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地球の限界を知らずに「人新世」は生き抜けない 発展の限度を心得よ

World Now

人新世とはなにか

人新世は、人類によってつくられた新しい地質年代です。人間活動の指数関数的増大によって1950年前後から地球システムへの圧力が高まり、人間が惑星規模での変化の主役になったのです。
最終氷期以降の完新世(約1.2万年)は、温暖で安定した気候に恵まれて農耕文明が起こり、人類を支えることができる唯一の地球の状態でした。

その均衡は、生物物理学的プロセスと地球システムによるフィードバック、例えばグリーンランドや南極大陸の氷床による太陽光の反射率、土壌や植生、海洋の炭素吸収によって決められます。人新世の始まりは、地球のバランスの根本的な変化を示しています。人類自体が地質学的な力になり、地球に前例のない圧力をかけている状態です。

問題は、私たちがどこで閾値(いきち)を超え、いつ後戻りできなくなるのか。地球の新しい均衡状態になる転換点を超えることです。これが「温室の地球」と呼ばれるもので、気温上昇が2度を超えると、地球温暖化は4~6度、それ以上に、長期的に自己増幅する危険があります。

「プラネタリー・バウンダリー」を知れ

かつての人類は、地球の状態を左右するような存在ではありませんでした。しかし人新世では、地球を完新世の状態に保ち、人類にとって安全な機能空間を提供するにはどうすればいいかを、私たちはもっとよく理解する必要があります。

それは、私たち研究チームが「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」で、気候変動、生物地球化学的な流れ、生物圏の状態などについて描いたものです。地球や世界が不安定になるのを避けるために、私たちは地球の限界を知るだけでなく、その境界内で発展する必要があります。

人新世では、人類は地球変動の最大の推進者になっています。地震や火山噴火のような自然変動を、速度でも規模でも超えています。人間が地球にかける圧力は1950年ごろ急激に増大しました。私たちはこれを「大加速」と呼び、人新世の始まりを示しています。人類は確かに以前から、多くの環境問題を抱えていましたが、気候システム全体の安定性を危険にさらすような力はありませんでした。

人新世という用語は、地球上のすべての自然系に持続不可能な圧力をかけ、私たち自身の未来を危険にさらしていることを表現しています。いまのような状況を続けていれば、地球は転換点を超えてまったく違う状態になるでしょう。これが「温室の地球」であり、悲惨な未来は何世代にもわたって続く可能性があります。

その一方で、私たちは、これとは別の人新世を形成する力を持っています。安全な機能空間の境界内で繁栄と平等を実現する未来に向かって進む力です。それには困難が伴い、コストがかかるでしょう。そして、完新世が長期にわたって提供した「エデンの園」には、戻れないかもしれません。

しかし、世界がパリ協定に合意したことによって、私たちは地球を管理可能な状態に保ち、温暖化を2度未満に抑えるができます。これは、地球の安定性にとって最大のチャンスです。地球がまだ、水、空気、土地、魚、海などを与え続け、人類に「友好的」でいてくれるということです。

経済、社会、そして世界全体は、安全な機能空間の中で進化する必要があります。これこそが、いまの私たちの課題であり、途方もない技術革新と社会変革がもたらされると確信しています。

世界は2050年に100億人の人口を養うだけではなく、それを持続可能でスマートにやらなければなりません。それは、世界の食料システムを、現在の温室効果ガスを排出して生態系を破壊する方向から、主要な炭素吸収源に変えることです。私はそこにかかっていると思います。これは壮大な課題ですが、すでに多くの解決策があります。

1月の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席しましたが、世界の経済界がとる気候行動という面では、これまでで最も強い表明がなされたのではないかと思います。しかし、その努力は依然として遅れています。この不満は、ダボスの指導者たちによっても公然と議論されました。

私たちは、すでに1度の温暖化を経験しており、2018年は世界の大部分の人に気候変動の影響が明らかになった最初の年であったかもしれません。地球温暖化を1.5~2度未満に抑えるためには、世界の政治指導者やビジネスがさらに協調して努力する必要があります。

ヨハン・ロックストローム 1965年スウェーデン生まれ。地球の持続可能性の研究で著名な環境科学者で、ストックホルム・レジリエンス・センター所長を経て、昨年10月からポツダム気候影響研究所ディレクター。2009年に他の研究者とともに人類が生存できる範囲の限界「プラネタリー・バウンダリー」を発表した。