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テコンドーでつながる 小さな街の「世界」

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テコンドー師範 孫姫延(43)

●テコンドー師範 孫姫延(43)

テコンドーを通して韓国のことを知ってもらい、外国人同士にも友だちになってもらおうと2008年から始めました。師範は私を含めて3人がボランティアでやっています。最初に習い始めた外国人労働者は5人だけでしたが、これまで合計1160人がここでテコンドーを学びました。今は120人が登録しています。

その内訳を国別にみると15カ国と多様です。一番多いのはインドネシアで、フィリピン、ベトナムと続きます。ここで学んだ外国人労働者が師範になる審査を受けて合格し、地元に帰って道場を開く例もあります。インドネシアに九つ、ベトナムと中国、フィリピンにそれぞれ二つ、カザフスタンに一つあります。ただ、黒帯になった人は240人いるので、その全員が道場を開くというわけではありません。

私自身は小学校5年からテコンドーを始め、今は6段です。アカデミーの卒業生たちにテコンドーを教えるため、インドネシアやフィリピンなどに5回ほど行きました。

ここは特殊なケースだと思います。普通は韓国人の師範が海外に出てテコンドーを普及しますよね。でもここでは海外から人が来て習い、それを母国に持ち帰って普及する。安山市は小さい都市ですが、教室には「世界」とつけました。それが実現できていると感じています。

ソン・ヒヨン
1973年6月生まれ。



●テコンドー師範 金教煥(57)

安山市には80カ国以上から労働者が来ています。多文化といえる街ですが、美しい話ばかりではありません。外国人労働者が、工場の社長からひどいことをされたり、労働者がらみの事件があったりします。

工場で働いているだけだと、どうしても内にこもってします。外に出なければ韓国のことも知ることができない。そんな労働者たちにテコンドーを通して韓国を知ってもらい、寂しさも克服してもらいたかったのです。道着をまとえば、国も身分も関係ありません。一つになれます。

道場の総本山である国技院が海外に師範を派遣していますが、この師範たちは主に現地のテコンドー・エリートを育てるために送られます。テコンドーの大衆化に焦点を当てているわけではありません。それに費用も一人あたりでみると、かなりかかります。

でも、このアカデミーでは派遣費用もかけず、テコンドーを世界に広めているのです。労働者たちが自分の国に帰り、テコンドーだけでなく、韓国文化を伝えてくれれば、それだけで最高です。韓国のイメージが広がれば、将来、韓国企業の製品を買ってくれることにもつながるでしょう? テコンドーが立派な韓流になるわけです。

将来は、ここで学んだ労働者たちが自分の国に帰ってつくる道場が100になればいいなと思っています。

キム・ギョファン
1959年3月生まれ。



●インドネシア人労働者 ユリ・アシャリ・プトゥラ(27)

インドネシアのスラバヤから来ました。今回は2010年に続いて2回目の訪韓です。工場でパイプをつくっています。

でも工場の従業員にはインドネシア人しかいません。なので、ここで韓国や他の国の人たちと友だちになれることが、すごくうれしい。家族と離ればなれという寂しさも、まぎわらわせます。

前回、韓国に来たときに、テコンドーの3段を取りました。今回も働いて仕送りをしますし、そもそも入国の許可を受けたのも労働のためですが、自分だけの「本当の目的」があるんです。4段を取りたい。師範になって、故郷で道場を開きたいんです。

Yuli Ashari Putra
1989年7月生まれ。