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いちから分かる「eスポーツとは」 成長は右肩上がり、「億」稼ぐ選手も

World Now 更新日: 公開日:
日本野球機構(NPB)は、プロ野球12球団それぞれを代表するチームが、任天堂の人気アクションシューティングゲーム「スプラトゥーン2」で競い合うeスポーツ大会も主催している。コロナ前の2019年の大会には多くの人が会場に集まった ©Nippon Professional Baseball/©2017 Nintendo

米調査会社グランドビューリサーチによると、eスポーツ関連の世界市場規模は2019年時点で11億ドル(約1200億円)。27年には68億2000万ドル(7400億円)になるとされ、右肩上がりの成長が見込まれる。

独調査会社スタティスタがまとめた統計をみると、世界のゲーム人口(20年)は27億人となっている。ただ、これはeスポーツ人口とはイコールになっていない。そこに「ゲーム」と「eスポーツ」の概念的な違いがある。

従来型ゲームは、ゲーム機とテレビを接続して個人で楽しむスタイルだったが、eスポーツはオンラインでつながった人たちと競い合い、その様子を会場やオンラインで多くの人が視聴するのが特徴だ。インターネットが普及し、情報通信技術が向上したことで、世界中でプレーヤーが急増した。

新しい概念だけに、eスポーツの競技人口が、現時点でどれだけいるのかは明確に分からない。ただ、17年のスタティスタの統計によると、世界で最もプレーヤー登録者数が多いオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」などの人気9ゲームの大会出場者だけで2億1000万人いた。累計賞金ランキングの1位はデンマークの選手「N0tail」(27)の約700万ドル(約7億6000万円)。女性の1位はカナダの「スカーレット」(27)で、39万3500ドル(約4200万円)となっている。

ビジネスとしてのeスポーツで重要視されるのは、収益の多くを占めるスポンサー料や広告費が見込める大規模大会の開催と、チケットや関連グッズの販売収入に直結する観戦者数だ。大会は通常、ネットインフラなどの違いで勝敗が左右されないように、競技場に選手を集め、オフラインで対戦する。コロナ禍で会場での観戦が難しくなり、ネット中継での視聴者の獲得がより重要となった。

スタティスタによると、この視聴者が20年に世界で4億3600万人おり、24年には5億7700万人になるという。オンラインで見て楽しめるのがeスポーツの魅力だとして、視聴者数=eスポーツ人口として統計に計上する調査会社もある。

こうしたビジネスモデルを生み出したのは韓国だ。韓国eスポーツ協会(KeSPA)によると、1997年のアジア金融危機で、娯楽を求めた人たちが、当時国内で急増していた「PCバン」と呼ばれるゲームカフェに殺到。無料でダウンロードできる対戦型のオンラインゲームが流行し、競争が生まれ、強いゲーマーが続々と育った。政府や企業が支援して大規模大会が開かれ、プロリーグも誕生。専用のテレビ局や競技場まで生まれた。

「オンラインゲームの浸透は欧米や中国が先だったかもしれないが、eスポーツという概念やエコシステムをつくったのは韓国が最初」と、KeSPA対外協力チーム長のチョン・チャラン(32)は胸を張る。

一方、特定のゲーム機や専用ゲームの購入が必要な家庭用ゲーム文化が根強い日本は、こうした新しい波に乗り遅れた。世界的な流行を受け、ようやく広がり始めたのは18年ごろ。若い世代を中心にオンラインゲームが浸透し、大会開催も増えた。家庭用ゲーム機でもオンラインゲームができるようになった。18年に48億円だった市場規模は、20年に67億円に伸びた。24年には184億円を超えるとされる。

そもそも、eスポーツはスポーツなのか。これはeスポーツに携わる人たちが頻繁にぶつかる質問でもある。eスポーツを概念化した韓国ならば、その答えを知っているだろうと思い、KeSPAのチョン対外協力チーム長に聞いてみた。

eスポーツという言葉からは、野球やサッカーなどのスポーツをイメージするが、ゲームの種類はさまざまだ。球技などのスポーツのほかにも戦闘、格闘技、パズルなどがある。こうしたゲームを使って「個人対個人」「チーム対チーム」で対戦し、それを会場やオンラインで見ている人たちが得られる興奮や感動は、「実際のスポーツによく似ている」。

また、スポーツという言葉の語源はラテン語のdeportare(デポルターレ)に由来する。「運搬する」などの意味だが、これが変化して「気晴らし」や「遊び」「楽しみ」などの意味を含むようになった。楽しむという遊戯性と、共通のルールに基づいて対戦する競技性を兼ね備えたオンラインゲーム対戦は、やはりスポーツに似ているということで、eスポーツという名称にたどり着いたのだという。

「サッカーや野球などのスポーツはボールを使って競技するが、eスポーツはゲームを使って競技する。プロ選手たちが高い技術で競い合い、それを見る多くの人たちが魅せられる。これは、もうスポーツと一緒です」とチョン対外協力チーム長。ただ、種類によっては、eスポーツとしては認められないゲームもあると主張した。暴力性や残虐性が過度に強調されたゲームだ。

こうした考え方は、国際的なスポーツ団体のなかでも共有され始めている。eスポーツを五輪の追加種目に採用するかを話し合っている国際オリンピック委員会(IOC)では、暴力的なゲームなどは五輪精神に反するとして、対象から除外する方向だ。

「eスポーツ=スポーツ」であるとの認識は少しずつ広がっており、eスポーツ専業で稼ぐプロ選手によるリーグ戦や国際大会も頻繁に開かれている。海外では、とくに欧米や中国、韓国が先進国で、数億円規模の賞金が掲げられる大会に、数万人規模の観客が訪れることも珍しくない。また、国によっては海外のプロゲーマーが入国するときに、実際のスポーツ選手と同じようにアスリートビザを発行するケースも出てきた。