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ビル建設ラッシュのアディスアベバ

Re:search 歩く・考える 更新日: 公開日:

5月15日夜、成田空港から昨年4月に就航したエチオピア航空の直行便に乗って、ぼくは17年ぶりにアディスアベバに向かった。公用語のアムハラ語で「新しい(アディス)花(アベバ)」という名の首都は、昔とまったく違う街になっていた。

空港から市街地へと続く大通り沿いには、新築や建設中のビルがどこまでも続く。かつて、大通りの真ん中をのんびりと歩いていたヒツジやロバの群れは見当たらず、片側3車線の道路は乗用車であふれ、渋滞まで起きている。

20階を超える高層ビルを背景に、高架鉄道の上を白と緑で塗り分けられた真新しい車両が行き交う。昨年9月に中国の支援で開業したという「アディスアベバ・ライトレール」だ。その線路は途中で地下へ潜る。終点は地下駅だ。

17年前、オモバコ村で地下鉄を知らない村人に「日本では、地面の下に穴を掘ってその中を鉄道が走っているんだ」と手ぶりを交えて説明したのを思い出す。「日本はすごい国だな」といたく感心された。

日本では、エチオピアと言えば、「裸足のランナー」アベベ・ビキラや、1980年代の飢餓の印象が強いかもしれない。それが今や、04年以降の経済成長率が平均年11%という「高度経済成長」を続けている。

「アフリカの優等生」とも呼ばれる成長ぶりに、外国からの視線も集まっている。

日本企業の海外進出を支援する「日本貿易振興機構(JETRO)」は今年3月、アディスアベバに新たに事務所を開設した。所長の関隆夫は「着任して1カ月で日本企業15社が視察に来ました。関心の高まりを肌で感じます」と言う。

JETROによると、エチオピアの製造業の賃金は月50ドル(約5100円)程度。中国の9分の1、カンボジアの半分以下だ。安い人件費が注目を集め、アディスアベバ郊外で14年に稼働を始めた政府直営の工業団地には、韓国、中国、インドなどの衣服メーカーが進出した。

横浜・元町に本店をもつ革製品の「ヒロキ」は13年、アディスアベバ郊外に自社工場を開設した。日本人3人が常駐し、現地の従業員22人とともに、エチオピア産の羊革でジャケットやシャツを作り、日本に出荷する。

エチオピア政府は11年、「エチオピア・カイゼン機構」を設立。日本の国際協力機構(JICA)の助言を受け、製造業の合理化(改善)を進める。日本企業に特化した工業団地の建設も計画している。首相特別顧問のアルケベ・オクバイは「我々には石油もダイヤモンドもない。だが、一生懸命に働く人たちと、明確な産業政策がある。25年には中所得国の仲間入りを果たす」と言い切った。

アディスアベバ大学に、社会学部教授のテセマ・タア(66)を訪ねた。初めてのエチオピア行きを準備していた学生時代、大阪の国立民族学博物館にいて、アムハラ語を教えてくれた恩師だ。「どうだ、エチオピアも変わっただろう。大きなビルがどんどん建っている。でも、この大学の卒業生でも、公務員か教師くらいしか就職先がない。深いところまで取材することだ」。そうアドバイスしてくれた。

(左古将規)

(文中敬称略)