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「残念な時間」を「特別な時間」に変えるヒント 苦しいコロナ禍、発想を変えてみよう

アグネスの子育てレシピ
家族が集まった、毎年恒例の「ベーキングコンテスト」。コロナ対策で3密を避けるため、公園で開催した

明けましておめでとうございます。

新しい年の幕が開いたのに、コロナウイルスの新しい株、オミクロン感染の脅威が、新春の楽しい雰囲気に影を落としました。
コロナ禍の到来で、教育現場が大きく変わりました。

「教育は今、大きな転機点に来ているように思います」
そう話すのは私のスタンフォード大学での恩師、マイラストバー元教授です。

先日、久しぶりにスタンフォード大学の近くにあるスターバックスでお会いして、お茶を飲みながら教育談義をしました。
私も先生の意見に賛成です。
コロナ禍で学校が閉鎖され、リモート授業が日常化しています。
子供の勉強のしかた、先生の教え方が変わるだけでなく、家庭のあり方、社会のあり方まで問われているように思います。
対面授業がないために、子供たちが人と接することで学ぶ多くのことが経験できなくなり、先生たちも子供の反応がわかりにくい状態で教えないといけません。
学校の行事をはじめ、お互いの家に行って遊んだり、遠足に出かけたり、運動会で競い合ったりといった、当たり前と思っていた思い出が作れていないのです。
親は子供が多くの時間を家の中で過ごすので、毎日のスケジュールが狂い、調整に苦労をしています。
みんな仕事と家庭の両立がさらに厳しくなっていることに悩み、働き方の変化が必要となってきました。

スタンフォード大学をはじめ、アメリカの多くの大学が年始の授業をリモートにする事を決め、オミクロン株の感染状況を見たうえで、対面授業の行方を決めると言います。
「学生たちと会えないのを残念がっている先生が多い」とマイラストバー先生は言います。

2016年、スタンフォード大学で

思い出せば、私の大学時代は授業に行くのが楽しいというより、友達と話したり、何かを食べたり、一緒にどこかに出かけたりするのが楽しみでした。
この2年間、そういう経験をしなかった学生が多くいるのです。
「親から見れば、子供がせっかくの大学生活を十分に過ごせないことが『残念』で仕方がないようです」と先生は言いました。

その「残念」と言う言葉が私の心に引っかかりました。
大人が「残念」と思うと、子供たちも「残念」と思うようになります。
大人が「別に残念ではない、今は特別なときです」「コントロールできないことをなげいても仕方がないので、コントロール出来ることをする」と考え方を切り替えれば、違うものが見えてくるのではないかと思いました。

実は昨年12月アメリカに行って、息子たちと楽しく2週間を過ごしていましたが、いきなりオミクロン株が広まり、生活に大きく影響が出ました。
長男のお嫁さんの会社では、社員全員で参加したイベント会場に感染者がいたため、全員が検査をすることになりました。
三男の会社では4人の感染者が出て、彼は陰性の結果が出るまで自主隔離をしました。
身近にオミクロン株が迫ってきている事を感じました。
「せっかくママが来ているのに、これでは予定を変更しないといけないね。残念です」とみんなのお祭り気分が180度変わりました。

その時、私は考えました。
2年ぶりに息子たちと会って、「残念」な休日で終わらせたくないと。
コロナ禍の中でもできることはあるのでは?
私が思考を変えれば、厳しい状況の中でも、楽しい時間、幸せな時間が過ごせるはずと思いました。

まずは「ベーキングコンテスト」をどうするのか。
我々がそれぞれパイを作って、友達と親戚を集めて、食べてもらい審査してもらいます。そこでベーキングチャンピオンを決めるのが我が家の恒例のイベントなのです。
みんな一生懸命考えて、練習してそのコンテストに臨む準備をしていました。
でもオミクロン株の感染が怖いので、「中止かな?」と最初はみんな考えました。
でも、楽しみにしていたのは私たちだけでなく、友達もみんな楽しみにしていたのです。
「中止したくない」と私は粘りました。
そうしたら、長男が「室内でやるのが無理なら、外でやりましょう」と3密を避けて、公園でやることを提案しました。

友達と親戚が、パイの審査に集まってくれた

決めてしまうと、みんなは張り切って、パイ作りを頑張りました。
その日は寒い中、友達と親戚がマスク姿で公園に集まってくれました。
参戦者は私、息子たち3人とお嫁さんで計5人。壮絶な戦いでしたよ。
アップルパイ、ヨーグルトチーズパイ、ブラックフォーレストパイ、アルノルドパマーパイ、ゆずパイとみんなの力作が揃えました。

コンテストの参加者は私(アグネス)、息子3人とお嫁さんの計5人

結局1週間もかけてパイを作ってきた次男が優勝しました。
集まった人たちはパイを食べ、たくさん話して、とっても楽しいイベントになりました。
「室内でやるより、公園の方が楽しいね。次回も外で集まりましょう」という意見が出ました。
集まった人に公園でのコンテストは大好評でした。
「ママが粘ってよかったですね」と息子たちに言われて、前向きな思考で開催してよかったと実感しました。

