ーーサンマリノに興味をもったきっかけは何ですか。
アイルトン・セナが亡くなったF1のサンマリノGPで名前を知りました。イタリアのどこかの地名なのかなと思って地図を見たら国だと知って驚きました。調べてみると、301年に建国されたらしいと。日本でいえば卑弥呼の少し後の時代。そんな国が今も残っている。僕は歴史が好きなんだけど、ロマンを感じました。国旗には、サンマリノにある三つの塔が描かれているのですが、それがまるで私たち「THE ALFEE」の3人みたいで、そこも気に入りました。
一番感動したのは、戦争をしたことがないということ。僕は平和が好きだから、素晴らしいなと思いました。
ーーなぜ長い間、平和な国でいられたと思いますか。
政治のやり方をみればよくわかる。元首にあたる執政が2人いて、半年で交代することになっている。こういった民主的な政治がはるか昔から行われている。普通、人間が集まるとエゴイズムの塊になってしまうけれど、そういうのはこのシステムだと起こりにくいのではないでしょうか。それこそ民主主義の根幹だと思います。サンマリノは国がまとまっている。元首が2人いて半年でかわるなら、独裁も癒着も防げるだろうし。よく考えられた仕組みだと思う。権力は何のためにあるのだろうと考えると、国民のためなのだから。もっと大きな国でも実践できないでしょうか。
今回のウクライナ侵攻では、いち早く300人の難民を受け入れたと聞きました。すごいことだよね。第2次世界大戦のときも、当時の人口がわずか1万5000人だったのに、10万人もの難民を受け入れました。こうした歴史があるから、すぐに行動ができる。国民が本気で平和を求めています。
ーー高見沢さんは2018年に、実際にサンマリノを訪れましたね。
驚くほど手厚い歓迎を受けました。サンマリノの人は外交とは「相手の国を知ることだ」と思っています。日本のことをものすごく知っていた。文化大臣の執務室を訪れたとき、「THE ALFEE」のビデオが流れていました。そういったことが自然とできるので、こっちもつい心を開いてしまう。サンマリノの人は素朴であたたかい。勢いよくグイグイくると疲れてします。でも、あまりグイグイこない感じで、それがすごく心地よかったです。
サンマリノはワインの産地でもあるので、ワイナリーも訪れました。ワイナリーには蛇口がずらりと並んでいて、地元の人がタンクを持ってくみに来ていました。ワイナリーのモットーは「小さくてもいいものを」。サンマリノという国と一緒。勲章をもらったとき、そのワイナリーの方々から広大なブドウ畑の一画をいただきました。
サンマリノのワインはとにかくおいしい。日ごろ飲むワインとして最高。気候にも恵まれているし、何より人柄がいいから、それが味にもにじみ出ている。音楽だって人柄が音にあらわれます。
ーーここ数年のコロナ禍で音楽活動にも影響があったと聞いています。
予定されていたツアーが次々中止になり、人生について考える時間が増えました。ロシアのウクライナ侵攻もあり、人々が生きていくうえで平和はすごく大事だと改めて思った。
日本の人たちは政治に対してどこか他人事なような気がする。サンマリノは、みんなで生きていこう、平和を守ることが一番大事と決めて、それを守っている。小回りの利く範囲の大きさだからコンセンサスを得やすい。国の形としては理想ではないでしょうか。
彼らは大事なものをわかっている。小さいけれど、すごく強い国だと思います。キリキリしていたら優しくないし、平和じゃない。優しい気持ちになれないと平和はおとずれない。
サンマリノと同じようにできなくても、きっかけは何でもいいからまずこんな国があってこんな人たちが住んでいると知ること。我々にも出来るところを見習ってみると、少しずつ何かが変わるのではないでしょうか。