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会えば「ごはん食べた?」があいさつ代わりの韓国、コロナ禍で食の景色は変わったか

ソウルのアジュンマ通り
「zoom飲み会」で集まった4姉妹とその家族=宋永美撮影

「オンニ(姉さん)! みんなで会えなくなってずいぶん経つけど、今晩、姉妹4人でオンライン飲み会してみようか?」。6月のある金曜の午後、私のふるさと、韓国中部の大田(テジョン)に住む妹から、SNSでメッセージが届いた。

4姉妹が全員一緒に集まったのは、いつのことだったろうか、思い出そうにも思い出せない。韓国には最大の年中行事に「秋夕」と「ソルラル(旧正月)」があり、家族が一堂に会するのが伝統だ。しかし、韓国政府による新型コロナウイルスの防疫指針のため5人以上の集まりが禁じられており、私は両親が住む実家を訪れることを控え、妹たちにも久しく会っていない。

「う~ん、オンラインで会うっていっても、スマホにアプリをダウンロードしないといけないし、難しそうだし。面倒くさいなあ」。私がこう言うなり、妹から反撃にあった。「オンニ~。お姉さんの娘は小学校の授業をzoomで受けているよね? それを使えばいいだけだよ」。そうだった。小学3年生の娘は、週2回、登校せずに自宅からzoomを使ってオンライン授業を受けている。

そんなこんなでソウルに住む私と、実家のある大田に住む妹2人、中部の天安(チョナン)に住む別の妹と一緒に、その夜、オンラインで久しぶりに再会しようと決めた。帰宅するなり夕食をとり、シャワーを浴びてラフな部屋着に着替えた。缶ビールと簡単なおつまみを準備して、パソコン画面の前に座った。

分割された画面それぞれに妹たちの顔が映し出される。これがいま流行中の「zoom飲み会」なのか。4姉妹はすぐに我を忘れるように、おしゃべりに夢中になった。後から知人に聞いた話では、zoom飲み会参加者たちはオンラインによる物理的な距離感を縮めようと、みんなで同じファッションをして参加する「ドレスコード付き」もあるらしい。

4姉妹の「zoom飲み会」で乾杯。画面右下が私の家族=宋永美撮影

4姉妹の話題は、当たり前と言うべきか、やはり食べ物のことに集中。教師をしている末の妹は「最近、『ロゼ・トッポッキ』にはまって宅配で注文したのだけど、配達してくれる飲食店や業者がとても多くて、迷いに迷った」と言う。ロゼ・トッポッキ? 

トッポッキは韓国餅を甘辛く煮た食べ物。だけど、ロゼって?……。そういえば最近、SNSでちょっと風変わりなトッポッキの写真がたくさんアップされていたことを思い出した。ネットで調べてみみると、コチュジャンのソースの代わりに、トマトソースとクリームソースを合わせたロゼソースを使ったトッポッキ。いま大流行しているようだ。

宅配で注文した「ロゼ・トッポッキ」=宋永美撮影

流行する仕組みは、だいたいこんなふうだ。芸能人やインフルエンサーが、ある食べ物を作って食べる姿やレシピをSNSでシェアする。それを見た人たちも作ってみてSNSにアップし、拡散していく。流行が始まると、飲食店や宅配業者がそこに目をつけてメニューに組み込む。いつの間にか大手の業者も参戦。さらには、自宅でも自分で簡単に作ることができるように材料やソースをそろえた「キット」まで登場する。

ここまでくれば、私たち消費者はスマホでクリックするだけで「今日はどの業者のどのロゼ・トッポッキを試してみようか?」というふうに楽しめるようになる。「ドレスコード付き」と同じように、zoom飲み会で参加者がみな同じ食べ物を注文して食べれば、話も盛り上がり、お互いに近さを感じることができる、というわけだ。

宅配で注文した食べ物の数々=宋永美撮影

考えてみれば、コロナ禍のまっただ中、友人や知人と話すとき、「何を作って食べた?」「どの宅配の食べ物がおいしかった?」などという日常の会話が増えた気がする。どうでもいいようなことにも思えるが、自宅にいることが長くなった昨今、「おいしい食事」「友人とのおしゃべり」が、以前は全く気がつかなかったけれど、とても大事なことだったのだなと感じる。

韓国では、食事どきに家族や友人、同僚らに会うと、「ご飯食べた?」と声をかける。本当に食べたのか知りたいという面もあるにはあるが、むしろ「こんにちは」「こんばんは」に近いあいさつの一つだ。今は少なくなったが、もし「食べていない」と答えると、「それは大変。今から一緒に食べよう」ということもあった。韓国社会ではそれだけ一緒にご飯を食べるということが大事なのだ。職場の同僚との会食も、お酒でストレスを発散し、互いの距離を縮めるためには「美徳」だとみなされてきた。

しかし、コロナ時代になって会食文化は急激に変わり始めている。もちろんMZ世代と呼ばれる20~30代の若者が社会人になり、古い会食文化は少しずつすたれてきてはいたが、新型コロナがこの流れに拍車をかけた。「お一人さま」の食事も少しずつ広がってきてはいたが、新型コロナによってさらに増えている。

4姉妹の「zoom飲み会」には私の娘も参加。もちろんお酒抜きで=宋永美撮影

新型コロナ前は「いつも一緒」というのがうざったくなり、「孤独」の価値が見直されていた時期ともいっていい。しかし、コロナ禍で何でもオンラインでやりとりする時代になると、今度は抱える孤独感が過剰になっているのではないか。さみしさを何とか解消するため始まったのが、孤独のなかに「つながり」を求めたzoom飲み会でもあるのだろう。

妹たちとのzoom飲み会は、次はいつにしようか。今度は同じ宅配料理を一緒に食べてみても盛り上がるかも。さっそくSNSで調べてみよう。