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「子どもとの約束は絶対に守る」アグネス・チャン、親子のルール

アグネスの子育てレシピ 更新日: 公開日:
アグネス・チャンさんと母。2018年、94歳の誕生日に撮影(写真はアグネス・チャンさん提供)

親子の縁は何よりも深いものだと思います。

そして、子供を産むのは遺伝子を未来に残してゆく生き物の自衛行為です。

たとえ自分が世の中から消えても、人類が積み上げてきた知恵と進化の成果が次世代に引き継がれていくのです。

最近は少子化が進んでいますが、子供をさずかることで、1足す1が2ではなく、3にも、4にも、5にもなるのです。

最近、2人の後輩が妊娠しました。

望んで妊娠した後輩と、想定外で子供ができた後輩です。

新米ママ2人から「いい親子関係はどう言う風に築けばいいのかしら?」と聞かれました。

私は、「産んだらすぐに親になるのではなく、子育てをしながら、本当の親になるのよ」と答えました。

「それはどういうこと」と2人は興味津々で話を聞いてくれました。

■いい親子関係の始まりは

いい親子関係は、命がお腹に宿った時から始まると私は考えています。

妊娠したときに喜びと期待を感じ、愛しさが湧き上がったのなら、いい親子関係の最初の一歩を踏み出しているのです。

でも妊娠した事を知って、後悔の気持ちしかないのなら、いい親子関係を築くために、まず考え方を変える事が大事です。

親子関係は「愛を育む」ことから始まります。

愛には一目惚れの愛もあれば、時間をかけて育てる愛もあります。

子供がお腹の中にいる時から、子供に対する愛情を想像し、育むようにしましょう。

健康な赤ちゃんが産むために、お母さんは出来るだけ健康な生活をし、ストレスのない妊娠期を過ごしましょう。前向きな思考によって、不安を和らげましょう。

いざ子供が産まれたら、毎日、新しい経験をします。子供の成長を見ながら生き甲斐を感じることができます。

感動する瞬間が増えます。責任感が増えることによって、人間として自分が成長します。

人生が有意義なものになります。子供がいると、笑いと涙の豊かな人生になります。

生まれたての赤ちゃんは自分の世話が出来ません。

世話をしてくれる人に頼ります。

そこで優しく、愛情いっぱいで世話してくれる人に愛情を感じ、その人が初恋の人になります。

多くの場合は、その愛情の対象は親です。

自分の子供の最初に愛する人になれるのかどうかは、生まれたての子供に、どのくらい心を込めて愛情を注げるかにかかっています。相思相愛の親子関係はその時から始まるのです。

泣いたら抱いてもらえる、お腹空いたら乳を飲ましてくれる、眠かったら寝かしてくれる。

安心して身を任せられる人によって、赤ちゃんはよく笑い、よく食べ、よく眠ります。

眠るサイクルが短い赤ちゃんの世話をするために、親は自分の睡眠時間をくずさないといけない。

思い通りに寝起きしない赤ちゃんは親の生活リズムを乱します。

疲れるし、ストレスを感じる親もいます。

でも、この時期を赤ちゃん最優先で過ごす事で、いい親子関係の基盤ができるのです。

強い基盤ができると、後にトラブルがあっても、揺るぎのない繋がりに戻る事ができるのです。

アグネス・チャンさんの母、90歳の誕生日を祝うパーティー

■「赤ちゃんを離さずに」母の教え

私が長男を産んだとき、実家でしばらく生活しました。

そのとき母から「赤ちゃんを身体から離さずに面倒を見なさい」と言われました。赤ちゃんが起きている時には絶対に手から離さないようにしたのです。

私が抱いているのか、母か身内の誰かが抱いてました。

夜は母と私が寝ているわきに、赤ちゃん用のベッドを用意して寝かせました。でも、赤ちゃんがちょっとでもぐずると、母はすぐに起き上がりました。赤ちゃんを抱っこして、子守唄を歌いながら部屋中を歩き回るのです。

