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日本はアフリカとどうつき合うべきか

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エチオピアの首都アディスアベバでは、あちこちで建設工事が行われていた。中国企業も目立った

「アフリカの経済成長がすごい。日本もアフリカに乗り遅れるな」。そんな報道が2008年以降、日本の新聞や雑誌で数多くありました。でも今、状況はまったく変わってしまいました。
資源価格が下がって、アフリカの資源ビジネスはほぼ止まりました。それに伴い、他の分野の投資も減っています。アフリカ経済の減速は明白です。アフリカ経済ブームは終わりました。
それでは、日本はアフリカに関与しなくてもいいのか。そうではない、というのが私の考えです。
日本は長い不況の中にいます。問題は、輸出力の減退と、対日投資の低さです。先進国の中で日本の輸出力は極端に低く、外から入ってくる投資も少ない。日本はグローバル化の恩恵をまったく受けていないとさえ言えます。

これから日本の人口は減っていきます。それなのに国内の市場に依存している。緩慢なる自殺をしているのと同じです。まずは、輸出を増やすことが必要です。そこでまず、市場としてのアフリカの重要性があるのです。
資源価格の低迷で、資源ビジネスは、もうからなくなりました。それでは、他の分野があるのかどうか、本腰を入れて考えなければいけない。そういう中で注目されている国がエチオピアなんです。

JETROの平野克己理事

エチオピアには資源の輸出による収入がありません。にもかかわらず成長している。JETROは今年3月にアディスアベバに事務所を開きました。日本企業がほとんど来ていない国に、日本企業を呼ぶために事務所を開くというのは、JETROにとってほぼ初めての経験であり、挑戦なのです。
なぜエチオピアへの進出を決断したか。いろんな要因がありますが、ひとつは、現地政府がものすごく熱心だったからです。エチオピアは独自の予算で「カイゼン機構」をつくりました。「私たちは本当のカイゼンを見たい。日本企業に来てほしい」と熱意を見せられたのです。

■インフラをつくる中国


アフリカ経済で注目されるのは中国の動向です。
中国のアフリカ政策は一般に「資源獲得」ばかりが言われていますが、今の習近平政権は資源にほとんど手を出していません。代わりに何をやっているかと言うと、インフラづくりです。
経済成長はインフラ建設との追いかけっこです。急速に経済成長する国では、電力、道路、鉄道網がものすごい勢いでつくられます。日本も韓国も中国もそうでした。経済成長が一段落したときに、そういった建築土木部門や公共事業をいきなりなくすわけにはいきません。日本の場合は、国内各地で公共事業を展開しました。中国はそれを国際的にやっている。それがアフリカにも及んでいる。そう言えるのではないかと思います。

中国の支援でエチオピアの首都に昨秋開業したアディスアベバ・ライトレール

もう一つ、国家主席の習近平氏が言っているのは、「中国は賃金が上がって国際競争力を失いつつある。このままでは輸出力が落ちてしまう。競争力の劣る国内企業は、国外に出て稼いでほしい」ということです。その対象にアフリカも含まれています。
エチオピアは、アフリカの中でも中国がもっとも熱心に製造業投資をしてきた国です。アフリカ大陸には中国人が100万人いると言われますが、エチオピアには少なくとも2万人はいるとみられています。エチオピアはアフリカ連合の本部もありますから、政治的にも非常に重要です。
ただし、エチオピアの製造業に対する投資も、今は激減しています。おそらく中国の景気が悪くなったからでしょう。今後どうなるか、注意深く見ています。
いま、世界のものづくりの25%は中国一国にあります。その中国からどこに製造業が飛び出していくのか。戦後の開発史をみると、ものづくりの現場は最初は日本、次に台湾、香港、韓国、そのあと東南アジア諸国連合(ASEAN)に移って、そこから中国に行きました。中国の次にベトナム、カンボジア、ミャンマーに広がっています。それがアフリカにまで来るかどうか。中国のエチオピアに対する製造業投資が今後どうなるかを見れば、その行く末を占うこともできます。

■カギは農業の生産性向上

アフリカの中でもエチオピアがなぜ焦点になるのか。それは、賃金が際だって安いからです。意外に思われるかもしれませんが、じつはアフリカは、アジア諸国に比べて賃金が高い。だから製造業は来ない。なぜアフリカの賃金が高いかというと、農業の生産性が低いからです。
開発に「飛び級」はありません。必ずステップを踏まないといけない。まず農業の生産性を上げる必要があります。そうでないと食料の価格が高くなる。開発が遅れている国は食料が高いのです。「安くて豊富な商品」は、技術に優れたところでしかつくれません。技術が劣れば、高い値段で、少なくしかモノをつくれない。国全体の生産性が劣っている低開発の国では、モノは高くなる。だから賃金も高くなる。

エチオピアの首都アディスアベバ

ところが、アフリカの中でもエチオピアだけは賃金が安い。なぜか。ひとつには、都市化がそれほど進んでいないからでしょう。エチオピアで都市に住んでいる人は人口の15%ほどです。アフリカ全体を見れば、都市に人口の40%が住んでいます。その40%のうち、自国の農村が養えるのは20%程度。残りは輸入で食べています。輸入品は値段が高いから、食べ物の値段も上がる。
エチオピアには独自の食料があります。テフやエンセーテといった穀物です。それが、まだ15%くらいしかない都市の人口を支えているのではないか、というのが一つの推測です。

■世界的な視野でアフリカ進出を

ただ、日本からみれば、エチオピアよりはベトナムの方が距離的に近い。労働力の質の問題もあります。安ければいいというものではない。だから、日本企業のエチオピア進出はまだ進んでいない。今のところ、「ヒロキ」(首都アディスアベバ郊外に工場を開設した横浜市の革製品店)がほとんど唯一です。そのヒロキも、エチオピアの羊革の品質がすごく高いことに目をつけたわけで、労働力そのものに引き寄せられたわけではありません。

エチオピアにあるヒロキの工場

日本では、人口が減る以上に、労働力が減っています。若い人が減って、日本でものづくりをしようと思うと、どんどん高くつくようになっています。東日本大震災のあと、生産拠点が韓国や中国にたくさん流出しました。いずれ、ほかの生産拠点も必要になるでしょう。
海外に出て行くときに、その選択肢をグローバルに考えていただきたいというのが私の考えです。できたものをヨーロッパ市場に売るなら、工場もヨーロッパに近いところにある方がいい。
それに、エチオピアはまもなく人口が1億に達します。1億人の市場を捨て置けないというのが、グローバル企業の考え方でしょう。アフリカの人口は10億で、インドに近い規模です。「グローバル企業を目指しているけど、インドには行きません」とは言っていられません。同じことです。世界全体を視野に入れるなら、アフリカ、エチオピアにもぜひ目を向けてほしいと思います。