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【ミニ解説】「26兆ドルの利益」夢か現実か 拡大続ける環境マネー

World Now 更新日: 公開日:
世界で最も過密な都市であるバングラデシュのダッカ。交通渋滞は深刻だ=浅倉拓也撮影

世界的企業経営者や政治家らによる「経済と気候に関するグローバル委員会」が昨年公表した報告書によると、「大胆な気候変動対策により2030年までに少なくとも26兆ドルの経済的利益を生み出せる」という。
6500万人の新たな雇用や大気汚染による70万人の早期死亡の回避、炭素税などによる年2兆8000億ドルの歳入増を見込めるという。実際、環境・社会・企業統治に配慮する企業への投資(ESG投資)額は、16年に約2500兆円超と12年の2倍近くに増えた。

では、気候変動対策には、どれくらいのコストがかかるのか。それに対する人々の負担と恩恵はどのくらいあるのか。この分野の研究で知られるのが、世界銀行元チーフエコノミスト、ニコラス・スターンがまとめた「スターン報告」だ、GDP1%程度の対策コストをかければ気候変動の最悪の状況は避けられるが、行動しない場合の損害は毎年GDP5~20%に上ることを、経済モデルを用いた分析で明らかにした。

これに対し、昨年のノーベル経済学賞を受賞した米イエール大教授のウィリアム・ノードハウスは、スターン報告が「対策コストを低く見積もりすぎだ」と指摘するが、「カーボンプライシング(炭素の価格化)が温暖化対策に有効」という点では一致している。

気候変動ビジネスは、CO₂排出量の削減策が中心だったが、気候変動による影響を軽減する適応策の取り組みが存在感を増す。世界銀行グループは1月、気候変動への適応策のための直接的資金支援を21~25年度に500億ドルまで増やすと発表した。