ベーキングコンテストで優勝した次男のパイ

しかしコロナ感染の状況はどんどん悪化して、「クリスマスディナーはどうする?」と次の悩みが起きました。
「集まると9人になるので、やっぱり危ないです」がみんなの意見でした。
そこでも、私がまた「集まりたい」と粘りました。
「何かいい方法ない?」と子供たちに聞きました。
「今度こそ、外は無理です。寒過ぎます」とみんなは言います。
諦めたくない私の願いを叶えてくれたのは頭のいいお嫁さん。
「みんなその日に検査をして、陰性になった人だけ来てもらいましょう」と提案したのでした。

しかし、検査キットを集めるのはかなり大変でした。品切れの店が多く、お嫁さんは車であちこちから検査キットを買ってきてくれました。
そして、参加する人の家まで、届けたのです。
クリスマスの日に、みんなが検査をしました。
幸い、みんな陰性でしたので、その夜は何日もかけて作ったクリスマスディナーをみんなで食べることができました。
「会えることって、本当に貴重ですね」とみんなは時間を惜しむように話していました。
「メリークリスマス!」の声が響く食卓、幸せな時間でした。

開催が危ぶまれたクリスマスディナーは全員が検査キットでコロナ陰性を確認してから参加した

人が多いところを避けるために、息子たちは国立公園や赤杉の森など、自然にあふれたところに私を連れ出してくれました。
洞窟を探検したり、キノコを探したり、大自然を満喫しました。
「今回ママが来て、パンダミックの中だけど、たくさんいい思い出ができましたね」と息子たちは言います。
私もそう思います。コロナ禍があるからこそ、体験することがある、気づくことがあると実感しました。

人を避け戸外に出かけて米国の大自然を満喫した

だから、いま子供たちが体験している学習状況を「残念」と思わず、親が前向きな気持ちで、よりいい思い出を作ってあげることが大事だと思います。
子供たちがこの時期を振り返るときに、
「コロナはあったけど、いい思い出もたくさん作れたね」
と言ってくれるように、大人たちは思考を改めることが必要です。

小学生と中学生がいる友達が「お姉ちゃんが体験した事を、妹が全く体験していないのですよ。そのギャップはどうすればいいのか?」と言うのです。
私は「ギャップなんて気にしない。2人の体験は比べない」とアドバイスをしました。
妹の置かれている現状は「残念」と決めつけないのが大事です。
「お姉ちゃんの時は良かった、君は残念」と思わせないことが大切と思います。

学校の行事ができないのなら、別の活動を家でやればいいのです。
我が家の運動会、我が家の学芸会、我が家の参観日などなど。
子供たちが笑ってしまうようなイベントがあってもいいと思います。
リモート授業の利点を見つけて、子供の能力をより伸ばしていけばいいのです。
自分で学べる習慣をつけさせ、一緒に図書館や、博物館に行って、生活の中で学習するチャンスを増やす事もできます。
家に子供が長くいる事は大変と思わず、1000年に一度のいい機会と捉えて、より親子の関係を良くするチャンスにすればいいと思います。
子供は適用能力を持っています、それを信じて、子供の意見を聞きながら、
この状況を「残念」から「特別」に変えていくのです。

「ベーキングコンテスト」の審査員としてコンテストに集まってくれた人たち。左端は三男

2人の大学生を抱えている別の親は「長男は卒業式もなく、長女は成人式がなかったですよ」と嘆きます。
確かに、親としては「残念」です。でもできない事はできないので、それについて残念がっても仕方がないのです。
むしろできることを考えるのがベストだと思います。
卒業式がなかったら、家族写真を撮るなど、卒業を記念する何かをすればいいと思います。
成人式がなくても、振袖を着せて、どこか出かける事もできます。

我が家も三男が大学院から卒業したときに、卒業式がなく、渡米することもできず、彼は一人で卒業しました。
彼が修士になった実感さえ、私たち家族は持てないのが現実でした。
でも、よく考えてみれば、卒業式はただの儀式で、それほど大事ではないと思いました。
むしろ、彼が好きな仕事についたのか?友達はいるのか?元気なのか?
が何よりも大事です。
三男が自主隔離している時、彼と電話で話すと「僕の隣に座っていた人が陽性なので、きっと僕も感染していると思う」と言うのです。
その時に、本当に焦りました。
何回も何回も検査を受けて、陰性でした。
その時、どんなに感謝したか。心の底から、感謝しました。

息子たちは国立公園などに私を連れ出してくれた、左は長男

パンダミックで改めて思ったのは、
大切なのは家族が健康でいる事、相手を大切に思う事です。
そのほかのことは小さなことです。
パンダミックを経験している私たちは、命の大切さ、愛することの尊さ、
一緒にいられることのありがたさを実感しないと、この体験は無駄になると思います。
素敵な思い出をこの時期に大切な人と一緒にたくさん作りましょう。
「コロナ禍で私たちはよりいい人間になったよね」と言えるように、
感染対策を万全にして、光が見えるまで、決して負けない気持ちで頑張りましょう。
その間にも笑顔で楽しい時間をたくさん作りましょう。
「残念」ではありません。これを意味ある「特別」な状況に変えていきましょう。(アグネス・チャン、写真はすべて本人提供)