流通業界、音声ショッピング本格競争
「私の声で認証」
テレビのホームショッピングチャンネル「Kショッピング」を見ていて、気に入った商品があったので、テレビにつなげた人工知能(AI)スピーカー、KTの「ギガジニ(GiGA Genie)」に向かってこう話しかけた。約3秒後、画面に決済完了のメッセージが現れた。すぐに登録した携帯電話に注文商品の情報を含むメッセージ送られてきた。隣にいた人が同じ商品の決済を試みたが、できなかった。登録された声でなかったためだ。携帯電話が指紋を識別するように、AIスピーカーが声を識別して決済を行うのだ。
流通業界によると、流通業者は声による電子商取引サービスの導入を競い合っている。AIスピーカーの普及が広まるにつれ、この市場を獲得しようという流通業界の動きがさらに加速化するとみられる。
流通社「音声ショッピング市場をいち早く獲得」
Kショッピングの運営社KTHは最近、声だけで販売商品の決済が可能な「ギガジニおすすめショッピング」を始めた。KTHは、すでに昨年ギガジニを活用した対話型ショッピングサービスを開始していた。注文情報が載ったインターネットのアドレスを携帯のメッセージで受け取って、購入を進める形だった。今後は音声決済が可能となり、わずらわしい過程がなくなる。
音声決済には、KTが開発した遠距離音声生体認証(FIDO)技術が適用された。入力された音声データを分析、特徴を抽出して話し手を区別する原理だ。声の登録も比較的簡単だ。ギガジニに向かって、「私の声で認証」というフレーズを8回繰り返すと、「簡単決済認証完了」という言葉が現れる。キム・ウンジKTHオンライン事業本部課長は「登録できるのは一人の声だけで、録音した声を聞かせても認証されないため、保安性は高い」と説明する。
CJオーショッピングは、3月からSKテレコムと組み、「AI音声注文・決済サービス」を始めた。SKテレコムのAIスピーカー「ヌグ(NUGU)」が搭載されたSKブロードバンドのセットトップボックス「Btv X ヌグ」でのみ利用できる。セットトップボックスにつなげたヌグアプリケーションで本人認証、配送先と決済情報を設定すれば、CJオーショッピングのテレビ生放送を見ながら音声決済ができる。
ネイバー(NAVER)は最近、自社のAIプラットホーム「クローバ(Clova)」が搭載されたスピーカーを活用し、音声注文と決済が可能な「音声ショッピング」サービスを始めた。ネイバーショッピングモールで販売する日用品や食品の配達に限り、音声ショッピングができる。
最近8つの流通系列社のオンラインモール統合を発表したロッテグループは、AIによる音声商取引サービスを強調し始めた。今年AIスピーカーを発売し、2020年までにすべてのショッピングを音声でできる環境を構築する計画だ。新世界(シンセゲ)も、グーグルのAIスピーカー「グーグルホーム」との協業を推進中だ。
便利さ前面に、拡大する音声ショッピング市場
世界的に音声ショッピング市場は急速に成長している。
アマゾンは、AIプラットホーム「アレクサ」が搭載されたスピーカー「アマゾンエコー」を通してアマゾンプライムで販売するすべての商品を音声で注文できるようにした。
グーグルは、ウォルマートなどと提携し、グーグルホームを通した音声ショッピングサービスを提供している。グローバルコンサルティング業者「OC&Cストラテジー・コンサルタント」によると、全世界の音声ショッピング市場は、現在の20億ドル(約2200億円)から2022年には400億ドル(約4兆4000億円)台まで拡大するとみられる。
現在150万台程度の国内のAIスピーカー市場も、年末までに300万台まで拡大すると予測され、関連ショッピング市場もさらに拡大するとみられる。
流通業者は、音声注文が今後、電話やモバイルでの注文を上回るとみて、投資に積極的だ。KTH関係者は「音声決済は待ち時間がなく、電話注文と違って顧客センターにかかる費用も削減できる」と話す。
このサービスが定着するには、現在よりもさらに正確な音声認識技術の開発が課題だ。声の決済過程を体験してみると、少しでも声のトーンが高かったり低かったりすると認識率が下がるということが分かった。
ある流通業界の関係者は「AI音声ショッピング市場における国内の流通業者の多くは動き出したばかり。どこが信頼できる技術を開発するかが、今後の市場主導権獲得のカギを握ることになる」と、話した。
(2018年5月23日付東亜日報 パク・ウンソ記者)
(翻訳・成川彩)