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インターンで出合ったシンガポール 「今しかない」日本の内定を蹴って向かった

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
畠山ひかるさん=John Ong撮影

■私のON

こちらでは、どの会社が売るかより、誰が売るかが重視されると感じます。だから自分を信頼してもらうことが大事。食材についての勉強は欠かせませんし、いろんなレストランに足を運び、メニューを見て、どんなものなら使ってもらえるかを常に考えています。人脈を大切にする社会なので、ひとつの取引先の信頼を得ることが、次につながります。

オフィスで仲間と写真。一番左が畠山さん

大学3年になる前の春休みに、シンガポールで2週間ほどのインターンを経験しました。シンガポールにはいろんな国の人がいて、異文化が交じり合っている。ここで働いてみたいと思いました。

でも、いきなり海外就職は厳しい。だから就職活動は日本でして、数社から内定もいただきました。

ところが卒業論文を書き終えた後、卒業前の1月になって、悩みました。日本で仕事を経験してからだと、海外に出るまでに5年はかかってしまう。自分の性格からすると、5年もたてば挑戦する気をなくしてしまう、と思ったんです。

海外就職について下調べをしてみると、まったく無理とは言えない。だったら挑戦してみる価値はある。家族や友人、みんなに反対されましたが、人材会社を通じて、新卒も受け入れてくれそうな10社近くに面接のアポを入れ、現地に向かいました。

ところが、全滅です。フィードバックも「英語力が乏しい」とか「採用するメリットがない」とか、散々です。泊まっていたゲストハウスのシャワーを全開にして、大泣きしました。

採用面接に落ち続けたシンガポールでの就職活動中には、マーライオンを訪れて就職できるように祈った。初心を思い出させてくれる場所だ

いま思えば、まだまだ学生のノリで甘かった。あの英語でよく面接を受けたな、とも思います。でも、大きいことを言って日本を出てきたので、そのままでは帰れません。滞在予定は残り2週間。必死です。それまで出会った人に、メールなどで連絡を取って、とにかく紹介を頼みました。そのうちの一人から「日本人を探している会社があるよ」と連絡をもらって、たどり着いたのがいまの会社です。

入ってからも大変でした。初日、緊張しつつ会社に行くと、何も指示がないのです。新卒でも実力勝負。研修もありません。同じ営業チームのメンバーに同行して取引先に行くこともあったのですが、行っても世間話をするだけ。同僚とは言えライバルになるかもしれないので、手の内は明かさないのです。

つまり自分で取引先を開拓するしかありません。同僚が担当していないレストランやホテルを調べ、飛び込みで営業に向かいました。最初の契約を取るまで、数カ月。いつクビになるかと思って必死でした。最初の1年は英語に自信もなく、日本の方が経営するレストランを多く回り、ありがたいことに、そこで食材についても多くを教えてもらいました。

仕事先では日本の食材も担当する。移転した東京・築地市場も出張で訪ねた

仕事ではライバルとなる営業チームのメンバーも、兄や姉のように心配し、応援してくれました。おかげで、なんとか続けて来られたと思います。英語も、彼らのやりとりをまねることで上達したとも思います。

仕事と仲間と記念写真におさまる畠山さん(後列中央)。仲が良く、誕生日などをともに祝う間柄だ

1年ほどしてからは、地元のレストランにも営業に出るようになり、最近では頼ってくれる取引先も増えました。でも、それだけでは生き残れないとも感じています。自分だからこそ、お客さんに届けられる価値は何か。それを問い続けています。

■私のOFF

シンガポールは、どこに出かけるにも便利です。長期休暇も取りやすいので、インドやオーストラリア、ニュージーランドなど、いろんな国を旅しました。海外旅行が、仕事を頑張るための原動力にもなっています。

インド・タージマハルで。海外旅行が仕事の原動力だ

いまは新型コロナウイルスの影響で海外には出られませんが、シンガポールもいいところ。晴れた日は思わず走り出したくなるような青空が広がります。近所の公園などをよく走っています。

体調に気を使い週末はランニングも。「シンガポールマラソン」にも出場した

ホーカーセンターと呼ばれる屋台街も大好きです。食べ物も安いですし、なによりそこに集まっておしゃべりに花を咲かせているお年寄りたちを見ていると、懐かしいようなホッとした気分にさせられます。

あとは、やはりマーライオンですね。就職活動で面接に落ち続けてつらいとき、ここに来て何とかうまくよう祈っていたことがありました。だから私にとっては、いつでも初心を思い出せる大切な場所なんです。(構成・西村宏治、写真は本人提供)