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沖縄で科学者たちが祝うインドのお祭りとは?

美ら島の国境なき科学者たち
多くの多国籍メンバーが加わった2017年ディーワーリーのダンスパフォーマンス。その完成度の高さに観客は度肝を抜かれた。写真提供:Nicolas Moreno Chaparro / OIST
多くの多国籍メンバーが加わった2017年ディーワーリーのダンスパフォーマンス。その完成度の高さに観客は度肝を抜かれた。写真提供:Nicolas Moreno Chaparro / OIST

日本ではまだあまり知られていませんが、11月は、ヒンドゥー教徒にとって重要な光の祭典「ディーワーリー」があります。ここ、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のメンバーは、ヒンドゥー教徒であるなしに関わらず誰もがこのお祭りを毎年楽しみにしています。

今年6月からOISTでサイエンス・コミュニケーション・フェローとして働いている私もインド出身のヒンドゥー教徒です。故郷から遠く離れたこの地で、ディーワーリーがお祝いできるなんて、こんなに嬉しいことはありません。今日はこのOISTのディーワーリーについてご紹介します。

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OISTでのディーワーリーの歴史についてインタビューする筆者のイプシタ(中)。左は2014年ディーワーリー実行委員会の中心的人物だった学生のニシュタ。写真提供: OIST

OIST初のディーワーリー・パーティーは、OISTが開学した2012年、二人のインド出身の科学者によって始められました。以来、毎年お祝いされるようになったディーワーリーは、もうOISTの伝統行事と位置付けてもよいでしょう。発起人のケシャヴ・ダニ准教授と、マヘッシュ・バンディ准教授に当時について聞いてみました。

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OIST初のディーワーリーパーティーで挨拶をするケシャブ・ダニ准教授 写真提供:OIST

フェムト秒(10のマイナス15乗)という超高速のパルスを放つレーザーを使って、様々な物質内の電子運動を研究している物理学者のケシャヴ・ダニ准教授は、米カリフォルニア工科大学(Caltech)卒。Caltechも小規模ながら国際色に富んだ大学で、インドとその周辺諸国を含むインド亜大陸の多様な文化を紹介するクラブがありました。クラブが組織したイベントは出身地域に関わらず全ての学生に開放され、ダニ准教授も組織委員会の一員として活躍しました。 2011年にOISTに着任したダニ准教授は、沖縄に新しく出来たばかりのOISTが、1891年に創設された歴史のあるCaltechに遜色ない国際的な環境であること、そしてまだ教職員・学生をあわせても200名足らずの小さなコミュニティーであることから、このコミュニティーの結束を図る意味でも、皆が参加できるCaltechのディーワーリー式のパーティーをしてはどうかと考えました。そこで、同僚で同じくインド出身のマヘッシュ・バンディ准教授、そして他にもインド在住経験があったり、在日インド大使館での勤務経験のある日本人スタッフらの協力を得て、会場を盛大に飾り付け、沖縄で最もおいしいと評判のお店からインド料理を注文し、バンディ准教授がセレクトしたインド音楽を流して、OIST初のディーワーリーのお祝いが行われました。結果、全スタッフの半数を超える120名が出席という大盛況。

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2017年のディーワーリーのディナーの様子。絶品手作りカレーも提供された。食事は2000円のチケット制。写真提供:Neil Dalphin / OIST

「ディーワーリーのようなイベント企画に、インド出身者だけでなく皆を巻き込むことは、多様で幅広い視点を運営に活かすのにも役立ちます。」と、バンディ准教授も賛同します。「このようなイベントは、あくまでも非公式のボランティアベースで、かつ、誰もが参加できる形が理想です。 分野間の壁を排除したボーダーレスなOISTの科学研究を象徴するかのように、このイベントも地理的、政治的、または文化的な境界を超えていると思うのです」

