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スペースXは「ノアの方舟」になるか イーロン・マスクが熱弁「火星を目指す理由」

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火星への有人飛行について熱っぽく語る、イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州のブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影
火星への有人飛行について熱っぽく語る、イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州のブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影

「なぜ巨大な再利用可能なロケットを作るのかって? これは生命の将来にとって、とてつもなく重要なことだと僕は思うんだ」。スポットライトを浴びながら、マスクは火星を目指す理由を語り始めた。

「地球上でよくないことが起こる可能性がある。我々が引き起こす惨劇かもしれないし、自然災害かもしれない。僕は生来の楽観主義者だから、そんな可能性は低いと思っているんだけどね。でもゼロではない」と時折、身ぶり手ぶりを交えながら熱っぽく語る。

「いずれは太陽が膨張し、すべての生命が滅ぶだろう。地球上のすべての生命を大切に思う人たちにとって、人類は生命のスチュワード(世話役)であり、ガーディアン(守護者)なんだ」

開発中のロケット「スターシップ」の前で語る、イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州のブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影
開発中のロケット「スターシップ」の前で語る、イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州のブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影

マスクは背後で銀色に輝く巨大なロケットをあたかも「ノアの方舟(はこぶね)」だと思っているようだ。「私たちが愛してやまない生物たちは宇宙船をつくることはできないけれど、私たちはつくることができて彼らを地球の外へ連れて行けるんだ。それは非常に重要なことだよ」

地球だけでなく、火星など他の惑星にも住むようになった人類を、マスクは「Multiplanetary Species(多惑星種)」と呼ぶ。スペースXが使命として掲げるのは「人類を多惑星種にする」ことだ。現実離れした大言のようにも聞こえるが、マスクはそんな奇想天外なアイデアをぶち上げるだけでなく、実行に移してきた。それが認められ、スペースXは未上場ながら、会社の評価額が1000億ドル(約12兆円)にも及ぶまでに成長した。

スペースXはロケットを再利用することで打ち上げコストの価格破壊を起こした。新型ロケット、スターシップも再利用し打ち上げ費用は将来的に数百万ドルまで下げるという。だが、莫大(ばくだい)な費用がかかることにかわりなく、常に浴びせられるのが「そのお金を地球のために使うべきではないか」という批判だ。

マスクも「資源の99%以上は地球上の問題解決に向けられるべきだ」と認める。ただ、ロケット開発の意義について「問題を解決することだけが人生ではないはずだ。心を動かされ、朝起きた時の喜びや将来への期待感を抱かせるようなものでなければならない。多惑星種となり、宇宙旅行をするようになって『SF』を現実にするんだ」。さらに目を輝かせて言った。「この宇宙は何なのかを探る。他の生命がいるのか、とかね。私たちはどうやってここに来たのか。生きる意味とは何だろう。銀河系を探索すれば、これらの疑問を見つけられるのではないか。とてもエキサイティングだよね」

イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州ブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影
イーロン・マスク氏=2022年2月10日、米テキサス州ブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影

スペースXはロケットの打ち上げ実績では世界で最も実績を積んできた企業だ。昨年、宇宙船ドラゴンに民間人4人をのせ3日間、地球の周回旅行に連れていった。今年は他社にも打ち上げサービスを提供して商業化を加速させる。

だが、火星への計画は当初の想定通りには進んでいない。マスクが最初にこの巨大ロケットの詳しい話をしたのは2016年だった。その時は巨大ロケットで24年にも有人宇宙船を火星に向けて打ち上げると宣言した。さらに19年には半年以内にこのロケットで地球周回飛行をするとし、20年には有人宇宙飛行を実現することも可能だと言っていたが実現していない。マスク氏の言葉は壮大だが、計画は度々遅れ、資金調達のために誇張しているのではないかという冷ややかな目も向けられている。

スペースXのロケット開発記事「スターベース」=2022年2月10日、米テキサス州ブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影
スペースXのロケット開発記事「スターベース」=2022年2月10日、米テキサス州ブラウンズビル近郊、ランハム裕子撮影

今回、スペースXが披露したスペースシップは米連邦航空局(FAA)による環境評価が終わっておらず、打ち上げが遅れている。目玉となるロケットの再利用の試験で、これまでの試験機は何度も着陸に失敗して爆発炎上した。それでも「今回もまた素晴らしい飛行ができ、多くの良いデータがとれた」と、逆境をものともせずに開発を続けている。(敬称略)