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競争社会は、もういい 韓国から北欧を目指す若者のリアルな声

World Now
イ・ジョンハン

「幸せ探し」のエンディングは?

ヨ・ジヒョン

韓国の芸術大学で写真を学んでいたヨ・ジヒョン(26)は「世界一幸せな国、デンマーク」を取り上げたテレビのドキュメンタリー番組を見たことがきっかけで、バックパックを背負ってデンマークへ出かけた。大学2年だった2011年の夏休みに2週間、卒業直前の13年にも10日間、電車やバスを乗り継ぎ、デンマーク国内を一周した。

旅の途中、電車の車両やカフェで出会った人たちに「幸せですか?」と聞いて回った。ほとんどの人たちが「幸せだ」と即答するのに驚いた。自分も含め韓国の若者たちに同じ質問をしたら、「自分って幸せだろうか」と悩む人が多いに違いないと思ったからだ。

大学を卒業後、ワーキングホリデーのビザを取って首都コペンハーゲンへ渡った。レストランで働きながら、結婚式やパーティーで頼まれてカメラマンとして働いた。1年後にいったん帰国したが再びデンマークに戻り、今は友人宅に居候しながら、芸術系の大学院への進学を目指している。

「韓国では『医者になれ』『弁護士になれ』『おカネを稼げる仕事に就け』と言われて育った。でも、デンマークの人たちと付き合ううちに、人生で大切なのはおカネやモノではないと気がついた。家族が元気でいたり、学校に通えていたり、目の前の小さなこと一つひとつに幸せを感じることが大切なんだと学んだんです」

キム・ヒウク

コペンハーゲンで暮らすキム・ヒウク(32)も「幸せ」の意味を考え続けてきた。デンマークの大学院に留学し、交通工学を専攻して修士号をとった。大学院を出ると、専門分野とは全く関係ない仕事を始めた。コペンハーゲンの市場の一角で、ソウルの街角で売っているような韓国風のホットケーキ「ホットク」の屋台を始めたのだ。

ホットクを売りながら、普通のデンマーク人と触れ合いたい。そうする中で、彼らがなぜ幸せなのかを学びたい。キムはそう考えた。焼きたてのホットクを自転車で配達し、職場や学校の内部も見学させてもらった。

そうしているうちに彼が気づいたのは、デンマークの人たちが「対話」を大切にしているということだ。韓国の学校では、教師が子どもたちに一方的に教える。韓国の職場では、上司が部下に一方的に命令する。デンマークでは子ども同士、同僚同士が対話して物事の進め方を決めていると彼は感じた。

韓国式に上から下に一方的に教えた方が、効率が良い面もあるのかもしれない。でも、韓国の政財界から汚職が消えてなくならないのは、上下関係が強い文化の中で、一部の人たちに権力が集中し過ぎているからではないか。キムはそう考えた。

それでも最近は韓国社会の風向きも変わったと感じるという。政治も経済も行き詰まる中、北欧に対する関心が急速に高まっているからだ。昨年、韓国のテレビ局がデンマークの教育現場の取材にきたときは、現場の取材交渉を買って出た。

「韓国は今、危機にあると思う。でもその分、外に目が向いている。危機は好機に変えられる。その一助に僕はなりたい」とキムは言う。

イ・ジョンハン

スウェーデンの首都ストックホルムで2年間暮らしたデザイナーのイ・ジョンハン(47)は、14年末に韓国に帰国した。以来、月に1度、北欧に関心がある人たちに呼びかけて、ソウルのカフェで会合を開く。今年2月下旬、会に参加した男女十数人に、イはこう呼びかけた。「ハーバード大学を卒業して、財閥企業に就職すれば、それで幸せですか? 世界には違う価値観もあるんです」

会合では、北欧に移住したいと考える人たちにアドバイスする。でもイ自身は北欧で暮らすことにこだわっていない。「北欧に移住すれば、誰でもすぐに幸せになれるわけではない。大事なのは心の持ちようです。人生はテストの成績だけじゃない。競争だけじゃない。韓国と北欧、どちらの価値観が優れている、劣っているという問題ではない。ただ、世界には別の価値観もあるということを知ってほしいのです」