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アメコミ史上初の女性ヒーロー、実写化 『ワンダーウーマン』

Cinema Critiques 映画クロスレビュー 更新日: 公開日:
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

パティ・ジェンキンス監督=山本裕之撮影

Review01 樋口尚文 評価:★★★(満点は★4つ)

男目線のエロス吹っ飛ばす

『レッドソニア』やあまたのRPGゲームに出てくる欧米発想の「女剣闘士」がどうにもカッコよく思えないのは、あのビキニアーマーに太い剣を振り回す女という意匠が、到底戦える女性のアイコンとは思えないからだろう。こんな女剣闘士のいでたちは、戦前のパルプマガジンなどが男性好みのお色気狙いで生み出したものらしく、かつて女部族を描いた映画『アマゾネス』も、男性目線のエロティックさが目立った。

しかし本作で描かれる女部族の島では、女王の崇高な志のもと、女たちは厳格なる武闘の研鑽にいそしむ。そこで生まれ育った麗しき主人公ダイアナ(ガル・ガドット)は、ビキニアーマー的衣装に剣と盾というおなじみの姿でありながら、なんと第1次世界大戦末期のベルギーに侵攻したドイツ軍と戦うのだが、ここの描写のハードさとダイアナの勇壮な雰囲気がとてもいい。

逸材ガル・ガドットは、ずばぬけた美しさ、雄々しさ、そして速さ、激しさによって、ワンダーウーマンの意匠がもともとはらむ男性への媚態を吹っ飛ばしている感じで、映画に出て来る女剣闘士をこの映画で初めて爽快でカッコいいと思った。

これは何より、女性監督ジェンキンスの貢献が大きいはずだ。実は本作自体が、超大作の監督を女性に委ねてこなかったハリウッドの歴史を、同監督が前作『モンスター』から14年かけて(!)くつがえすという一大ドラマなのであった。これは本作の突き抜けたヒロインのあり方そのままではないか。

Review02 クラウディア・プイグ 評価:★★★▲(満点は★4つ、半分)

力強い女性の物語に支持

女性のスーパーヒーロー映画も、大予算映画を女性監督が任されることもまれな米国で、興行収入は今夏最高、公開最初の週末としても女性監督史上最高を記録した。

牽引(けんいん)役は女性と中高年世代の観客。女性初の米大統領誕生を見られず落胆した人たちが女性の力強い物語を求め、女性監督を支持したということだろう。アメコミ映画はアカデミー賞では技術部門の受賞どまりなのが常だが、今作は監督・俳優部門でのノミネートもささやかれる。監督は『モンスター』(2003年)でシャーリーズ・セロンにオスカーをもたらしている。

物語の焦点を第1次大戦としたのも意義深い。1941年に原作を書いたマーストンは、当時の女性参政権運動に関心を寄せた。それから76年経ってやっとここまできたということだ。