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車の芳香剤さえ取り締まりの口実に アメリカの「レイシャル・プロファイリング」

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米バージニア州で2020年12月、警察から暴力的な交通取り締まりを受け、車を降りるカロン・ナザリオ米陸軍少尉。警察のボディーカメラの画像から(ロイター)

ありふれた車の芳香剤が、重大な交通違反になるとは
How a Common Air Freshener Can Result in a High-Stakes Traffic Stop
4月17日付 ニューヨーク・タイムズ紙

少し前に、全米である動画が話題になった。米軍少尉の黒人で、ラテンアメリカ系でもあるカロン・ナザリオ氏が、交通違反の取り締まりを受けた際に録画したものだ。

ナザリオ氏が買ったばかりの自動車を運転していた時、車両後部のナンバープレートがまだ届いていなかったので、後部座席のリアガラスに臨時のプレートを付けていた。しかし、ナンバープレートが付いてないという理由で、警察に車を止められた(窓につけていた臨時のものに気づかなかったようだ)。その後起きたことが録画で見られる。軍隊の迷彩柄の制服を着たナザリオ氏は両手を上げさせられ、警察に自動車の外に出るよう大声で命令されている。何のために止められたのかを質問しても、警察は答えなかった。

その後、警察はナザリオ氏にpepper-spray(唐辛子スプレーを浴びせて)、殴り、さらに手錠を掛けた。その間、警察はナザリオ氏が処刑されるかも知れないという意味のスラング(俗語)を使ったり、今回の扱いについて報告すれば軍隊でのキャリアを続けられないようにしてやると脅迫したりしていた。ナザリオ氏が「僕はserving this country(祖国に奉仕している)のに、なぜこんな扱いを受けなければいけないのか?」と質問する声も聞こえる。

ナザリオ氏がracial profiling(警察が犯罪捜査で容疑者を絞り込む際に人種的な要素を加味すること)の結果 excessive force(過剰な暴力)があったとして警察に対する訴訟を起こした際、この録画が公開され、SNSで話題になった。ナザリオ氏の弁護士は警察の行動をegregious(言語道断)と訴えたが、動画を見た人の多くも同じように感じただろう。

この事件は黒人など有色人種が車を運転中に経験することを、劇的な形で可視化させた。怒鳴りつけられていたナザリオ氏が自動車の外に出るのが怖いと言ったのに対して、警察の答えは、「Yeah, you should be!(そりゃあ、怖くて当然だ!)」だった。

確かに、アメリカの多くの黒人は運転中に警察に車を止められることに恐怖を感じている。近年、黒人が警察によって殺される事件がアメリカで相次いで起き、多くの場合、殺された黒人と警察との接触の原点は、traffic stop(車両停止)であった。2016年、フィランド・キャスティル氏はテールライトが切れているという理由で車を停止させられた後、警察に射殺された。2015年、サンドラ・ブランド氏は車線変更した際にウィンカーを出さなかったことを理由に停車させられ、逮捕され、数日後に監房で自殺した。今年4月、ナンバープレートにある登録ステッカーが失効していたという理由でダンテ・ライト氏は車を停止させられた。芳香剤がバックミラーにぶら下げていたことも問題視されたそうだ。警官は彼に対して「テイザー銃を使おうとした」が、実弾で彼を射殺した。

これらはマスコミに報じられて広く知られるようになった事件だが、これまでも黒人にとって、警察に車を停止させられるのは怖いということは、広く認識されている。ワシントン・ポスト紙の調べによると、2015年に起きた警察による射殺事件のうち約11%は交通違反の取り締まり中に起きており、そのdisproportionate share(偏った割合)を占めていたのが黒人だった。

車両停止における人種差別は長年、研究者と公民権運動家が着目してきたテーマでもある。スタンフォード大学の研究者が全米で行われた1億件以上の車両停止を分析すると、persistent(根強く存在する)人種による差異を見つけた。黒人の運転手は停車させられる可能性が高く、そして黒人の運転手とヒスパニック系の運転手は捜索を受ける可能性が高いそうだ。なお、白人の運転手と比べると、黒人とヒスパニック系の運転手に対しては、捜索の判断をするのに必要とされる容疑はずっと少なかった。

こうした事実の結果としてdriving while blackという表現が生まれた。Driving while intoxicated(飲酒運転)という決まり文句をもじったもので、黒人というだけで交通違反取り締まりの対象とされてしまうという現実を表現している。しかし、皮肉なことに、今月発表された研究報告書によると、黒人などマイノリティーの運転手はむしろ安全運転をしている。

公民権運動家は、窓グラスに色つきのフィルムが張ってある▽芳香剤をバックミラーにぶら下げている▽登録期限が切れている▽テールライトが破損している、といった軽微な違反は、有色人種をselectively target(選択的に標的とする)車両停止のよくあるpretexts(口実)になっていると指摘する。

複数のjurisdictions(管轄区域)が検討している対策は、警察が車両停止できる違反の範囲を狭めること。例えば、フィラデルフィア市では、市民の安全にimminent(差し迫った)危険をもたらさない車両停止を禁止するという案が出されている。

もう一歩踏み込んだ大胆なアイデアは、交通違反の取り締まり行為を武装した警察から切り離し、その仕事だけに集中する武装していない団体にやらせるというものだ。危険な状況のときにだけ警察は呼ばれる。そうすれば、皆が交通法規を守ることを保証しながら、有色人種コミュニティーへの害は縮小できる。カリフォルニア州バークリー市が現在こんなやり方を検討している。

現在の状況が続くことはuntenable(擁護できない)。一日も早く変革してもらいたい。


ありふれた車の芳香剤が、重大な交通違反になるとは
How a Common Air Freshener Can Result in a High-Stakes Traffic Stop
4月17日付 ニューヨーク・タイムズ紙

警察は車両停止をやめてほしい
Get police out of the business of traffic stops
4月17日付 ワシントン・ポスト紙

交通取り締まりで銃を突きつけられた黒人の軍人は車から降りるのを怖がった 警官は言った「怖くて当然だ」
A Black Army officer held at gunpoint during traffic stop was afraid to get out of his car. ‘You should be,’ police said.
4月11日付 ワシントン・ポスト紙