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脱炭素社会の実現に向けた 「水素エネルギー」の可能性

PR by 三菱商事 公開日:
竹内純子氏(左/国際環境経済研究所理事)、宇佐美啓子氏(三菱商事)

── 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が2016年に発効されてから、世界各国の気候変動対策の取り組みが加速しています。この現状をどのように捉えていますか。

竹内 私が気候変動の国連交渉の場に携わり始めてから十数年経ちますが、2015年12月にパリ協定が採択された時のことは、いまも昨日のことのように思い出されます。採択されたと同時に会場が歓声に包まれ、「ああ、世界は変わるんだな」と感じました。あの時から程度の差はあれ、先進国も途上国も皆が「低炭素・脱炭素」に向かう枠組みができたわけです。いま、その熱狂はより加速しているように見えますが、温室効果ガスの削減目標の数字を競うことに意味はありません。地に足のついたエネルギーの議論をすることが大事だとあらためて感じています。

── 昨年12月には政府が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表し、船舶、航空機、自動車など非常に多くの分野で「水素」の活用が言及されていました。

竹内 脱炭素社会の実現に向けて「電化・水素化」が今後のエネルギー戦略の柱になることは間違いありません。いま、日本の最終エネルギーの約4分の3は石油・石炭などの化石燃料を燃焼することで得ています。この部分の高効率化は当然重要ですが、例えばガソリン車は効率向上はできますが、車から出るCO2をゼロにすることはできません。つまり脱炭素化を実現するには化石燃料で動かしているものを電気や水素で動くものに変える「電化・水素化」が必要です。同時にその電気・水素を再生可能エネルギー(再エネ)などからつくる、電源の「低炭素化」を進めることも不可欠です。

宇佐美 ここ数年、世界が水素に期待する役割が大分変化したと感じます。私がドイツに赴任した5年前、水素は風力発電などの余剰電力を貯蔵する手段として議論されていました。それがいまや、各国が脱炭素化の重要な手段として水素を位置づけています。ただ、エネルギー構造は国によって違いますから、日本が欧州と同じ取り組みをすればいいというわけではないですよね。

竹内 仰るとおりで、天然資源の量も再エネのポテンシャルも各国で違いますし、ライフスタイルや経済構造も違います。技術開発における国際協調は重要ですが、エネルギー政策は各国それぞれです。環境への配慮のみならず、安定供給と経済性が保たれていること、そして人口減少や過疎化が進む日本社会の現状を踏まえた政策であることが大切です。

宇佐美 日本が世界に先駆けて2017年に水素基本戦略を打ち出したことはポイントですね。日本企業が培ってきた水素関連技術が今後、国内外の水素社会実現に貢献していくものと思います。

── 発電や燃焼時にCO2を排出しない水素は、エネルギー源としてほかにどのような点が優れているのでしょうか。

竹内 多様な資源から製造できること、そして長時間貯蔵できることが、水素の大きなメリットです。現状、石油や天然ガスなどの化石燃料由来の水素が主体ですが、今後は海外での安価な太陽光発電の電力で水を電気分解し、製造時にCO2を出さない「グリーン水素」をつくることもできます。

宇佐美 産業原料としてだけでなく、発電燃料として、また燃料電池を通じて電気や熱、動力を提供できるなど、用途が幅広いのも水素の特徴です。企業から家庭まで多くのお客様と接点を持ってビジネスを行っている三菱商事が、水素を通して果たせる役割は非常に大きいと信じ、様々な挑戦をしています。

「次回は、水素バリューチェーン構築の取り組みについて語り合います」(7月3日公開予定)

 

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