赤ちゃんのお腹がすくと、すぐに私に渡して、「オッパイを飲ませなさい」と急かすのです。

ほぼ毎晩、赤ちゃんは私か、母の腕で寝ました。

昼間に赤ちゃんが昼寝をしている時ときに、私が「ご飯にしましょう」と言うと、母は「赤ちゃんが起きるのを待ちましょう。ご飯は団欒の時間」と言うのです。

赤ちゃんが起きると、母は片手で赤ちゃんを抱いて、話をかけながら、ご飯を食べるのです。

6人兄弟の私は、母のその姿に感動しました。

「私もこのように愛されて育てられたのかな」と改めて思いました。

アグネス・チャンさんの母。90歳の誕生日を祝うパーティーで

母の教え通り、私は3人の子供を抱っこかおんぶかして、身体から離さずに育てました。

絶えずに話をかけて、歌もいっぱい歌ってあげました。

いつも私の声、体温、心臓の鼓動を感じながら、息子たちは赤ちゃん時代を過ごしました。

私は赤ちゃんの体温、匂い、泣き声を身近に受け止めながら、母親として成長しました。

そのお陰で、子育てで一番体力が必要な時期でしたが、楽しく過ごす事が出来ました。

息子たちも私の愛情を無意識の時期から実感できたと思います。

赤ちゃんの時期が過ぎると、子供といい関係を作るためにはコミュニケーションが重要です。

「今日はどうだった?」と親はよく子供に聞きます。

子供は「いつもと一緒」「別に」と答えたりします。

そこで、親は途方にくれて、「話をしてくれない」と考え込んでしまいます。

でも、よく考えてみれば分かるのですが、コミュニケーションはツーウェー、往復が必要です。

ですから、子供の1日を知りたい時は、まず自分の1日を話すことが大切です。

「ママはね、今日テレビ番組で問題に上手く答えられなかったの」と息子たちに話します。

「どんな問題?」と話が始まるのです。

ひと段落したら、「君の1日はどうだった?」と聞くと息子たちも学校と友達の話をしてくれます。

私は自分の友達を息子たちに紹介しました。

そうすると、息子たちも友達を紹介してくれます。

どんな時でも、「コミュニケーションはツーウェー」を忘れずに子供と話をしましょう。

今息子たちは成人しましたが、自分たちの仕事のこと、悩みを話してくれます。

私も自分の考えている事を話します。

このお互いに話し合う関係は親子の絆を深くしてくれています。

■子どもが親を信じられるために

2019年の年末は、カリフォルニアを訪れ3人の息子たちと旅行した

いい親子関係を築くためには、子供と約束したことを必ず守る事です。

「来週は釣りに行こう」と約束したのに、その日が二日酔いで「次の週にしましょう」なんて、絶対に言ってはいけません。

子供はその1週間、ずっと楽しみにしていたかもしれません。

簡単にやめてしまうと、子供は親の言葉を信じなくなります。

子供が親を信じられるということは、精神の安定につながります。

親は自分を裏切ることのない存在、親は自分に嘘つかない、親にはなんでも話せるという信頼。

そのように親を信じることで、子供は安心して人を愛したり、人を信じたりします。

一番身近の大人を信じられないと、子供は人を信じる事に戸惑います。約束されても疑う、不安な精神状態になります。

「親が約束守らないのなら、私も」「親だって嘘とつくなら、私も」と子供が思ってしまうのです。

いい親子関係は信頼関係が基本です。

だから、絶対に約束を守りましょう。

どうしても守れないときは、時間をかけて説明して、しっかり謝りましょう。

親子喧嘩は次の日に持ち越さないことも大事です。

どんな仲の良い親子でも、時々は意見の違いがあって喧嘩をします。

そのときは、その日のうちに仲直りするようにしましょう。

これは家族で決まりにしてしまった方がいいです。

次男が思春期で、口数が少なくなったときがありました。

ある日、タクシーを乗っている時に、私が思い切ってそのことについて聞きました。でも次男は、「話すことがないだけ!」と答えて、心を開いてくれませんでした。

私はどうすれば良いのか分からなくなって、思わず出た言葉は「どうすれば、ママがあなたをすごく愛しているということを理解してくれる」というものでした。

運転手さんもいたのに、つい言ってしまいました。

次男は顔を赤くして、黙ったままでした。

でも、家についたら、玄関のところで、
「ママの愛情はわかっているよ。心配しないで」と言ってくれました。

次男と心が通じ合った瞬間でした。

あれから、何かあっても、「わかっているよ」が彼との仲直りの言葉になりました。あのとき言いたいことを言ったのが良かったと今も思います。

愛情は親から子供に与える物と思いがちですが、実は子供が、親に愛情を表現できるチャンスを持つことは、お互いの関係をよくするために、とても大事なのです。

例えば、悩みがある時には子供に助けを求めてみます。

そして、助けてくれた時には大いに感謝するのです。

■ある日の転倒事故

三男が赤ちゃんの時の出来事でした。

パパが仕事の付き合いで飲みに行った晩に、私は赤ちゃんと一緒にお風呂に入りました。

お風呂から上がる時に、赤ちゃんを抱いたままで滑ってしまいました。

前屈みで転びました。

赤ちゃんに怪我がないように、私は肘と膝を床につけ、激痛が走り、叫びました。

手と足に怪我をしてしまい、血だらけになってしまいました。

長男と次男が叫び声を聞いて、走ってきました。

怪我したママと泣いている赤ちゃんを見て、びっくりしました。

起き上がらないママを見て、10歳の長男はすぐに赤ちゃんを抱き上げました。

7歳の次男は私を支えて、ベッドまで連れてくれました。

包帯を持ってきて、なんとか手当てをしてくれました。

「パパが早く帰ってこないかな」とつぶやきながらも私と赤ちゃんを守ろうと必死でした。

「大丈夫だからね」「血はもうすぐ止まるからね」と私の背中をトントンしながら慰めてくれるのです。

痛かったけど、子供たちの優しさに本当に感動しました。

いつの間にか、3人の息子は私の隣で、疲れ切って寝てしまいました。

次の日に、パパと私は子供達をいっぱい、いっぱい褒めました。

「ママの面倒を見てくれて、ありがとう」とパパ。

「みんなの愛情で、ママはすぐによくなったよ」と私は息子たちを目一杯抱きしめました。

守り合う事を子供に実感させる事で、子供はたくましく育ちます。

今でも私と息子たちは、1時間以上電話で話す関係です。

そして、話が終わると、合言葉は「I Love you」です。

この関係をいつまでも保っていきたいと思っています。