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雑談に飢える人たちへ 画像加工アプリ「FaceApp」遊びだけじゃない効果

World Now
鈴木暁子記者の顔をFaceAppでひげ面にしてみた

コロナ禍をきっかけに、世界的に注目を集めている「変顔」アプリがある。ロシア発の「FaceApp」。ベースになる顔写真に年を取らせたり、若返らせたり、ひげを濃くしたり、誰かの顔と混ぜたりして遊べる。2016年から世界で5億回ダウンロードされたといい、日本でも昨夏ごろから話題になった。

SNSマーケティング会社コムニコの成田航介さん(24)は、「会社や学校の友人と対面して雑談ができない中で、ねえこれ見てよ!と自分の顔をネタに遊び、会話のきっかけを作るツールとしてうけたようだ」と話す。つまり、雑談を生む効果で引っ張りだこになったのだ。

FaceAppのダウンロードサイト

SNSの普及で、ネットに公開する写真の顔を加工することはすっかり日常になった。そもそも「顔をいじる」トレンドの先駆けは、「プリクラ」で知られる1995年誕生のプリントシール機だと成田さんは指摘する。ガラケーから高機能のスマホが普及するようになり、いまや顔写真は手元で簡単に加工できる。若者らに人気の韓国発のアプリ「B612」や「SNOW」は、美白やメイク、体形補正まで自在にできる。

雑談に飢える人々のコミュニケーションを促す道具として、この先に来るのは拡張現実(AR)機能を足したアプリだと成田さんは予測する。歩きながらモンスターを集めるゲーム「ポケモンGO」のように、実際にないものをスマホ上に表示する機能だ。

190カ国で40万人以上が利用するインスタグラム用アプリ「SPARK―AR」は様々な企業もPRに活用する。例えばニュージーランドの「ゼスプリインターナショナル」は、顔の上でキウイのキャラクターがゆらゆら動くARを提供。めがね販売のZoffやクリスチャンディオールのARでは、めがねやヘアバンドを「仮想試着」できる。ユーザーは写真を友人らとシェアして楽しむことができ、企業にとってはコストも割安で集客性の高い、若者向けの魅力的な広告媒体になっている。ステイホームが続く中、今後はインスタグラムなどでライブ動画を見ながら、ワンクリックで買い物ができるライブコマースも進むと成田さんはみている。

ネット空間では、「顔」は遊ぶものと同時に、不要なものとして消される対象にもなってきた。ファッションコーディネートを紹介するアカウントでは、服や小物を印象づけるためわざとモデルの顔を隠す人も多い。最近はCGのキャラクターが画面上で話すVチューバー(バーチャルユーチューバー)も活躍し、顔はますます見えなくなっている。

コムニコの成田航介さん(右)とオンライン参加の後藤真理恵さん=鈴木暁子撮影

LINEとフェイスブックは昨年アバター機能の提供を始め、写真を公開する代わりに、イラストを自分の分身として使えるようになった。コムニコのSNSマーケティングラボ、シニアアナリストの後藤真理恵さん(48)は、「セカンドライフやアバターの世界がやってくると言われてはいたが、いよいよ世の中の動きが変わってきたと感じる。以前は私も人の顔写真を消すことに抵抗感があったが、今は逆に肖像権の侵害という問題もあり、(SNSなどにアップする写真に)映り込んだ顔は消すべしと言われている。生体認証技術が進み、瞳の写真も拡大されると危険だと言われるようになってきた」と話す。

顔とこれからのコミュニケーションのあり方について成田さんは、「ZOOMのオンラインミーティングやSNSで見る顔も加工されていて、他人の素顔を見る機会が減っていると感じる。自分を印象づけるには言葉遣い、話すスピード、声のトーン、服装など、顔以外の影響力が大きくなっていくのかもしれません」と見ている。