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なぜアメリカはここまで分断したのか 3つの「巨大なうねり」に答えがある

World Now 更新日: 公開日:
スティーブン・レビツキー氏

規範が崩れたのは2大政党が分極化しているからだ。支持者の間に強烈な敵対意識、恐怖、憎悪がある。1970~80年代、民主党が共和党より左派という意味で政策に違いはあっても、双方が嫌い合うことはなかった。両党の支持者は当時、いずれも白人のキリスト教徒が大半を占め、文化的に似ていた。

ところが2000年代までに相手への恐怖と憎悪が深まった。もう一方の政党を敵や脅威と見なし、相手の動きを阻止するためにどんな手段でも使いたくなる。

規範破りが政治的に有効な手段だと気付いたのは、90年代の下院議長ニュート・ギングリッチだ。彼は共和党の指導層になり、党員に規範破りをするよう働きかけた。特に民主党を「裏切り者」「非愛国者」「反米」と呼ぶ論法を広めた。相互寛容の放棄だ。

際立ったのがオバマ政権の8年間だ。共和党の代表的な政治家までが、オバマを「非米国人」「社会主義者」などと呼ぶようになった。トランプが規範破りを始めたのではない。彼は規範が既に壊されていた中で政権を獲得したのだ。

分極化の背景には、この半世紀に2大政党の支持基盤に起きた三つの巨大な変化がある。①公民権運動後、南部の白人が共和党に移り、選挙権を得た黒人の大半が民主党員になった②中南米やアジアからの移民の大半が民主党員になった③両党に支持が分か規れていた福音派が、レーガン政権以来、圧倒的に共和党支持になったことだ。

両党が誰の利益を代弁しているか、違いが大きくなった。民主党は都市で暮らす教育を受けた白人と、ラティーノやアジア系、アフリカ系という人種的な少数派、性的少数派の混合体だ。

一方、共和党はほとんどが白人でキリスト教徒。彼らは(有権者として)多数派だっただけでなく、財界も政治も文化も支配していたが、それが劇的に変わり始めた。92年に有権者の73%を占めた白人キリスト教徒は、24年には50%を割る。支配的な地位を失うことは恐ろしいことだ。多くの共和党支持層が「生まれ育った頃の米国が奪われた」と口にしてきた。この認識が共和党の過激化をあおり、分極化を引き起こした。