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知っているようで知らない「フェロモンって、何?」

World Now 更新日: 公開日:
モスクの屋根をイメージした香水ボトル

性フェロモンは哺乳類にもある。

人間の足にオスブタが出すフェロモンを塗ったら、どうなるか? 米デューク大学准教授の松波宏明は「交尾を求めるメスブタにつきまとわれるだろう」と話す。オスブタのフェロモンを感知したメスブタは、相手が人間であっても本能的に引き寄せられるのだ。

このように、同じ種の動物や昆虫に、特定の行動や生理的な反応を本能的に引き起こす化学物質をフェロモンという。性フェロモンのほかにも、さまざまなフェロモンが知られている。

アリのフェロモンの一種は敵と味方を見分けさせ、敵だけを攻撃させるはたらきがある。シカの群れでは、天敵の気配を察知した一頭がフェロモンを出すことで、鳴き声を立てることなく群れ全体に警報が伝わる。道しるべとなるフェロモンや集合を促すフェロモンもある。

昆虫は触角によって各種フェロモンを感知するが、哺乳類の多くは、鼻の中にある鋤鼻器(じょびき)という器官でフェロモンを捕らえる。香りやにおいとフェロモンは、いずれも鼻を使うせいか混同されがちだ。実際、動物のフェロモンの中には人間が嗅ぐとにおいのあるものもあって、ややこしい。

だが、「におい分子」は鋤鼻器とは別の嗅細胞で感知されるし、感知した情報を脳に伝える経路も、はたらく脳の領域もフェロモンとは異なる。フェロモンと「におい分子」は化学物質という点では共通しているものの、はたらきは大きく異なる。

■人間は嗅覚器でフェロモン感知?

フェロモン香水。フェロモン度チェック。恋愛フェロモン。インターネットで「フェロモン」を検索すると、さまざまなサイトが引っかかる。人間にもフェロモンがあるのか?

人間には機能する鋤鼻器がないことから、かつては「人間にはフェロモンがない」と考えられていた。ただ、最近の研究では、動物は鋤鼻器だけでなく嗅覚器官でもフェロモンを感知している可能性があるという。人間も嗅覚を含む何らかの器官で感知しているかもしれない。動物のフェロモンに詳しい東山動物園の上野吉一(元・京都大学霊長類研究所准教授)は「人間にもフェロモンがある」と話す。

たとえば、同じドミトリー(寮)で暮らす女性の生理周期がそろってくる「ドミトリー効果」という現象がある。1970年代初め、米国の研究者が科学誌に報告した。生理中の女性が何らかの化学物質を出し、周囲の女性がそれに反応して生理が遅れたり、早くなったりして、やがて周期が同調していくという。

候補とされる物質もいくつか報告されている。松波はいま、男性の尿やわきの下に多く分泌される物質の一つがフェロモンの一種ではないかと注目している。この物質を感知した人には、目には見えない生理的な変化が起きている可能性があるという。