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ノーベル生理学・医学賞はカタリン・カリコ氏ら 新型コロナ対策のmRNA開発に貢献

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カタリン・カリコさんとドリュー・ワイスマンさんの写真
カタリン・カリコさん(左)とドリュー・ワイスマンさん=2022年4月、東京都千代田区、嶋田達也撮影

スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、今年のノーベル生理学・医学賞を、独ビオンテック社のカタリン・カリコ氏(68)と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン氏(64)に贈ると発表した。業績は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する効果的なmRNAワクチンの開発を可能にした核酸修飾に関する発見」。世界でパンデミックを起こした新型コロナウイルスに有効なワクチンの開発につながったことなどが評価された。

感染症に対する治療法としてのワクチンは、死滅または弱毒化したウイルスを用いてヒトの免疫機能を活性化させ、ウイルスに対する抵抗性を高めることで実現されてきた。

ポリオ、麻疹、黄熱病といった病気に対する有効な予防法になった一方で、製造や開発には大量の細胞培養が必要で、今回の新型コロナウイルスのような急激な世界的流行に対しては、開発・製造が間に合わないといった問題が知られていた。

ハンガリー出身の生化学者であるカリコ氏は、私たちの体でDNAを元にたんぱく質を作る際に機能する「メッセンジャー RNA (mRNA)」に注目。狙ったたんぱく質を体内に作り出すことで、ワクチンや薬への応用ができないか、ペンシルバニア大学時代の同僚だった免疫学者のワイスマン氏とともに研究を続けた。

その際に問題となったのは、mRNAを使う方法では過剰な免疫反応による炎症反応が起こってしまうこと。カリコ氏とワイスマン氏は、mRNAの一部を別の物質に置き換えることで、炎症反応を引き起こすのを抑え、さらにたんぱく質の生成も増やせることを発見した。

この技術が、ジカウイルス感染症や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発に応用されていたところに、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生。短期間でのワクチン開発と製造の実現につながった。

ノーベル財団はプレスリリースのなかで「mRNAにおける塩基修飾の重要性に関する基礎的な発見を通じて、現代最大の健康危機のひとつにおいて、革新的な発展に大きく貢献した」と業績をたたえている。