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自生するコーヒーを売り出せ エチオピアの森で日本が試み

World Now 更新日: 公開日:
森に自生するコーヒーの木の状況を確認するJICAの西川達治(右)と現地スタッフのタファリ=左古将規撮影

首都アディスアベバから飛行機で1時間の地方都市から、さらに車で3時間ほど。ベレテ・ゲラ地方がその舞台だ。

人口が増え続けるエチオピアでは、村や畑を広げたり、燃料になるまきを取ったりするために、森の面積が減り続けている。JICAによると、かつて国土の約35%を占めた森が、2000年には4%近くにまで減少したという。


地元の人たちも生活がかかっているから、単に「森は大事だ」と訴えるだけでは保全は難しい。そこで、JICAとエチオピア政府は、この地方の特産品であるコーヒーに目をつけた。コーヒーは日陰を好むため、森の中でこそよく育つ。違法伐採を見つけたら止めるなどして森を守ってもらう代わりに、森の中に自生する「森林コーヒー」を通常の価格よりも1割ほど高い値段で買い取ろうという取り組みだ。

コーヒー鑑定士の中平尚己=左古将規撮影

その販売先がUCCだ。同社のコーヒー鑑定士、中平尚己は、年1回のペースで現地を訪れ、選別や保存の仕方などを助言してきた。「さすがに原産地だけあって、土壌も気候条件もコーヒーが育つためにぴったり。味も香りも世界の上位数%に入るスペシャルティーコーヒーだ。何よりも、自然の状態で森の中に自生しているコーヒーは、世界でもここでしか見たことがない。このストーリー性には高い付加価値がある」と評価する。採れた「森林コーヒー」は日本国内のUCCの直営カフェの一部で飲めるほか、業務用に販売もしている。

ベレテ・ゲラの近くに駐在し、地元農家の組織づくりなどを担ってきたJICAの専門家、西川達治は「地元に利益をもたらしながら、森の保全に貢献できれば」と話している。
(文中敬称略)