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「がん難民」生むも無くすも医者次第 日本医科大の勝俣範之教授に聞く

World Now
勝俣範之医師

「がん難民」という言葉がある。手術や抗がん剤など、科学的根拠に基づく「標準治療」では打つ手がなくなった後も、治癒を求めてさまざまな治療法を試みる患者たちのことだ。一部の自由診療クリニックでは、こうした患者を対象に、科学的根拠に乏しい免疫細胞療法などを実施している。多くの場合、治療費は数百万円に上る。

「医療否定本の噓」などの著書がある日本医科大腫瘍内科教授の勝俣範之(52)は、「免疫療法を高額で行う医者は、基本的に『インチキ医者』。日本ほど、こうした根拠に乏しい医療が横行する先進国はない」と批判する。その一方で、勝俣は「がん難民が増え、自由診療クリニックが繁盛する理由の一端は、自分たちのように保険診療を行う医者の側にもある」と自省する。

現代医学では、進行がんや再発がんの完全な治癒は困難だ。医者の多くは、積極的な標準治療が終了した時点で、患者に「もう治療法はない」と告げるか、効果の乏しい抗がん剤治療を続け、副作用で患者の余命や生活の質を悪化させてしまうかの選択を迫られる。

それに代わる有効な「治療法」として勝俣が提唱するのが、欧米ではすでに広まっている「早期からの緩和ケア」だ。

治療の開始時から患者との対話を重視し、「がんを治すことよりも、生活の質を大切にし、よりよいがんとの共存を」という治療目標を共有する。患者には「決して見放さない」と約束し、余命の告知はしない。

看護師らと協力しながら、早期からの緩和ケアを実践した結果、勝俣の患者が免疫細胞療法に頼ることはなくなったという。早期から緩和ケアを行うことで、進行肺がん患者の生存期間の中央値が、8.9カ月から11.6カ月に伸び、生活の質も向上したという米国の研究もある。

「患者と医者との間の『信頼関係』は、延命効果が実証された立派な標準治療です」。そう勝俣は主張する。(文中敬称略)