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ヴィーガンへの固定観念、崩したい ソニンが大学生にアドバイス「少数派は個性」

LifeStyle

福田 ヴィーガンになったきっかけは?

ソニン 役作りのため減量したいと思っていた2009年、米国の歌手マドンナが穀物や野菜などを中心にとるマクロビオティックを実践していると知ったのが始まりでした。マクロビを実践した後、自然と肉が食べられなくなった。何を食べたらおなかが満たされるのかわからず、一時期炭水化物中心の食生活になりました。勉強しようと思い立ち、ベジタリアンのための栄養学の本を熟読しました。

福田 日本と海外でヴィーガンに対する認識の差を感じたことはありますか。

ソニン 12年に留学した米国・ニューヨークでは完全にヴィーガンが浸透していました。スーパーではヴィーガンチーズやバター、ソーセージを普通に売っていて。レストランでも「このメニューなら食べられるよ」と教えてくれる。様々な人種や文化があり、いろんな食べ方の志向があった。ヴィーガンでも誰にも白い目で見られない。天国でしたね。

日本では菜食について知らない人も多く、「ご飯は食べられるの?」と聞かれたり、がりがりにやせているんじゃないかと全身を見られたり。極端な思想を持った人、といったイメージをもたれることもあった。「肉をいつ食べるの」と聞かれたことも。我慢して肉を抜くダイエットと思われたのでしょうか。

■個性としてアピールする

福田 ヴィーガンと公表することに抵抗はありましたか?

ソニン タレントはちょっとしたイメージが仕事に影響することも考えられます。今の所属事務所に移籍した時、公表してもよいか確認しました。会社側はむしろ個性としてアピールすることを選択してくれた。21年に『ソニンの美・ヴィーガン』という本を出したのは、ヴィーガンに対する固定観念を崩したいという思いがあったから。そして、食に対する知識をもつことの大切さを伝えたいから。

東京オリンピックのおかげか、この2年ほどで様々な企業やレストランが菜食対応を始めましたよね。でも苦労している人もまだいます。よくないイメージもあると知っているから、生きづらい。今は少数派が生きづらいこと自体が「格好悪い」と見なされる時代です。たくさんの少数派とされる方々がいますが、今やそれは個性で、それを指さすなんて格好悪いことだという社会に私たちはいる。ヴィーガンはライフスタイルの選択肢の一つだと思います。

■完璧を目指さなくていい

福田 ヴィーガンになって体力や体調の変化を感じましたか。

ソニン 私はミュージカル俳優の中では、結構タフな方だと思います。ロングランの公演で毎回、同じパフォーマンスをするためにも栄養管理は大切です。玄米のおにぎりを冷蔵庫に作り置きし、公演本番の時は食べる楽しみよりも栄養重視でプロテインや炭水化物をとる。普段は納豆、湯葉、フムスなど大好きな大豆からたんぱく質をとっています。完璧にやろうとせず、ちょっとずつ自分に合うものを見つけてほしい。食事と向き合うって、やって損することはないですよ。

福田 自分らしく生きることに多くの若者が難しさを感じています。ぜひメッセージを。

ソニン たとえ世界に人類が3人しか残らなくても、性格も価値観もみんな違うんです。怖がらなくていい。「私、変わってるから」と開き直っちゃえばいい。世界は広い。とんでもない人がたくさんいるから。

そにん  2000年にEE JUMPとしてCDデビュー、02年「カレーライスの女」でソロアーティスト活動を開始。ミュージカル「オリバー!」は11月7日まで東京公演、12月に大阪公演がある。

■ソニンさんの話を聞いて考えたこと

インタビュアーを務めた福田みなみさん=恵原弘太郎撮影

正直に打ち明けると、最近までヴィーガンという主義に対して、過激なものという印象を持っていた。動物性食品の摂取を否定し、価値観を強要する人たちというイメージが離れず、自分の中に偏見も少なからずあったと思う。

だが今回eriさんとソニンさんにお話を聞いて、今まで持っていたイメージは払拭(ふっしょく)された。一口にヴィーガンと言っても、ダイエットがきっかけで始める人、環境問題に配慮してお肉を食べる機会を減らす人、時には肉や魚も食べるフレキシタリアンというスタイルを取る人など、自分の思考や生活に合わせて柔軟に取り入れている人がいると知った。自分の体や社会のことを真剣に考えた上で行き着いたライフスタイルであり、決してヴィーガンになることを一方的に強要しているわけではなかった。

(eriさんへのインタビューは11月12日に配信予定です)

お二人とも共通して言っていたのは、「完璧じゃなくていい」ということ。ヴィーガンになったら今まで食べていたものをいきなりゼロにしなければならないと思っていたため、この言葉にとても救われた。例えば、週に1度だけ動物性食品をとらない日を設けてみたり、牛乳の代わりに豆乳やアーモンドミルクを時々取り入れてみたり。一人一人の力は小さくても、みんなが少しずつ意識することが大きな一歩になるはずだ。

最近私は、プラントベース(植物性食材のみ使用)の料理も提供するイタリアンレストランでアルバイトを始めた。ある時、乳製品アレルギーのあるお客さんが、「アレルギーがあるからおいしいケーキに出合えたことがなかったけど、ここのケーキのおいしさに感動した」と言ってくれた。そのとき、ヴィーガンは主義や思想にとどまらず、食の多様性に寄り添うことのできる存在なのだと気づかされた。

ダイバーシティーがうたわれる今、多様な食のスタイルや価値観を認め合い、だれもが生きやすい社会になることを願う。(福田みなみ)