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「癒やし」効果に注目、医療現場で広がるダンスセラピー

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ニューヨークのダンスセラピー =2013年5月、和気真也撮影

ダンスを医療現場で活用する動きがある。精神医学に近い分野で用いられるダンスセラピーは、「癒やし」効果に注目して闘病中のがん患者の不安を和らげたり、社会に適合する力を養ったりする目的で試みられている。米国では、病院のほかに介護施設や個人のスタジオでも施されている。

ニューヨークのメイモナイズ総合病院は、芸術療法を積極的に採用している。ダンスセラピーもその一つだ。トリシャ・カペロ(59)はここで30年、うつ病や統合失調症の患者にダンスセラピーを施してきた。

患者たちはCDから流れるポップスに合わせて体を揺らす。1時間のセッションが終わると、硬い表情だった患者たちも互いに笑顔を交わしていた。「踊りは一瞬。でも、笑顔を交わしたこの体験は、体のどこかに残るはず」とカペロは話す。

集団で踊るのに必要な他者への共感や理解、尊重といった要素が、セラピーの考え方のベースになると説明する。「言葉にできない内面を表現することや、良いイメージを抱くことが大事」とセラピストたちは主張する。

米国のダンスセラピーは、1942年にモダンダンサーのマリアン・チェイスがワシントンの病院の入院患者にダンスを教えたことが始まりだという。現在、米国ダンスセラピー協会には989人の公認セラピストがいて、約1万人の患者がダンスセラピーを受けている。協会長のシャロン・グッディル(57)は「まだまだ、広められる余地は大きい」と話す。

米国のセラピストたちは、踊りによる免疫力向上や、うつ状態を回避する脳内の神経伝達物質が増える可能性を挙げている。とはいえ、セラピーの有効性を裏付ける医科学的な根拠はまだ乏しい。実践例を積み重ねている状態だ。(文中敬称略)