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当事者たちが語る「アトピー」

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河野太郎

2017年8月の内閣改造で外相に就いた河野太郎(54)は、幼少の頃にアトピーを発症した。私が取材に行ったシンガポールでの安全保障に関する国際会議に出席しているのに気づき、帰国後に取材をお願いした。

「シンガポールではホテルに帰るのが深夜になることが多くて、(症状が)ひどくなったな」

聞けば、過去に症状が悪化して何回か入院したことがあるという。仕事で多忙な時期や夏場に汗をかくと肌の調子が悪くなるため、今は毎日のように塗り薬や保湿剤で症状を抑えている。

「アトピーで良かったことなんてないけど、そんなに気にしていない。食事とかもあまり考えていないよ」とたんたんと話した。

フィリピンのアトピー患者、チョロ・フランシスコ(14)は、将来の夢についても語ってくれた。

チョロ・フランシスコ

「ゲームプログラマーになりたい。ゲームが好きだから。スマートフォンで116時間くらい遊んでいる時もある。オンラインで他の国の人ともプレーするから、友達がたくさんいるんです」

好きなことについて語る時の彼は、飛び切りの笑顔だった。もちろん、横にいた母親のモニックは「夏休みだけよ」と、たしなめることも忘れなかった。


米国の大学生、アレグザンダー・チャー(19)は、高校生の時に重症化し、一時は肌を出すのを避けた。

アレグザンダー・チャー

「注目じゃないけど、当時は認められたいという思いがあった」と振り返る。

ただ、最近はそこまで気にしなくなったと言う。なぜか?

「多分、アトピーがあることを受け入れたんだと思う。他の人が知りたければ(アトピーだと)伝えるけど、それで判断したいならどうぞ」

アトピー患者らの電話相談に応じている認定NPO法人日本アレルギー友の会で事務局長を務める丸山恵理(57)は、自身もアトピー患者だ。

生後3カ月で発症し、「何で自分だけ」と思ったこともあった。ただ、会の活動を通じて、薬のつけ方や医師との接し方など、自分の経験が役に立つことを知った。

「自分が思っているよりも、周りは皮膚のことをそこまで気にしていない。相談の相手には、考えすぎず、楽しく過ごしていって欲しいと伝えている」

取材した日も、電話をかけてきた女性患者の話を聞きながら、「生き生き過ごした方がいいですよ。私もケーキも食べるし、お酒だって飲みますよ。1人だとどうしても心配になってしまう。だからこの活動をしているんです。またいつでも連絡してきてください」と励ましていた。

フィリピン皮膚科学会会長のマリアアンジェラ・ラバディア(59)は、貧困家庭の患者が治療を満足に受けられない実態があると指摘する。

フィリピン皮膚科学会会長のマリアアンジェラ・ラバディア

「経済的に恵まれず、支払いができないために重症化してから運ばれてくる人が少なくない。生き抜くことが最優先ならば、皮膚について気にしていられないのです」


多くのアトピー患者を診てきたオレゴン健康科学大学教授のジョン・ハニフィン(77)は、ユニークな説を教えてくれた。

オレゴン健康科学大学教授のジョン・ハニフィン

「アトピーがある人は、そうでない人よりも頭がいいという説がある。もう100年前の話になるけど、ドイツのある教授が唱えたんです」

簡単には信じられなかったが、ハニフィンは「私の印象でも、アトピー患者、特に子どもたちは、成績が良いことが多い」と強調した。

 

かゆみを抑える効果が期待される「ネモリズマブ」の研究成果をまとめた京都大学教授の椛島健治は、「多くの患者が皮膚科に来るのはかゆいから。かゆみを抑えられれば、大きなインパクトになる」と語る。

京都大学教授の椛島健治

 椛島は「薬の副作用もきちんとみたい。メリットが多くあっても、万が一のことがあるといけないので慎重にやっていきたい」と語る一方、「今後、アトピー患者の薬の選択肢は増えると思う。安易な期待はしない方がいいが、新しい時代がきつつあるのは間違いない」と話す。


新薬の臨床試験に関わる東京逓信病院副院長の江藤隆史の見方はもう少し慎重だ。

東京逓信病院副院長の江藤隆史

「(新薬の)注射薬に関しては価格の問題もあるし、全ての人が対象にはならないだろう。大多数の患者にとっては、今はまだ、標準的な治療であるステロイドなどの塗り薬を適切に使い、コントロールしていくことがより大事ではないか」と話す。(敬称略)

 

illustration:Nagasaki Kuniko