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米国へ向かう移民の声、列車の屋根で通訳 @メキシコ市(メキシコ)

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
故人をしのぶメキシコの祝祭「死者の日」にはお墓や街中にマリーゴールドの花があふれる Photo: Yamamoto Michiko

私のON

《メキシコ市》 世界第2のカトリック国・メキシコの首都、人口約900万。日本の自動車関連企業の進出で在留日本人数も増えている。貧富の差が激しく、隣の米国へ合法・不法とも移民を試みる人が絶えない。

大学卒業後まもなく、結婚して移り住んだメキシコ市で大学の先輩に誘われ、アルバイトで始めたのをきっかけに、通訳者になりました。26歳で長男を出産後は自宅で翻訳も。ネット検索がいまほど便利ではなかったので、専門用語は辞書と首っ引き。専門家にもあたり、ひとつの訳語にたどりつくのに1時間以上かかることもありました。

通訳として自活するようになったのは離婚した2006年から。就職するまでのつなぎのつもりが今に至ります。日本企業の進出が増えるにつれて仕事も増え、出張にもしばしば同行します。

麻薬組織の抗争で治安の悪化が言われます。身の危険を感じたことはありませんが、何年か前、よく行っていた自宅近くのスターバックスで、麻薬組織の関係者が射殺される事件がありました。まもなく営業を再開していましたが、登録する通訳会社からの注意喚起で、行くのはやめました。

メキシコを北上する貨物列車の屋根に飛び乗り、米国への越境を試みる中米の人たちの取材に同行したことも。屋根から落ちて命を落とす人や、犯罪組織に拉致される人もいます。私は屋根の端につかまり続けて無事でしたが、地上からは遺体のようなにおいもしました。列車に乗るまで歩きづめだった移民たちは、足も血まめだらけ、靴もぼろぼろ。妊婦さんもいました。それでも国境で送還させられることがほとんどで、いい暮らしをめざす痛切な思いを感じました。

私のOFF

死者に思いをはせる「死者の日」は好きなメキシコの習わしのひとつ。職場や大学も至るところが花や骸骨形の砂糖菓子でいっぱいになります。手作り感があってどこかユーモラス。階級に関係なく、みんな死んだら同じ骸骨、死んでも楽しいのかも、っていう雰囲気が伝わってきます。

(構成 GLOBE記者 藤えりか)

みしま・れいこ

1969年東京生まれ。上智大学イスパニア語学科3年の時、スペイン語のスピーチコンテストで3位となり、副賞でメキシコに留学。上智大学を卒業した92年、本格的に移り住んだ。