こう述べるバンディ准教授は、非線形・非平均ユニットを率い、暴風の中で風力発電機がどう稼働するか、真菌が胞子を遠くに飛ばすために風をどのように利用しているのか、はたまた、樹木で生活していた類人猿から進化するにつれて人間の足の硬さはどのように進化したかなど、様々な自然現象を物理的に解明しようとしている研究者です。彼自身、異分野の神経科学者に協力したことで、ヒトの赤ちゃんが言語を発達させるように、歌を学習する鳥がどのように自分と同じ種の歌を識別しているのかという興味深い研究成果を出すなど、異分野間の協働が生みだす大きなシナジーを身を以て経験しています。

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インドの古典舞踊を披露する学生たち。ボリウッドダンスに古典舞踊といった多様な踊りを一箇所で見られるのはOISTディーワーリーの特徴だと、ケシャブ・ダニ准教授は言う。  写真提供:OIST

ダニ准教授とバンディ准教授は、2年後から主催者の座を博士課程学生に譲りました。彼らの願いは、常に新入生が主体となって、多国籍のメンバーを組み入れながら毎年違うディーワーリーをお祝いすることです。そうすることで、いろいろな立場の人の意見を取り入れることができ、インド系の人でない人も参加しやすい、真に国際的なイベントができると考えています。その期待を背負い、さらに期待を上回るディーワーリーを成功させたのが、今年4年生となるニシュタ・ラナワットと同級生たちです。彼女らは、ディーワーリーのお祝いをさらに進化させ、拡大させました。「2014年には、ディナーに加えて、ダンス公演、音楽リサイタル、インド映画の上映、クリケットの試合など、1日だけだったイベントを4日間のイベントに展開しました。」さらに、コストを削減するため、提供された食べ物はすべて学生たち自ら調理したのです。手作りのインド料理は、皆から大好評を得て、以降、毎年ボランティアによる手料理がディナーに加わるようになります。

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2014年に初めてダンスを取り入れたディーワーリー。写真提供:Neil Dalphin / OIST
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OISTは多才な科学者で溢れている。インドの伝統楽器と歌でパフォーマンスを披露してくれた。写真提供:OIST

インドの首都ニューデリー出身のニシュタは、ゼブラフィッシュの幼生の神経免疫細胞を観察し、内胚葉細胞が異なる機能を有する脳細胞に分化するメカニズムを調べています。幼い頃から音楽と踊りが生活の一部という環境で育った彼女は、踊りが大得意。ディーワーリーの1ヶ月前から同級生たちにボリウッドダンスを教えて週に3回の特訓をした結果、誰もが感嘆のため息を漏らすような素晴らしいショーを成功させました。

普段から実験で忙しい毎日を送っているニシュタに、なぜそんな大変な役を引き受けたのか、そして2014年から毎年ダンスの特訓を担当しているのはなぜかと質問したところ、「特別なことじゃない。どうせディーワーリーはお祝いしたいんだから、それをみんなとお祝いできたらさらに楽しい」とさらりと答えてくれました。

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2016年のディーワーリー時のダンスショー。左から二番目がニシュタ。写真提供:OIST

もともとディーワーリーは、善が悪に勝利したことを祝うヒンドゥー教の祭典でしたが、それに関連した宗教的な意味合いのほとんどを、特に海外では失い、おいしい食べ物、カラフルな服飾、音楽と踊りを楽しむことが中心となっています。ダニ准教授は、OISTのディーワーリーは、ここ沖縄で行われることに意味があると考えています。 「沖縄は歴史的に様々な国の間を行き来しながら栄枯盛衰を経てきた場所。昔も今も、多様な文化のるつぼであり、今、国際的な科学者の共同体であるOISTが、ここでディーワーリーを毎年お祝いしていることが、沖縄にとってもふさわしいのではないかと感じているんだ」

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今年は11月24日に行われたOISTのディーワーリー。猛特訓の成果であるダンスを披露してくれたのは十数ヶ国からの学生や研究員。 写真提供:OIST
沖縄科学技術大学院大学で11月24日に開かれたディーワーリーの様子

(イプシタ・ヘルレカル OISTメディアセクション)