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政治家はもっと会話の訓練を フィンランドで注目、「分かる言葉」がルールの討論番組

ノルウェー通信
いつもよりも簡単な言葉で政治を説明することを求められたフィンランドのマリン首相 Photo: YLE

投票率は55.1%で、そのうち33.1%が事前投票を利用した。(フィンランド法務省 選挙公式HP

支持率上位は国民連合党(21.4%・2017年度の選挙よりも+0,7%)、社会民主党(17.7%、前回よりも-1.6%)、中央党(14.9%、-2.7%)。中道右派で野党の国民連合党がトップとなり、極右・ポピュリスト政党とされる「真のフィンランド人党」も議席数を伸ばした(14.5%、+5.6%)。首相率いる社会民主党や緑の党などの連立政権を組む与党らは支持率を落とし、マリン内閣には厳しい評価が下った。(フィンランド法務省 選挙公式HP

さて、開票日の約1週間前、フィンランドの公共テレビ局YLEはおもしろい取り組みを行っていた。より多くの市民が選挙の争点を理解できるようにと、「政治家が簡単な言葉で解説する番組」を放送したのだ。

「政治が難しいのは当たり前」を受け入れない国の姿勢。簡単に話す訓練をする必要があるのは政治家という考え方 Photo: YLE

マリン首相や防衛大臣など9政党の代表が参加して、雇用、住宅、教育などの問題について党の政策を「できる限り簡単な言葉で」話す。「話すスピード」も厳しく評価され、そのスピードが速すぎるか遅すぎるかがテレビ画面にメーターの形で表示され、生放送中に視聴者がチェックすることができた。これを政治家本人も見ることができるために、通常は味わうことのないストレスとなる。

この取り組みはノルウェーに住んでいる私から見ても興味深いものだった。

北欧では全体的に「わかりやすく説明する」ことを政治家に求める傾向が強い。難解な表現や複雑な書類申請は一部の人の社会参加を難しくし、民主的ではないからだ。それでもノルウェーの公共局はフィンランドほどのレベルで政治家に「簡単な言葉で話して」とは求めない。

現地でフィンランド語を学ぶ外国人やフィンランド語の教師で構成された「審査員」も登場Photo: YLE

フィンランドのこの番組の背景にあるのは、有権者が投票にあたって、どの候補や政党の政策と自分の考え方が一致しているかを知る「ボートマッチ」が北欧で広く普及していることもある。「ボートマッチ」はフィンランドの公用語であるスウェーデン語とフィンランド語だけでなく英語、ロシア語、サーミ語でも用意されている。フィンランドでは外国人でも住民登録から2年が経てば投票権を得られる。現地の言葉が苦手な人への配慮がより深いのは、フィンランド語が「世界で最も難しい言語のひとつ」とも言われているからだろうか。

「地方選挙だから移民の有権者のことを考えて」というわけではなく、「フィンランド人でも難しい言葉遣いでは政治はわかりにくいのだ」という姿勢が特徴 Photo: YLE

私もフィンランド語を勉強しており2年が経つが、通常のフィンランド語での党首討論はまだ理解が大変だ。しかし、今回の公共局の「簡単に話す」番組はほとんど理解できたので驚いた。それだけ、政治家が話し方を必死に変えていたのだろう。フィンランド語は書き言葉と話し言葉の違いが大きいが、この番組では書き言葉で話されていた。番組はYLE「Selkotentti 2021」で視聴可能できる。 

この珍しい番組制作の裏側をYLEの番組担当者であるペトリ・ケヨネンさんに聞いた。

「この番組は誰も作ったことがないパイオニアです。2019年の国政選挙では試験的に行いました。フィンランドの人口は550万人で、75万人が簡単なフィンランド語を必要としています。障害がある人や高齢者、移民などです。社会的な議論に(みんなが)参加するためには、この層のための政治番組も必要です」

「フィンランドの政党は番組の参加に興奮していました。誰もがこのような種類の議論は重要だと考えていたからです」

「冷静に話す状況、難しい言葉を使うことを許されない状況は、実は大変なんです。市民からの反応も好評でした。このような番組の必要性を感じたのでしょう」

製作側としては、コロナ禍の番組作りで、限られた時間でターゲットグループのためにどのトピックを選ぶかが課題だったそうだ。

2年後の国政選挙で同じ番組を作るかはまだ決まっていないが、「出演する政治家は、もっと会話の訓練をしたほうがいい」とケヨネンさんは考えている。

北欧は「政治のおしゃべり」がしやすいと私は日ごろから感じるのだが、このような意識や取り組みがその土台作りにつながっているのだろう。