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「住民参加」で森を守る コスタリカのエコツーリズム

World Now
自宅敷地の原生林に遊歩道を作ったマリアルイサ=左古将規撮影

首都サンホセから北に50キロほどのリンダビスタ村。マリアルイサ・フェルナンデス(54)は今年3月ごろ、自宅の裏に広がる原生林に遊歩道をつくった。すべて歩くと1時間ほど。訪れた観光客を案内し、昼食を有料で振る舞う。これまでに約60人が訪れた。

遊歩道づくりを助言したのは、森を含む自然保護を担当するコスタリカの国家保全地域庁(SINAC)とJICAだ。

フェルナンデスが所有する70ヘクタールの森林のうち、一部からは木材を切り出したが、ほとんどは何にも使わないまま原生林として残っていた。「これだけ大きな森があるのにもったいない。有効活用してはどうか」とSINACの職員に勧められたという。

コスタリカの森は、1960年代から80年代にかけて激減した。1950年に国土の75%を占めた森は、87年に21%にまで減った。だがその後、92年の国連環境開発会議(リオ地球サミット)などで森の減少に対する危機感が世界的に高まり、コスタリカ政府も対策に乗り出した。森の面積は2013年に52%にまで「V字回復」した。

リンダビスタ村周辺を担当するSINACの担当官エリック・エレラは「最初、住民と役人がなかなかコミュニケーションをとれなかった」と明かす。政府側が「保護」を強調するあまり、国有地の利用を厳しく規制するなどして、住民との間にあつれきが生まれていたという。

JICA専門家の大澤正喜=左古将規撮影

そこでJICAは2008年以降、SINACと連携し、リンダビスタ村の周辺で「住民参加型」の自然保護プロジェクトを始めた。自然に負担をかけない程度の遊歩道を整備して観光客を誘致するほか、牧場を集約化して余った土地に植林し、同時に牧場の牛からとった牛乳で作ったチーズを「ブランド化」する。自然を守りながら住民の収入を増やすことを目指す。

一方で、森の中にカメラをしかけてジャガーやバクなどの野生生物を撮影したり、鳥の種類や数を調べる観察活動に参加してもらったりして、地元の人たちの自然保護に対する意識を高めているという。

JICAのチーフアドバイザー、大澤正喜は「地元の人たちの生活と自然保護が両立しなければ、自然保護は進まない。『自然を守ることによってお金が生まれる』というシステムが必要だ。お金を生み出すのは簡単ではないが、試行錯誤したい」と話している。(文中敬称略)