的はそれだけではないだろう。HPのイメージ画像を見ていると、「美しく、近代的なエジプト」を諸外国に印象付けたいのでは、と思えてならなかった。

新行政首都の建設と並行して、カイロでは最近、街中のスラム街が行政により壊されている。新行政首都は、現代のファラオによる「ピラミッド建設」に思えてきた。