引っ張りだこの太平洋の島国 日本は存在感示せるか
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中国が太平洋の島国への影響力を高めるなかで、各国は島国支援の会議を開くようになり、いまや島の首脳たちは引っ張りだこだ。こうした会議の先駆けが、日本の「太平洋・島サミット」だ。1997年から3年に1度、各国の首脳を日本に招いており、5月には福島で8回目のサミットが開かれる予定だ。中国が存在感を増す中で、日本の立場は――?
日本の太平洋研究の第一人者である小林泉・大阪学院大教授(国際政治学)は「先んじて始めた意義は大きかったが、中国が着々と地固めをする中で、日本はもう一つ存在感を発揮しきれずにいる」と話す。
象徴的だったのが、2006年の第4回島サミットだ。開催を目前に控えて、中国がフィジーで「中国版・島サミット」を開くことが判明。「島サミットつぶしだ」と関係者が戦々恐々とするなか、中国は3年間で430億円の支援を発表。宣言文に支援額を盛り込んでこなかった日本は急きょ、ほぼ同額の支援を宣言文に盛り込み、その後も慣例になったという。小林は「援助の分配会議になっては困る」と指摘する。
いまではフランスや台湾、ロシア、韓国も似たような「島サミット」を開く。「気候変動の象徴的地域となったこと、さらに中国の世界的膨張が太平洋にも及んだことで、辺境だった島国の国際的地位が一気に上がった。太平洋のリーダーは、自国にとって効果的な相手を選ぼうとしたたかに動いている。日本は右往左往せず、島国とともにどんな太平洋社会を構築していきたいのか。しっかりとビジョンを伝えていくべきだ」と小林は話す。