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外国語の習得に「ネイティブ脳」はいらない。「日本語脳」を徹底的に鍛えよう

世界でビジネスをするための外国語習得術 更新日: 公開日:

■何を話したいか(アウトプット)が出発点。与えられた参考書を勉強する(インプット)という発想とは決別しよう

こんにちは。1回目では、外国語学習の目的のあぶりだしと、その目的のために、「何語」で「何を話すのか」を考えてほしいとお願いしました。

読者の皆様の目的は多種多様だと思いますが、bizbleがビジネスパーソン向けであることを踏まえ、ここでは、ビジネスでプレゼンをしたり、商談ができたりして、成果をあげられることを最終目的、目標にしていきましょう。

さて、これまで皆さんは、外国語を学習するというと、とりあえず何か参考書やテキストを買って、最初のページから読み進めてみたり、あるいはこれまで持っている市販の単語集や熟語集を見直したりすることから始めていませんでしたか。

結論から言うと、このやり方では、あなたの語学力が伸びることはないと思います。

なぜか。それは、それらのテキストや単語集には、あなたの「意思」がどこにもないからです。ビジネスでプレゼンしたり、商談を成功に導いたりするためには、あなた自身の頭、意思ですべて進めて、解決していなかなければならないのです。

にもかかわらず、英会話学校や先生から与えられたテキストや市販の参考書、テキストを最初から無造作に始めると、結局、あなたがビジネスでプレゼンしたり、商談で話したりすること、つまり「アウトプット」すべきことと、「インプット」に関連がなくなり、いくら「インプット」しても「アウトプット」の役に立たず、使えない語学に終わってしまうのです。

■学習の順番は、「アウトプット」→「インプット」→「アウトプット」

第1回でもお伝えしたように、私が、24歳からアラビア語を始めたにもかかわらず、最終的には首相通訳を務め、アラブ人と交渉できるまでになったのは、エジプトでの語学研修中に、学習の初期段階で、ひたすらプレゼンをさせられたからなんです。

ということは、何を「インプット」しようではなく、何を「アウトプット」しようかを最初に考えなければならない、まさに「アウトプット・ファースト」の環境に置かれたのです。

中学から英語を始め、高校受験、大学受験を経て、社会人になっても検定試験など試験漬けで来た方は外国語と言えば、とにかくインプットだったと思いますが、私の場合は、アラビア語を短期間でマスターせざるを得ない環境に置かれたからこそ、気づいた学習法だったと思います。まさに「逆転の発想」です。

これまでのように「インプット」→「アウトプット」ではなく、まず「アウトプット」(何を話したいか)を考え、それに見合う「インプット」をして、そしてそれをプレゼンのために直ちに「アウトプット」していくのです。

■「ネイティブ脳」がいらない理由

皆さん、何も習ったこともない言語で、「アウトプット」しようとしたら、どうしますか。分からない言語のテキストを見ても決してアウトプットできないですよね。

そう、その場合は、日本語を母語とする方であれば「日本語」でアウトプットすべき内容を考えて、文章にし、それを懸命に辞書などで調べて話すしかないのです。

この点、英語を話せるようになるには、英語で英語を考える、いわゆる「英語脳」「ネイティブ脳」がないとダメだというような本を多く見ます。

最近は、英語を英語で学ぶテキストもさらに増えてきたのではないのでしょうか。高校や大学の授業も英語でという傾向が加速化しているようです。

しかし、残念ながら、私はこの考え方では、英語をなんとなくやった感じにはなれても、決して「話せる」ようにはならないと思います。なぜか。答えは簡単です。話すためには、当たり前ですが、自分の「脳」から言葉を発する必要があるのですが、日本語を母語としていれば、普通は「日本語」で考えますよね。

もし、世界の共通語が日本語なら、話せない問題はそもそも生じない、それは日本語で考え、そのまま日本語で話せるからです。しかし、それが英語となった瞬間に、「英語」で考えなければならないと思ってしまうし、多くの英語専門家の方がそれを提唱してきたのです。英語を日本語に訳そうとするから、日本語を介そうとするから英語が話せないのだと。

たしかに、もともと「英語脳」が備わっている人、すなわち帰国子女であったり、長期間英語圏に滞在して、英語脳を身につけたりした人であれば、英語は英語で考えるという論理はあてはまるかもしれません。

しかし、私もそうでしたが、このグローバル化が進む時代でも、残念ながらほとんどの方が帰国子女ではないし、まだまだ長期で留学を経験できるような方は少ないと思います。

それにもかかわらず、一部の帰国子女の方や、すでに英語脳を身に着けた方が、さかんに「英語脳」をつくることを勧め、英語は英語で学ぼうとなってしまう。この風潮に私はなんとか歯止めをかけ、警鐘を鳴らしたいと考えています。

「英語脳」なんて必要ないのです。私は、24歳からアラビア語をはじめて、最終的にはアラビア語で通訳をし、アラブ人とアラビア語で交渉することもできるようになりました。

始めた時点で、「アラビア語脳」があるはずもない。あるのは「日本語脳」だけでした。でも、その「日本語脳」を最大限強化することで、ネイティブレベルまで到達することができるということをお伝えします。

■「日本語脳」を駆使して、「自己発信ノート」を作成しよう

そして、そのためにも重要なのは、(日本語で)「アウトプット・ファースト」の発想なのです。

最後に皆さんに、次回までに「自己発信ノート」の作成を「日本語」で書くこと(アウトプット)をお願いしたいと思います。

なぜ、「日本語」か、いきなり英語で書こうとすると、それだけでアウトプットの内容が著しく低下してしまうのが普通だからです。英語で書いてもレベルが低下しない方は、そもそも、もう私のコラムを読む必要がない方だと思います。

でも、私もそうだったように多くの方は、それができないから悩んでいるはずです。日本語で書くことに抵抗を覚える人もいるかもしれませんが、是非やってみてください。

意外に書けないと思いますよ。なぜなら、これまで外国人に何を話すかなんて考えたこともなく、ただ与えられた文章や単語を覚えること、より言えば、大学受験や検定試験の準備だけをしてきた方も多いと思うからです。

次回は、この自己発信ノートをどう外国語にして、内容をブラッシュアップしていくかについてお話ししたいと思います。

「ねこぺんぎん」さん、ご質問いただきありがとうございます。内向的な性格とおっしゃりながらのご質問には勇気がいったのではないでしょうか。二つ、助言させていただければと思います。

一つは、日本語では内向的な方でも、外国語になると、違う自分を見つけられたかのように、社交的な性格になる方もいます。その意味で、外国語の勉強は、自分を変える大きなチャンスでもあるのです。

もう一つは、その外国語を話すためにも、まずは、私が、今回のレッスンでお勧めした「自己発信ノート」を日本語で書くことから始めてもらえませんか。「人」と話すのは結果であって、その前提として何を話すのかが、何より大事なんです。アウトプットするって話すことだけではありません。

自分で書いてみること、そしてそれを一人で発声練習することも、重要なアウトプットになります。私も相手がいないときはよく家の風呂場でやってました。本当は一人カラオケでもいいのですが、ちょっとコロナ禍では難しいでしょうから。なので、まずは自分の話したい事、たとえば趣味のことからでも結構です。

いつか訪れる外国人(どこの国の人でしょうか)の方と話す場面を思い浮かべながら、日本語で筆を進めてみてください。それをどう外国語にしていくか、そのノウハウは、次のレッスンからお伝えしていきます。

(この記事は朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)