麻薬(narcotic drug)とは、もともと「麻酔作用がある薬」だが、国によって定義は違っている。国連では、1961年の「麻薬単一条約」(現在は186カ国・地域が参加)の中で定められた規制すべき薬物が、「麻薬」とされている。
一般的には、脳に作用する幅広い薬物が麻薬と呼ばれていて、対応も国によって異なる。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、2016年に薬物を使用した人は約2億7500万人。うち有害な使用や依存に陥っている人は、約3100万人という。最も使われたのが大麻で、使用者は約1億9200万人にのぼる。大麻は着物などにも使われた麻の一種。世界各地に自生している。
この葉や花などを乾燥させたものがおもに「マリフアナ」と呼ばれる。テトラヒドロカンナビノール(THC)という成分が脳の働きに影響を与えるが、致死性などは比較的低いとされる。日本では大麻取締法で規制されており、外務省は「海外において(所持などが)行われた場合であっても適用されることがあります」と注意を呼びかけている。
日本での乱用が多い覚醒剤は、漢方薬に使われる麻黄から精製した物質を、加工して生まれた薬物だ。戦時中などは覚醒剤の一種「ヒロポン」が広く流通した。
コカインは、南米に多いコカという植物から精製される薬物。いずれも中枢神経を刺激する作用がある。
ヘロインは、ケシを精製してできる鎮静剤のモルヒネを、さらに加工してできる薬物だ。こうしたケシ由来の麻薬と同じ性質の薬物はまとめて「オピオイド」と呼ばれ、中には痛み止めなどとして医療に使われるものもある。
ところがオピオイドは、適切にコントロールして使わなければ、大きな危険を招くことが知られている。
世界保健機関(WHO)によると、15年の薬物による死者は45万人。うち過剰摂取など直接的な原因による死者は約17万人で、4分の3はヘロインを含めたオピオイドに関連していた。
新しく流行しているのが、医師が処方する医療用オピオイドの乱用だ。アフリカや中東などにも広がり始めている。流行する薬物は地域によって異なるが、中には厳しい国際規制がかけられていない薬物もあり、問題となっている。
特に流行が深刻なのは、米国やカナダなどの北米だ。医療用オピオイドをきっかけに薬物依存に陥る人が急増している。
トランプ大統領は昨年10月、オピオイド問題に対応するため「公衆衛生上の非常事態宣言」を出した。しかし、流行は収まる気配を見せていない。