小規模農家が多いアフリカでは、天候不順や病気で一つの作物が不作になっても、ほかの作物で主食をまかなえるようにしているのだという。
なかでも気になったのが、料理用のバナナだ。首都キガリにある市場に足を運んだとき、房のままごろごろ並べられた巨大な緑色のバナナはエネルギーの塊のように見えて、食欲をそそられた。
一緒に街を歩いていた旅行ガイドに、「あれが食べてみたい」とお願いし、知人の店に連れていってもらった。
エルネスト・セベラ(39)が営むレストラン「フィックステック・ファストフード」は、バイクタクシーが忙しく行き交うビジネス街にあった。界隈で働く人たちが短時間で食べられるようにと、店名に「ファストフード」と付けたが、ふつうのルワンダ料理のメニューもある。値段は一品200円と安い。
ガラスケースに並んだ料理のひとつに、赤いスープにひたった太いバナナを見つけた。セベラによると、トマトで煮込んだルワンダならではの料理だ。
食べてみると、ホクホクした食感がジャガイモにそっくり。普段、日本で食べるバナナと違って、甘い風味はなく、味も淡泊でイモに似ている。おいしく味わえるかどうかは、一緒に口に入れるスープの味にかかっているらしい。
「ところで、ルワンダ料理の特徴って何ですか?」。ふと疑問が湧いて、セベラに尋ねてみた。
「野菜にしても肉にしても、できるだけ油や調味料を使わず、食材をゆでるのが基本」。確かにバナナのトマト煮も、複雑なスパイスや濃いソースの味はなく、食材の味わいがそのまま残っている感じがした。
1994年の民族虐殺のあと、ルワンダは急速に発展し続けている。「欧米文化の影響で食べ物も変わってきたが、新鮮でシンプルなルワンダならではの料理を大切にしたい」
セベラの言葉を聞いて、応援したくなった。