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トランプ支持はつらいよ 米『民主島』の夏

ニューヨークタイムズ 世界の話題
マーサス・ビンヤード島にあるチルマーク・ゼネラル・ストア=2018年7月3日、Gabriela Herman/©2018 The New York Times

米マサチューセッツ州の沖合にあるマーサス・ビンヤード島。ハーバード・ロースクール名誉教授のアラン・ダーショウィッツは、この島の南西部、チルマークに暮らして25年になる。灰色の屋根の豪邸が立ち並ぶ閑静な町で、彼はおしゃべり好きな社交家としてよく知られていた。ところがこの夏、様相ががらりと変わり、住民から冷たい視線を浴びるようになった。
食料雑貨店のチルマーク・ゼネラル・ストアのベランダは、ロッキングチェアが並んでいて、住民たちがコーヒーを飲んだり、あいさつし合ったりする憩いの場でもある。しかし、ダーショウィッツは、店の常連たちの冷たい視線を感じてか、ベランダにではなく、携帯を手にルーシー・ビンセント海岸の方に散歩に出た。
この夏は、とダーショウィッツは言った。どうやら私はマーサス・ビンヤードでは歓迎されていないようだ。理由?
大統領ドナルド・トランプを支持するような意見を口にしたからだ。なにしろ、この島は夏になると米国内の進歩派の価値観と金と民主党勢力の中心地になるのだから。ダーショウィッツはそう言うのだった。

チルマークの食料雑貨店前。手前の車の助手席にいるのがアラン・ダーショウィッツ=2018年7月3日、Gabriela Herman/©2018 The New York Times

彼は6月末、政治ウェブサイト大手のThe Hill(ザ・ヒル)のコラムに、「私はマーサス・ビンヤードでマッカーシズム(訳注=1950年代に米国で起きた反共産主義の社会・政治運動)に遭うとは思いもよらなかった。だが、私は遭っている」と書き、島の友人たちから非難、中傷の矢を浴びている、と述べた。
ダーショウィッツは「米国憲法はトランプに味方するだろう、と私は言った。それだけで彼らには十分なのだ。彼らは私を避け、彼らの社会に入れようとしなくなった」とも記した。
彼のいう島の友人や知人たちに確認すると、ダーショウィッツがケーブルニュースでトランプ擁護の主張を活発に展開している以上、特にチルマークで良く受け入れられるわけがない、と口々に言った。島はリベラル派が多く、チルマークは中でも最もリベラル色の濃い町だ。
ある民主党員のカップルは、これまでパーティーでダーショウィッツとよく顔を合わせたが、今度ダーショウィッツに会ったらどうするか、2人で考えている、と言った。
小説家の故ウィリアム・スタイロンの妻で、長年島に暮らしている詩人のローズ・スタイロンは、ダーショウィッツについて「あれこれ話はたくさん出ています。私が聞いたところでは、みなさんは彼に怒っている」と、微妙な言い回しで語った。

米国では、ここ数週間トランプ政権の移民政策をめぐって激しい反対運動が巻き起こっている。その論争が、礼節と多様性を誇る米国東部きっての避暑地にまで及んだ格好だ。マーサス・ビンヤードはケネディ家、クリントン家、オバマ家をはじめとする民主党一族がよく訪れる島でもある。だが、ダーショウィッツはトランプをあからさまに擁護する。 通年島暮らしをしているピュリツァー賞作家のトニー・ホーウィッツも「夏は実に多くの人でごった返すが、本物のトランプ支持者に会うなんて、ここでは本当に珍しい」と言った。

チルマーク・ゼネラル・ストアのベランダは住民の憩いの場=2018年7月3日、Gabriela Herman/©2018 The New York Times

自宅にいたダーショウィッツに、電話で聞いた。すると、彼はトランプの政治課題を支持したことはない、ただし大統領にもシビル・リバティー(市民としての自由)はある。それを擁護しているだけだ、と言った。そして、島に住む友人のマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授が、彼に反対するメールキャンペーンを張ったのだとも語ったが、その教授の名は明かさなかった。

「私との付き合いをやめさせようとする人びとのネットワークができている」とダーショウィッツ。「だが、キャンペーンは完全に失敗した。だが、私は同情なんか求めていない」
この島では何かが変わってきた、とダーショウィッツは言う。ここ数年のことだが、反対意見が尊重されなくなってきた、と。
「私と議論したいなら、誰でも歓迎する」。ダーショウィッツはそう言って、チルマークのコミュニティーセンターで討論会を開く計画があると示唆した。
7月3日、独立記念日の休暇を翌日に控えたオークブラフス港には、行楽客を満載したフェリーが接岸した。港近くの砂浜は日光浴を楽しむ人々でいっぱいだった。気温セ氏約28度。湿度も高めのせいか、腰まで海水につかっている人も少なくなかった。通年を島で暮らす人は1万5500人。それが夏になると10万人以上に膨れ上がる。前回の大統領選では投票者の71%がヒラリー・クリントンに投票した。
入港するフェリーをベンチで眺めていたカップルに聞くと、マーサス・ビンヤードはあまり居心地の良い所ではなくなってきた、と言った。2人とも保守派寄りで、「ここでは政治的にも空のように青(民主党のシンボルカラー)一色だ」。そう言って、以前より疎外感を強く感じるようになった、と言った。女性は「非常にリベラルな島。まるでバーモント州のよう」と言ったが、名前は教えてくれなかった。理由は、彼女も島の住人で、これ以上仲間外れにされるのはいやだから、だった。
すでに隣近所の交流会などから「のけ者」にされてきたと感じている彼女は、「一つの会話を思い出すわ。私たちの友人だった女性が『トランプに投票するなんて、馬鹿な人だけだわ。そういうのは、この国の中央部にいる人たちなの』って」とも明かした。
チルマーク・ゼネラル・ストアは3日、買い物客でにぎわっていた。スクリーン印刷会社のオーナーを引退して島で暮らしているマリアンヌ・ニールは、ダーショウィッツについて「彼は長年のチルマーカー(チルマーク住民)で、知らない人はいない」と言った。彼女はリベラル派。「大統領を擁護する彼を不快に思っている人がいることは、私も知っている」。だが、一方で、この地域は保守的な面も持ち合わせている、とも言った。「私は彼に同意しません。しかし、彼を避けることもしません」。チルマークは「共生」を大事にする町だから、と彼女は言った。
店のベランダでピザを食べていたトニー・ゲイとホープ・ゲイは、この島にくる上で欠かせないのは、政治の話で衝突するのを避けることだ、と言った。トニーは穏健な共和党員で、エネルギー会社の役員をしている。彼の意見は「私はここに政治の話をしに来たのではない」だった。ダーショウィッツについては「彼はちょっと深刻に考え過ぎだ」と言った。
当のダーショウィッツは間もなく80歳の誕生日を迎える。彼は、ひどい誕生パーティーになるだろう、と言った。ただし、「真の友人は来てくれるだろう」と付け加えるのを忘れなかった。(抄訳)

(Jess Bidgood and Julie Bosman) ©2018 The New York Times

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